【インタビュー】管理人・ミュージシャン 森本アリ その4/7

前回は森本アリさんの音楽活動のうち、「LIVE! LAUGH!」との出会いと、そのLIVE! LAUGH! の消滅がきっかけとなって生まれた「三田村管打団?」結成のいきさつから現在に至るまでのお話でした。4回目はそのつづきです。昨年8月に出版された三田村管打団?の、7インチアナログレコード「旅行/キネンジロー」付きの本『生活と音楽』について、版元「和久田書房」の和久田善彦さんを交えて語っていただきました。(丸黄うりほ)

旧グッゲンハイム邸で(2026年1月29日)

和久田書房の最初のご挨拶にもなった『生活と音楽』

——三田村管打団?はライブ中心のバンドだし、もちろんライブはいつも素晴らしいんですけど。和久田書房から昨年8月に出版された『生活と音楽』という本。この本に付いた7インチアナログレコード「旅行/キネンジロー」は、バンドの音源としても出色の出来だと感じました。

『生活と音楽』三田村管打団?「旅行/キネンジロー」(付録:7インチ・アナログレコード 「旅行」/「キネンジロー」)2025年8月20日,和久田書房刊 SHOPはこちら

森本アリさん(以下、森本) ありがとうございます。

——特に、大原裕さんが作曲した「旅行」ですね。これはすごく良いですね。一曲の中に緩急とドラマが詰まっていて、呆気にとられてしまう。しかもこのテイクは神テイクとでもいうべきバランスの良さだと思います。

森本 「キネンジロー」の方が僕らの鉄板なんで、最初はこっちがA面候補だったんですけど、録音もあまりに良かったというのでA面は「旅行」で、と。確かに「旅行」で良かったと思います。

和久田善彦さん(以下、和久田) まあ、両A面みたいな感じの考え方でいいんですけど。でも大原さんの曲は入れたくて。やるなら「旅行」がいいんじゃないかっていうことで。

「和久田書房」代表、和久田善彦さん。旧グッゲンハイム邸で(2026年4月30日)

——選曲は、お二人でされたんですか?

森本 和久田くんですね。彼がいわばプロデューサーです。デザイン担当の小山直基くんとか、録音を担当した和田真也くんもみんな塩屋の人で、僕が知らないところで、計画が進んでいたりすることもありました。

——この本を、和久田さんのひとり出版社である「和久田書房」から発行しようという企画は、どのようにして始まったのですか?

和久田 もともと三田村管打団?は、これより前に「compare notes」っていうレーベルからのCDが3枚出ています。そのレーベルは『map』っていう雑誌を作っていた小田晶房さんと福田教雄さんのレーベルで。福田さんはその後『SWEET DREAMS』っていう自身のレーベル&雑誌を始めて、小田さんは東京で「なぎ食堂」というヴィーガンレストランをやっていたんですが、今は京都でリソグラフのスタジオ「hand saw press Kyoto」と、ヴィーガンレストラン&オルタナティブ・スペース「suiro」を運営をしています。

森本 和久田くんは、『ぴあ』にいる時に小田くんの「なぎ食堂」の本2冊作ったんだよね。

和久田 そう。そういう繋がりもあって。それで、ずっと前から三田村管打団?のレコードを作りたいってことは言ってたんですよ。三田村管打団?が好きだったし、わりと近いところで見てきて。でも、当時、僕はまだ『ぴあ』の社員だったし、『ぴあ』からこういうものが出せるわけもなくて。

2024年で会社を退職することを決めたので、そのタイミングなら時間もちょっとできるし、それを逃すと動き出すのは難しいかもしれないと思って。でも、最初は自分が出版社をやろうとまでは決めてなかったんです。ただ、レコードを作りましょうぐらいのノリでした。

ただ、この本とレコードを出すという企画をどこかに持っていったとして、仮にこれを出してくれるレーベルなり出版社があったとしても、例えば選曲だったり、タイトルだったり、装丁だったり、おそらくそのレーベルオーナーや版元の意向が入りますよね、リスクを背負うから当然のことですが。だったら自分でやった方が、一から十まで好きなようにできるし、じゃあやってしまおうというところですね。

