今西紅雪——日本の伝統楽器、箏のフィールドを新しい解釈で広げつつある「奇天烈箏奏者」。児嶋佐織 ——世界最古の電子楽器、テルミンを華麗に弾きこなす「なにわのテルミン女王」。

インタビューの前半では、そんな二人が出会い、短冊となったきっかけについておもにお話をききました。後半は、その音楽の作られ方や、周囲の受けとめ方、これからの活動についてのお話です。(丸黄うりほ)

曲を作るときはいつも二人で爆笑しながら

——先に、箏とテルミンという組み合わせの良いところをうかがったのですが、逆にこの組み合わせの難しさってありますか?

児嶋 めちゃくちゃ場所とる。テルミンは、本体はちっちゃいけど半径1メートルくらい場所がほしい楽器なんです。他の楽器と近寄れない。それと大きな箏の組み合わせなので。

紅雪 お箏も180センチ以上ありますので。なので、その二つを入れようとすると大変。

児嶋 毎回まあまあ苦労しますね。箏って、こんなふうに座って演奏しますよね、その座っていないほうに私がくるとコンパクトにできるね、っていうのに気づいたのはつい最近ですね。

——テルミンは周囲が広い、箏は図体が大きい。だから近寄れない。でも離れすぎるとお客さんから見ておかしいですよね。この二人仲悪いの?みたいに見える(笑)。

紅雪 あと、こっちはアコーステイックな楽器で、テルミンは電子楽器なので、そのへんの音のバランスとか、サウンドチェックもいつも苦労します。ちょうどいい感じにきれいに音を出すのが難しい。

——短冊の音楽は幻想的、スペイシーなんて言葉で形容されることが多いと思うのですが。

児嶋 そうですね。こういうふうにやろうというのはあまりなくて。やっているうちにそうなっていったという感じです。

紅雪 いろんなタイプの音楽をやってきたけど、お互いを生かせる音楽ができるようになってきましたね。

児嶋 結果的にアンビエントとかスペイシーというキーワードでやれるようになってきました。

紅雪 変拍子の早弾きリフとか、いろんな曲のカバーとかもやってみましたね。曲を作るときはだいたい爆笑しながらやっているんですけど。一生懸命やって、いいのできたんちゃう?とか思っても、冷静になって聴いたらいまいちだったりも。

児嶋 出したネタはライブのどこかでやっているんですよね。『冬の星』ってワンマンライブなので、そのために曲作ったりするんですが、たとえば会場のコモンカフェにキッチンがあって、その中に紅茶とフードの人がいるんですよ。そこから、キッチンにある道具で何か音出してもらって、拾った音をループにして、テルミンと箏と一緒に演奏するとか。サウンドコラージュですね。

紅雪 テルミンはすごくシンプルな楽器だし、お箏は転調が難しい。どちらもそんな楽器だから、工夫しなかったら音楽の幅も限られたものになると思うんですが、お互い、音楽の趣味にちょっと面白いクセがあって、それをどっちもおもしろがるからやってみようかってできる。それはすごくいいなぁと思っていて。お箏にエフェクターかけてみたりとか、普通に弾くだけじゃないアプローチもできる。佐織ちゃんもシンセサイザーを取り入れたり、カリンバ使ったり、ループ使ったり、だんだんそういうのも加えて。最初は即興で何がでてくるのかっていうのをやっていたけど、どんどん、これもやりたいなぁあれもやりたいなぁってなってきた。

箏の可能性は「和の響き」だけではない

——世の中に、箏とテルミンのユニットって、短冊の他にもあるんでしょうか?

紅雪 ありますよ。検索したら出てきた。

児嶋 でもその人たちは、わりとかっちりとした和の曲をやっているみたい。

——日本の人?

児嶋 日本の人。私が見た画像ではクリスマスのコスプレをして弾いてはった。ヨーロッパのほうだと、テルミンってセッションで使われる。もしかしたら、あちらにもあるかもしれないですね。

——二人の曲は今やほぼオリジナルですか?

児嶋 ばっかりじゃないですね。

紅雪 箏曲の伝統的な「春の海」とか「六段」なんかもやるんですけど、そのままの形じゃない。もとの曲を再現するのは楽器の制約があって難しいのと、二人の音楽にしたいっていうのがあるので、カバーではないです。

——私たち日本人には、箏という楽器に偏見というか、強い思い込みがあるんじゃないかなと思うんです。なんというか、特定の色がついている。お正月になると一斉に街のBGM が箏の音になるとか、和食店の BGMとか。

紅雪 ペンタトニックな平調子にすると、和の響き、これこそ JAPAN みたいな音楽になるんですけどね。みんながあえてその音しか使っていないだけなんです。お箏はアラブの音階や、インドの音階、そういうものも自在に作れる。自分で調律できるから。本当はいろんな演奏ができるのにと思いますね。

7月は「花形文化通信 ウェブ復刊記念の集い」のほか、音源の録音も

——短冊のCDやレコードなどの録音物は発売されていますか?

紅雪 それがまだ作れてなくて!

