【P探】プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。

とうとう折りたたみの男女兼用日傘(雨傘兼用)を買ってしまいました。
「昭和100年」で「戦後80年」。
大阪・関西万博が開催されている2025(令和7)年に、自分が日傘をさすなんて、大阪万博が開かれていた1970(昭和45)年の子供のころどころか、去年まで想像していませんでした。

そういえば、日傘は想定していなかったけれど、大阪万博が開かれたころから20世紀が終わるくらいまでは、当たり前のように将来への明るい「希望」があったなぁ、と、ボンヤリと思いました。もちろん個人の感覚です。

大阪市北区

閑話休題。

今年(2025年)2月にアジア開発銀行(ADB)総裁に就任した神田真人さんは日本経済新聞(2025年7月27日付・朝刊)のインタビューで、第2次トランプ米政権発足後の混乱について…

「私はよく『未曽有の不確実性』と言っている。地政学的なバランスが動いて国際秩序が揺らいでいるところに、米国の政策の変化で世界は全く変わってしまった。もうトランプ前の世界に戻ることはない。誰も戻ると思っていないし、戻そうとも思っていない」

…と語っています。

「未曽有の不確実性」。財務官時代の2022年に円買い・ドル売り介入に踏み切り「令和のミスター円」と呼ばれ、日本の金融の舵取りに携わった人物から発せられた表現だけに実感を伴う重みと真実味が伝わってきます。

「そんな気はしていたけど、そうか…。やっぱり前の世界には戻れないのか」…。
ダメ押しをされた気分になりました。

そんな先行きの見えない不確実な時代情況はプレスリリースにも反映されています。

いまほとんどの世代が一番不安に感じているのは「経済面」 若い世代の『SNSによる不安助長』の実態も明らかに

浄土真宗本願寺派の築地本願寺(東京都中央区築地)が今年3月、全国の18歳から69歳までの男女1400人を対象に「不安に関する意識調査」を実施したところ…

60歳代女性以外の全世代で、「経済面」の不安が1位となりました。

Q. あなたが今、社会や自分の身の回りについて不安に感じていることは何ですか。あてはまるものを全てお選びください

Q. あなたが今、社会や自分の身の回りについて不安に感じていることは何ですか。あてはまるものを全てお選びください

40歳~60歳代男性は前年度、「自身の身体の健康」が最上位でしたが、今回は経済的な不安が上回ったそうです。

同寺は「コロナ禍が落ち着き、経済的不安の順位が上がったか」と推察していますが、いずれにせよ、不確実な時代に生きる人々の心境を映し出しているようです。

一方、約3割の若者が「SNSを見ると不安になることが多い」といい、30代以上の世代と比較すると割合は2倍以上。

若者世代はSNSによって不安が増幅されているケースが比較的に多いといえる実態が垣間見えます。

浄土真宗本願寺派築地本願寺

浄土真宗本願寺派築地本願寺

そんな若者の意識についてのプレスリリースもありました↓

日本財団18歳意識調査結果 第71回テーマ「戦後80年」

日本財団(東京都港区赤坂)が今年6月、「戦後80年」をテーマに71回目の「18歳意識調査」を実施したところ…

「これからの日本が目指すべき国づくり」(重複回答)は「自由で平和な国」が40%を超え1位。
次いで「経済に強い国」。
3位が「災害に強い国」で、このあとに「福祉が手厚い国 」「文化的に豊かな国」「自主防衛力を備えた国」「外交力を備えた国」が順番に続いています。

これからの日本が目指すべき国づくり

これからの日本が目指すべき国づくり

「目指すべき国づくり」の内容は、18歳の若者が現在の日本に不足している、または失われつつあると感じている要素だともいえます。
 
同財団はプレスリリースで…

7月20日に投開票が行われた参議院選挙では衆議院に続いて参院選でも与党が過半数割れし、政治の先行きも不透明感を増しています。

参院選のほぼ1カ月前に行われた今回の調査の「これからの日本が目指すべき国づくり」に関する自由記述では、「国の問題に真摯に向き合い、国民のためになる政策を実現させる国」、「今よりまともな政治ができる国」、「正しく政治が行われる国」といった言葉が並んでいます。

若者がどのような思いを込めて今回の参院選に臨んだか、引き続き調査していく考えです。

…と述べています。

不確実な情勢のなかで、私たちはどこに「光」を見出せばよいのでしょうか?