——和久田書房の第一弾の出版物がこれになるんですね。

和久田 たまたまこれが第一弾なんですよ。結果的に、こういうちょっと特殊なものが、新たに立ち上げた出版社の最初の商品としてあるのは、自分としては納得できてるんですよ。以前勤めていた所を辞めて独立してまで作った出版社なのに、辞めなくても出来たんちゃうん?みたいな、そういう本を作っても意味がないだろうとも思ったし。まあ、どこも出さないようなものを作った方が、最初の挨拶としてはいいんじゃないかな、と。

三田村管打団?をちゃんとした記録物で知ってほしかった

——これすごく変わった造りですよね。レコードだけではなく、本だけでもなく。その本の部分にも写真があって、たくさんのエッセイが載せられていて。

和久田 レコードを作ろうから始まってるんで、レコードだけでもよかったんですけど、レコードだけを売っていくっていうイメージは全く僕には湧かなくて。それにレコードを買う人ってどういう人?と考えた時に、今レコードが人気ですよとか売れてますよって言っても、特殊だと思うんですよ。

音楽として売るというより、三田村管打団?ってどういう人たちなのかということを、ちゃんとした記録物として知ってほしいと思ったんです。どういうバンドなのかを、言葉でちゃんと説明されてこなかった人たちなので。本人たちにもそういう欲がなかったと思うし。

この変わったバンドのことを伝えるためには、音だけじゃなくて、きちんと言葉で説明できて、表現できるようなものがいいなと。そうなると、それはレコードにブックレットが付録として付いてるのではなくて、あくまで書籍という物体があって、それにレコードも付いているという形が一番いいんじゃないかなというふうに思ったんです。

——和久田さんは、三田村管打団?の音楽にも惹かれるけれども、その成りたちとか、その集まり、バンドのあり方に惹かれているのでしょうか?

和久田 そうですね。それはすごく面白いと思ってますね。

森本 この本には、三田村管打団?に直接関係ないような文章も入っていて、世界のブラスバンドを説明しているものとか、その周辺のことを語っているものとか、それも含めて面白い本になってます。

——バンドメンバー以外の執筆者は、先ほどもお名前が挙がった小田晶房さん、大阪大学の輪島裕介さん、音楽ライターの吉本秀純さん、安田謙一さん。

和久田 それぞれの違う角度から、三田村管打団?というバンドを通して、タイトルの『生活と音楽』ってどういうことなのかを書いてもらえたかなと思ってます。意外と「家にレコードプレイヤーがないんですけど」とか、「ライブ見たことないんですけど」みたいな人が買ってくれてますね。

森本 そんな感じしますね。音楽知らないまま買ってくれてる。でも、これには和久田くんの、三田村管打団?の音源に対するフラストレーションがあったのでは? 僕自身はサードアルバム『!!!』とか大好きなんですけど、もっとかっちりと、しっかりと、ラジオでかかった時に、他の音源と比べても遜色がないような音源を作りたかったんだろうと思っています。

和久田 今までの音源はライブ録音だったので、それぞれの楽器のバランスとか、音圧とか、まあライブ録音ならではの良さもあるんですが、もう少し違う形で録りたかった。過去の音源の中には、今はサブスクで聴けるものもありますが、それまではずっとなかったし。CDももう既に入手できないようなものもあったりするので。

——これはライブ録音じゃなくて、スタジオ録音になるわけですね。

和久田 一発録りで、各パートごとに別々に録ったりはしてないんですが、追加録音をしていたり、しっかりミックス、マスタリングをしています。

森本 一発録音とは言うけど、マイクがまあ10本ぐらいある。今まではLRだけで録ってそれがいい空間の音として鳴ってるんですけど、この『生活と音楽』の録音は、ここでベースを効かせたいとか、トロンボーンもうちょっと聴かせたい、という細やかなミキシングが後で行われていて、それに時間も手間もかかってるから、音のバランスがすごくいいんですよね。

「お客さんとステージ」にも「生活と音楽」にも垣根がないバンド

——音楽は、聴いてもらうのが、文章で説明するよりずっといいのかなとは思うんですけど、三田村管打団?の音楽の魅力、今回のレコードのここを聴いてほしいというようなところがありましたら、ぜひ。