児嶋 ずっとやるやる詐欺なんで、今年は10周年ってことでなんとか作ろうと思っています。もう後戻りできないようにエンジニアも予約してある。

紅雪 7月に録音を予定していて、10周年に間に合うように年内に出したいと思っています。7月は図らずも「関西短冊月間」みたいなことになりました。ライブにたくさん呼んでいただいていますし、レコーディングも関西でやります。

——7月6日(土)に綿業会館で開催される「花形文化通信 ウェブ復刊記念の集い」にも、お二人に出てくださることになりました。ちょうど七夕の時期で、短冊というネーミングに星への祈りを込めた、そんな意味があるならぴったりなのでは……と思っていたんですけどね。

紅雪 祈りをかなえるっていう設定ではあります。そういえば、短冊を始めた頃、10周年でみんなの祈りを神社に奉納するって言ってましたね。

——神社もいいですが、お二人の出身地の守口市からわりと近い枚方・交野エリアにはスペイシーな伝説がありますね。河内磐船とか。

児嶋 八幡にはエジソンのお墓もありますし(笑)。

——CDのジャケットもスペイシー路線とか?

児嶋 銀色の服とか着たほうがいいでしょうか。宇宙人設定で(笑)。

——とてもお似合いになりそう。期待しています(笑)。7月6日のライブでは、そのCDに入る予定の曲も聴かせていただけそうですか?

児嶋 そうですねぇ。私たちの曲は、同じ曲でも決まったように演奏するわけではなくて。調弦そのものが曲名だったり、モチーフしかなかったりするような曲がほとんどだから。演奏のたびに違うし、フォーマットは決まっているけど毎回やることは違う。

——曲は二人でセッションしながら作っていくのですか?楽譜に起こして再現するのではなくて、弾きながらできていくみたいな。

児嶋 もともとこういう曲やろうっていうのはあるんですけどね。短冊でやったら短冊風になる。

——楽譜がある曲もあるのですか?

児嶋 楽譜はない。こういう雰囲気で、やり始めはこんな雰囲気でってなったりはするけど、最終的にはないです。

紅雪 メロディーラインだけ書いた楽譜はあるかな。あと、構成を書いたものとかはありますね。

ジャンルをこえて未体験の人に聴いてほしい

——今後、短冊はどうなっていくんでしょうか?こうなっていきたいという方向性はありますか?

児嶋 7月は『花形文化通信』のイベントのほかに、ロシア総領事館でのライブなど4本入っていますが、今のところ関西と東京だけでしかライブしていないんです。もっと他の地域も行きたいですね。外国もふくめて。

——花文のイベントに来てくれる人、リスナーへのメッセージをお願いします。

児嶋 ふだんみんな聴いてはるジャンルがあると思うんですが、それが予測できないのが短冊の面白いとこなんで、ぜひ未体験の人に聴いてほしい。

紅雪 即興って男臭いイメージ?実験的なイメージがあるけど。やっている女の人が少ないんでしょうかね?そんな中に短冊ができて、ちょっとおしゃれもして演奏会できるのが楽しい。お客さまの層も広いです。

児嶋 ふだんは即興なんか聴かへんけど短冊やったら聴きますっていう人もいる。

紅雪 実験音楽が好きなコアな人も来るし、ポップスが好きという人も来ますし、世代もいろいろ。最近はフェスに出してもらう機会が増えて、そこで知ってファンになったという人も出てきました。東京のテルミンフェスとか、ストリートジャズフェスティバルとか。ジャズ聴きに来てくれたお客さんがすごいファンになってくれたり。今回のワークルームさんのイベントでも、そういう人が聴いてくれて、いいなぁと思ってくれるような、そういう出会いがあったら。

——綿業会館の雰囲気と短冊はよくあうと思います。大大阪の時代の雰囲気だから、奇天烈さと優雅さとモダンさをあわせもっている短冊は、はまるんじゃないかな。

紅雪 奇天烈かぁ。私、「奇天烈箏奏者」なんて呼ばれてて嫌なんですよー。

児嶋 いや、奇天烈は褒め言葉でしょ。箏奏者っていわれて、普通はこんなん出てくると思わへんやん。旧グッゲンハイム邸の森本アリさんがつけてくれたんですよね。私は「なにわのテルミン女王」って呼ばれているらしいです(笑)。フェイターンさんと並んで、なにわのテルミン双璧。

——児嶋さんは、最近はちくわファンとしても有名な人物になりつつありますよね。ここでも「デイリーちくわ」の連載がスタートしています。

児嶋 テルミンと同じくライフワークとして楽しんでいるちくわについて、連載させていただくことになりました……継続は力なりと言いますか(笑)。テルミンの活動とあわせて、ぜひチェックしてください。

——本日はどうもありがとうございました。

(2019年5月2日収録)

 

※前半のつづき。前半はこちら。

短冊の演奏が楽しめる「花形文化通信ウェブ復刊記念の集い」こちら。おまちしております。\7月6日は七夕の前日。なので笹の葉と短冊をご用意します。願い事を書きにきてください/