「40円以上したらお菓子です、駄菓子じゃなくなります」

駄菓子の袋蒐集家・吉村智樹 「花形文化通信」NO.04/1989年8月号小山のように積まれた駄菓子の袋をガサゴソ引っかきまわし、その分類・分析を楽しむ男、吉村智樹、24歳。この蒐集を始めて8年目でその数は4ケタにのぼる。毎月30種程度は増えるから、その増加スピードはかなり激しい。

駄菓子を分類するとゲテモノ系、DC系、なつかし系、流行ってるもんに“よう似た”系の4系統に大別できるという。ゲテモノ系とは「チョコラーメン」「えびカステラ」などのゲテモノ味。DC系とはヒット商品を次々発表している「菓道」「雷屋」等メーカーものの商品。なつかし系とは今だに赤銅鈴之助・星飛雄馬のかかれているなつかしいもの、“よう似た”系とはビックリマンチョコにあやかった「魔界大戦スナック」などがこれにあたる。

彼はとある印刷会社に勤めて、朝から晩までよく働くモーレツサラリーマンだ。彼の最大の喜びは、仕事で訪れる西成、東成あたりの駄菓子屋にほんの5分間、立ち寄ることである。駄菓子のパッケージは子供文化の流行を敏感にとらえ、変化が激しい。久し振りにのぞいた店の商品全てが知らないものに変わっている事さえある。そして出くわす、思い切りヌケたコピー、イラスト。彼は自ら編集するミニコミ『月刊耳カキ』誌上で詳細を分類・分析・レポートしている。(彼は立派な社会人のクセにミニコミ編集に飽き足りず「吉村うみぼうず」なるバンド活動までやっている。)

昔から色々と集めていた彼は、とりわけ傾倒した“シール集め”を幼な心に「こりゃキリ無いなー」と悟ったという。なのに再びハマった、キリの無い泥沼――。
「駄菓子メーカーは何故か名古屋に集中してるから、一回名古屋には行かな、と思てます。東京とか東北とか行ったらまた商品が全く別なんやろうな…」。遠い目をした彼は「これを買えば最後の一枚、というのを手にしたい」と、決して掴むことのできない雲に手をのばしていた。

取材・文・写真 勝本嘉津枝

「花形文化通信」NO.04/1989年8月25日/繁昌花形本舗株式会社 発行)