和久田 2025年の年末に、大友良英さんがラジオでフルコーラスかけてくれたんですよ。2曲ともすごい気に入ってくれてて。で、年明けにも、ピーター・バラカンさんとの番組でかけてくれて。バラカンさんは、たぶんその時初めて聴かれたんですね。なんかこれすごいいいですね、言われなかったら日本のバンドだとは思わなかった、というようなことを言って。それから、自分が小さい時に、ヨーロッパの村の公園なんかにちょっとしたステージがあって、そこに村の楽団が出てきて演奏してる、みたいな雰囲気があるっていうふうに話してくださった。普段は例えば街の消防士さんとか八百屋さんみたいな人が楽器を持って出てきて演奏するみたいな。

三田村管打団?って、僕が初めて見たライブもそうだったんですけど、フロアから演奏し始めることが多いんです。なんか急に後ろの方から音が聞こえてきて、みんなが行進しながら、歩きながら、演奏しながら入ってくるみたいな。結構そういうことが定番的にあるんですけど、初めて見た時はわーと思って。で、しばらくそのままフロアで演奏してたんですよね。結局ステージ上がったのが、最後の1、2曲ぐらいでほとんどその状態だったんです。なんか客席と一体になってるような感じで。ステージとの垣根のない音楽の楽しみ方が形になってるような感じがして、すごく面白かった。

三田村管打団?のライブって、最近はそんなでもないですけど、バンドメンバーの子どもたちとか、お客さんの子どもたちがステージに上がっていって、おもちゃの楽器で一緒に演奏したり、ただいるだけだったりするんですけど、そういう光景が当たり前のようにあって、そんな垣根のなさも魅力だと思うんです。音楽的にも、ブラジル音楽とかアフリカ音楽とか、日本の音頭とか民謡的なものが垣根なくあって。オリジナル曲もすごくいいですが。

森本 カバーをやってるイメージじゃないよね。

和久田 そうなんですよね。カバー曲がほとんどなんですけどね。

森本 ほとんどカバーだけど、いかにも自分たちのもののようにやる。

和久田 それはね、過剰にテクニックを重視してないバンドだから、というのと、メンバー間でテクニックにばらつきがあるから、たぶんそれがいいんです。原曲に忠実にカバーしようとか、ブラスバンドとしてアンサンブルを揃えなきゃいけないというところに注力していくと、こうはならないと思う。彼らの場合は、自分たちの音楽の到達点というか、目標みたいなのがない気がするんですよ。普通だったらこうなりたいとか、こういうのを目指そうって、正しいラインにみんなで揃えていこうみたいなのがあると思うんですけど、そういうのが全く感じられない。それはね、逆に魅力だなと思ってるんですよね。

森本 なんかさ、アマチュアリズムっていうのとはまた違うんですね。

和久田 ちょっと古い考え方かもしれませんけど、「今やってるアルバイトは日々のお金を稼ぐための仮の姿で、バンドで食っていけるようになったら、早くバイト辞めたい」みたいな。バンドって、そういう世界だったと思うんですけど、逆なんですよね、三田村管打団?の場合は。

この本のタイトルに「生活」っていう言葉を付けたのもそうなんですけど、普段の生活があって、その延長線上というか、その生活に音楽が含まれているみたいな。メンバーには、実際は音楽がほぼメインに近い仕事をしてる人もいますけど、基本的にはその音楽のために生活してるんじゃなくて、普段の生活と音楽が一体になっているような。

森本 まあ、バンドは生活の彩りぐらいの感じもあるけどね。生活に彩りを与える音楽だから。

和久田 だから、自分の普段の仕事なり生活なりが忙しければ、ライブにも参加しないとか。録音ですら来れるかどうかわからないとかいうようなことになる(笑)。

 
 
 
 
 
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大友良英さんが2025年で「一番好きかも」と言い、二階堂和美さんが泣いた⁉︎

——このレコードにもう一曲収録されている「キネンジロー」はブラジルの Luiz Gonzaga「Qui nem jiló」のカバーですね。

和久田 この本の中で吉本秀純さんは、「(原曲の)良さをそれを上回るレベルまで引き出してしまった楽団は、ブラジル本国にも存在しないだろう」と評しています。

森本 ライブではオリジナル多めの時もあったりします。それはメンバーが書いて持ってくる。アルトサックスの飯野弥生の曲が3曲続くということもありえます。トランペットの平岡新が持ってくる曲も多かったりするんですけど、歌ものとか、ブラスバンドにアレンジできるとは思わないような曲も多いんですよ。

和久田 「キネンジロー」もそうなんですけど、ブラスの曲をカバーしてるわけじゃなくて、ボーカルのメロディーラインをブラスでやったりしてるものが結構多くて、それでたぶん原曲と比べた時に全然印象が違って聴こえる。

——この曲をやろう、カバーしようという提案は誰がするんですか?