こんなプレスリリースがありました↓

幸せに衰退するニッポン? 「希望もてる」人は65%、『希望格差社会』の山田昌弘氏「現実をあきらめ、バーチャルに希望を求める若者も増えている」

ダイバーシティコンサルティング事業などに取り組むイー・ウーマン(東京都港区南青山)が運営する「ダイバーシティ円卓会議」は2025年6月に「これからのあなたの生活、希望もてますか?」をテーマに議論をしています。

同会議は、年齢や性別に関係なく誰でもが参加できるオンラインプラットフォームで、今回は『パラサイト・シングルの時代』や『希望格差社会』などの著書がある山田昌弘・中央大教授を議長とし2025年6月6日から27日まで、4回にわたって開催されました。

「希望もてますか?」という問いかけに対しては6割以上が「もてる」と回答しました。

希望の中身は「信頼し合える関係性」といった意見が届く一方で、山田議長は「私が接している若い人たちは、リアルな世界での希望を諦め、バーチャルな世界に希望を求める人が増えている」と指摘。

「このままだと、日本は世界の中で『幸せに衰退』していく。リアルな世界でも希望が持ちうるような社会を作っていくことが求められている」とコメントしています。

…うんっ!? ここで、「希望」という文字を見つめすぎたのか、「希望」がゲシュタルト崩壊状態になり、意味がわからなくなってしまいました。

…というわけで、Google が開発した生成AIモデル「Gemini」に「希望って何?」と質問してみました。

回答は…

希望とは、特定の望ましい出来事が起こることを期待し、それが実現可能であると信じる心の状態を指します。
単なる願望や漠然とした夢とは異なり、未来に対する前向きな感情でありながら、それを実現するための能動的な意志や、実現への道筋を模索する力が伴います。
困難な状況にあっても目標に向かって努力し続けるための、私たちの原動力となるものです。

どうも、まだ「希望」という文字と、かつて理解していたはずの意味と完全にシンクロしないというか、焦点が合わない気がします。
どこかに行った「希望」が迷子になって戻ってこない状態です。

けれど…。
単なる願望や漠然とした夢とは違って、実現するための能動的な意志や、実現への道筋を模索する力が伴う…という部分が自分のなかで「希望」の意味を回復させるポイントかもしれないと思いました。

でも、そこに新鮮さに似た感覚を覚えたので「回復」とは違う気もします。

これまでは、どうも「単なる願望」「漠然とした夢」といったぼんやりした気分も「希望」に含めていた気がするので、認識をあらためて再起動しないと、自分のなかに「希望」を取り戻せないと思ったのです。

そういえば、冒頭で引用した神田真人・ADB総裁のインタビュー記事は以下のような言葉で締めくくられています。

「歴史を振り返れば、奈良、平安の時代から海外に学んだ伝統がある。黒船が襲来して明治維新に至った時も、敗戦後の占領下におかれた時も、一生懸命に外から謙虚に学んで吸収し、独自のすばらしい文明を築き上げてきた。内向きで近視眼的な状態は日本の本来の姿ではない。活力を回復すればもっと幸せになれる」

「希望」の意味がGeminiの言う通りなら、神田さんの言葉にある「活力」は「希望」に置き換えてもいいのかもしれません。
「意志」や「力」が伴わない思いは「希望」に昇華せず、他人任せのぼんやりとした期待にとどまったままなのでしょう。

それはさておき…。

暑いですね。

こんなときは涼やかなプレスリリースを↓

【阪神梅田本店】日本人に愛され続けてきた金魚。そんな金魚の愛くるしさを切り絵で表現する、黒川絵里奈の個展を開催いたします。

「夏の睡蓮鉢」 紙・切り絵 33×33cm

「夏の睡蓮鉢」 紙・切り絵 33×33cm

これが切り絵だなんて信じられませんでした。

瑞々(みずみず)しく見るだけで涼しい。

なんだか自分のなかで「希望」が回復するきっかけとなる「光」を見た気がします。(岡崎秀俊)