【P探】プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。

人間、誰しも「思い入れ」というものがありますよね。
手元にある『角川 国語辞典』によると「思い入れ」とは「深く心にかけること」。

もしかしたら「そんなもんあれへんわ」とか「そげんなものなかとです」とキッパリ断言される方がおいでかもしれませんが、話が進まないので、無視します。

もちろん、僕にもいろいろな思い入れがありまして、落語も、そのひとつ。
着物姿で、ひとり座布団の上に座って、ありとあらゆる人間模様を扇子と手ぬぐいで…と、そんな御託は抜きにして、好きなんです。

大声で堂々とは言えないものも含めて、もっと好きなものはありますけどね。
それはさておき…。

どうして、こんな話を始めたのかというと、ちょっと寂しい気分になったからです。

それも、プレスリリースを読んでですよ。
(ここで、少し溜め息)

そのプレスリリースがこれ↓

寺院と一体化した“大阪ミナミ”の「カンデオホテルズ大阪心斎橋」 2023年11月26日(日)より開業

落語と何が関係あんの? そのうえ寂しいって?…

まぁ、そう思われる方がほとんどで、それも当然でしょう。

「カンデオホテルズ大阪心斎橋」外観イメージ

「カンデオホテルズ大阪心斎橋」外観イメージ

でも…。

この文章を読むと、どうでしょう?

“大阪ミナミ”の三津寺と一体化した「カンデオホテルズ大阪心斎橋」を2023年11月26日(日)より開業いたします。

「三津寺」で、ピンと来た方は328人のうち1人くらいはいらっしゃっるような気がしますが、いかがですか?

ただ上方落語好きの方なら間違いなくピンどころではなくビンビン来たはず。

そう三津寺といえば、小説家や芸能評論家などとして活動した三田純一さん(1923~94年)が桂米朝さん(1925~2015年)のために1966年に書き下ろした落語「まめだ」ゆかりの場所です。

説明しますと…。
三津寺は大阪・ミナミにある真言宗のお寺で、大阪では「みってらさん」などと呼ばれ、親しまれています。

七宝山大福院 三津寺 本堂

七宝山大福院 三津寺 本堂

「まめだ」という噺は…。
その三津寺の前にある膏薬屋で、勘定が合わず、銭箱のなかには、なぜかイチョウの葉が入っている。
絣(かすり)の着物姿の陰気な子供が傷に効く膏薬を買いに来るたびに、そんなことが起こるのですが、急に来なくなると、三津寺の境内で、小ダヌキ(まめだ)が死んでいるのが見つかって…。

ざっくり、こう書いてしまうと、安物のミステリーやホラー作品のようですが、米朝さんの口演で聞くと、しみじみと胸に来るものがありまして、個人的には好きな上方落語を5つあげなさい、と言われたら外せない噺です。

詳しく知りたい方は『桂米朝コレクション 1 四季折々』(ちくま文庫)で、読めますし、DVDやCDも出ていますので、よろしければ。

で、なんで、プレスリリースを読んで寂しくなったのか?

簡単な話で、このプレスリリースの三津寺の説明には「まめだ」の「ま」の字も出ていなかったからです。

もしかしたら著作権なんかの問題なのかしらん。

落語の「まめだ」のことを入れても普通の方々には何も響かないと判断されたのでしょうかね。

それはさもありなん。
思い入れとは、そういうものですもんね。
まぁ僕の勝手な心情でしかありません。

三津寺の前を通るたびに「まめだ」のことが反射的に頭に浮かぶ僕が珍しいのでしょう。
でもやっぱり…。
三津寺の説明に「まめだ」のことが入っていないのが不自然だと感じてしまうんですよね。

たとえれば、個人的には「証城寺」の話題にタヌキが出てこないのレベル。
(ちなみに、童謡「証城寺の狸囃子」の歌詞のなかには「タヌキ」もという言葉は全く入ってないのですが…)

僕が新聞記者だった時に、このプレスリリースで、記事を書いたら、リリースに入ってなくても「まめだ」は欠かせません。

で、このホテルが開業したら泊まって「まめだ」のことを思っている自分を想像すると、とても幸せな気分になります。
というわけで、早く三津寺とホテルが一体化した姿を見てみたい。
あんな街中に、たぬきが普通に生きていた時代に思いを馳せるのも楽しくないですか。

とはいえ、今はかなりの街中にイノシシやサルなどの野生動物が出没するのが珍しくなくなりましたけど…。

で、年末なので、今年の総集編的なものも必要ですね。

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一日も早く実際にコロナが生活の圏外に行ってくれればいいですね。
ではでは、最後まで読んで下さってありがとうございます。良いお年を!

(岡崎秀俊)