森本 メンバーそれぞれがこの曲やりたいって、譜面を持ってくる。僕は平岡くんにお願いして、アレンジと譜面起こしをしてもらうこともあります。

——レパートリーは何曲ぐらいありますか?

森本 もうライブでやらなくなった曲も含めて、まあ、50曲くらいはあるかな。

——その中でも、やはりこの2曲は屈指の名曲ですね。

森本 ピーター・バラカンさんとの番組でこの曲をかけてくれた時、大友さんすごいこと言っててね、「2025年に出た音源の中で、これが一番好きかもしれない」と。

和久田 そうそう。そうなんですよ!

——大友さんが去年一年間に聴いた中で、ベスト音源とまで言ってくれたんですか?それはすごい。「旅行」は本当にすごく不思議な曲ですよね。一曲の中でどんどん曲調が変わっていく、サーカスの音楽みたいな色彩もある。フェリーニとかヨーロッパ映画のサウンドトラックのような雰囲気もある。

森本 牛が通るような、なんか田舎の村みたいな雰囲気だよね、突然ワルツになったりするし。

——そして、最後はもうカオスって感じになる。

森本 あれは大原裕の曲ですけど、元は「SIGHTS」っていうトリオでやってた曲なんです。大原さんがあの曲を作ったきっかけは、ツアーで、確か関西から日本海側に行った時、台風が発生したらしい。途中で巻き込まれて、台風に追いかけられながら目的地に着くっていう旅行のイメージなんですよ。昔、大原さんはMCでしょっちゅうそのことを言ってたんですけど。

今のメンバーたちはもうLIVE! LAUGH! 時代からのメンバーじゃない子も多いから、この音源の録音の直前に、その話を僕が改めてしたんですよ。で、それがめっちゃ反映されて、後半の台風感とかがすごい出てます。

——音で聞くドラマみたいな感じです。

和久田 台風の話は有名なエピソードやし、メンバー全員共有してると思ってたら、半分ぐらいのメンバーが「えー?」とか言って。え、知らんのかいと思って(笑)。

——50曲ほどのレパートリーからこの2曲を選んだ理由は?

森本 50曲といっても基本的には15曲ぐらいのヘビーローテションが20年くらい使い古されつつ、なぜか常にフレッシュでスリリングに演奏されるのですが(笑)、この2曲は僕らにとってとても象徴的であり代表的な曲だから。ま、この2曲は鉄板です。

——三田村管打団?の鉄板2曲が聴けて、初めて聴く人にもおすすめですね。まずここから入ってもらう。

森本 この前、二階堂和美がラジオに出てて。二階堂と三田村管打団?は、合体ユニット「二×三」(ニカケサン)でたまにライブもしているんですが、二階堂の12年ぶりのアルバム『潮汐』にも三田村管打団?が2曲参加しています。ラジオでその2曲をかけて、三田村管打団?の話をかなりした上に「関西の宝ですよ」って言ってくれた。で、録音の話をしながら、泣き始めて。

——ええっ?

森本 泣き上戸なんですよ。よく泣く人なんですけどね。『潮汐』は二階堂と原田郁子さんとの共同プロデュースで、参加している2曲のうち1曲は、原田さん作詞作曲の「あれもこれも」というとても楽しい曲で、もう1曲は二階堂作詞作曲の「うまれてきたから」という曲。生まれてきたから死ぬのです、という普段言葉にしない当たり前のことを真正面から歌っていて、彼女の伴侶、ガンジー西垣さんを亡くした心情と僧侶でもある彼女の信条が詰まっています。

広島県大竹市の、彼女が住職を務めるお寺の隣にあるプライベートスタジオに三田村管打団?のメンバーが12人集まって録音したんですが、その時も泣いてました。みんなガンジーさんのこと考えてたしね。

——二階堂和美さんを泣かせてしまう三田村管打団?、大友良英さんをして「一番好き」と言わせてしまう三田村管打団?、おそるべし。

*次回に続きます

*これまでのインタビューはこちら

二階堂和美『潮汐』リリース記念ワンマン2days
special guest : 三田村管打団?
7月4日(土)・5日(日)
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