最近、メディアでよく見かける「放出」という漢字を「はなてん」と読んでしまう関西人は僕だけでしょうか? クルマ系の “ビッグ ” な問題にも注目が集まっているせいかもしれません。頭のなかで自然にあの中古車センターのメロディも流れるのです。
それはさておき。

【P探】プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。

スゴい野球選手をひとり見つけてしまいました!!
みなさん、大谷翔平ってご存じですか?

…とりあえず、どう書き出していいのか迷って苦し紛れに「ナイツ」の漫才風に始めてみました。
すみません。

もちろん大谷翔平っていうのはMLB(メジャーリーグベースボール)・ロサンゼルス・エンゼルス所属の投手で、外野手、そしても指名打者として打席にも立つ、あの「二刀流」の大谷です。

今季は右肘靭帯損傷で、もう投手としての出場はないと報道されていますけど、もう、とにかく「大谷翔平」が何をしてもニュースになるという状況が定着しすぎてニュースにならないことがニュースになりそうな勢い。

だからMLBといった前置きや説明も必要なく、たとえばニュースで、いきなり「大谷翔平が…」と切り出されても、違和感なく話についていけてしまう状況です。
「大谷翔平って誰?」っていう疑問が想定されていないと言っても過言ではありません。
それはプレスリリースでも同じで、その一例とも言えるのがコレ↓

西川から、大谷翔平選手オリジナルタオルが発売!全長2mの等身大サイズなど全5種類を展開

西川株式会社では、このたび、大谷翔平選手オリジナルタオルを発売します。全長2メートルの等身大サイズをはじめ、全5種類を展開します。8月11日(金)から日本橋西川にて先行販売をスタートし、 8月下旬から西川公式オンラインショップと全国の取り扱い店舗で順次販売します。

…という前文なんですが、「野球」とか「メジャーリーグ」とか「エンゼルス」とか、そんな文字はプレスリリース全体を読んでも最後まで一切出てきません。

西川から、大谷翔平選手オリジナルタオルが発売!全長2mの等身大サイズなど全5種類を展開

そもそも、そんな基本要素が抜けたプレスリリース自体が常識はずれなんですけど、横紙破りみたいなことが通用してしまうのが大谷翔平という存在の稀有さなんでしょう。

(もしかしたらいろいろとオトナの事情があるのかもしれませんが…)
どこの誰で何をしているといった説明は不要どころか、もう邪魔というレベル。
「大谷翔平」だけで当たり前に通用してしまう…。
なんなら名前がなくて写真だけでも大丈夫。

文化とか経済とかの分野の “エライさん” が、自分のことを「知らない」というヒトに向かって「君は僕のことを知らんのかね」みたいな感じで不機嫌になるシーンを目の当たりにしたことが何度かありますし、実際、そんなセリフをそのままリアルに聞いたことがありますけどね。
知らんものは知りませんわな。
それを知らないことを責められてもねぇ。
ところが、「オータニさん」(読むときはアクセントに気をつけてくださいね)は違います。
もう知らないほうが悪いというのが世の中の常識のようですっていうか、常識になってますよね。
野球の打者がボールを打って三塁方向に駆け出してもおかしいとは思わないような僕の実家の近所のおばさんだって大谷翔平は知っていました。

小学校の図書館の「偉人伝」のコーナーにはベーブ・ルースの伝記があったから、大谷翔平が伝記で後世も讃えられるのは確実です。

まだ29歳で、伝記確定ですよ。それに近いものはもう出てるような気がするけど。
僕なんか大谷翔平が生まれた年(1994年)に30歳を越えてて今の大谷より年上でしたけど、まだメジャーリーグでホームランの1本も打ってませんでしたもん………って、またナイツ風のボケでスミマセン(ちなみにナイツとか「ミルクボーイ」とか「しましまんず」とか「さらば青春の光」とか「海原やすよ ともこ」とかの漫才・コントが好きなんです)。

いずれにせよですよ。
時代が昭和なら日本人がメジャーリーグに行って投手と打者の “二刀流” で活躍するなんていう物語は荒唐無稽すぎて
「そんなもん、子どもだましのマンガにもならんわ」
…と一笑に付されていても不思議じゃなくて、だからこそ「大谷翔平はマンガの世界を超えた」っていわれてるわけです。
で、
野球マンガといえば…。

《史上初》名作野球マンガ9作品が集結! 甲子園100周年マンガコラボ企画スペシャルムービー 第四弾「出場」篇を本日(8/4)から公開 ~テーマ曲「KOSHIEN FOREVER」にも現役高校生が参加~

…というプレスリリースがありまして、

阪神電気鉄道株式会社(本社:大阪市福島区、社長:久須勇介)が運営する阪神甲子園球場(以下、「甲子園」といいます。)では、2024年8月1日の開場100周年に向け、昨年8月1日から「阪神甲子園球場100周年記念事業」を始動し、その一環として、甲子園にゆかりのある名作野球マンガ9作品による夢のコラボレーションムービーを展開していますが、本日から第四弾「出場」篇を新たに公開します。

甲子園にゆかりのある名作野球マンガ9作品による夢のコラボレーションムービーを展開
…という内容なんですが、「名作野球マンガ9作品」というのが…
「ドカベン」「巨人の星」「ダイヤのA」「ダイヤのA act II」「タッチ」「H2」「MIX」「プレイボール」「ROOKIES」。

元・南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)の捕手、香川伸行(故人、1961~2014年)は「ドカベン」という愛称で親しまれて、現実がマンガに近づいたといえますけど、マンガを超える、超えないという話とはまた別もの。

「巨人の星」といえば “消える魔球” とかの「大リーグボール」をご存じの方も多いと思いますが、まず「大リーグ」っていうワードが時代を感じさせませんか。
いわゆるメジャーリーグのこと。
時々、ニュースでも使われていますけど、今の若い世代には通じにくいかもしれないし「大リーグボール」っていうネーミング自体がメジャーリーグがいかに日本のプロ野球とは “別次元” だったかを象徴しているような気がします。

だから「ドカベン」「巨人の星」「プレイボール」に胸をときめかせた1970年代の小学生だったオッさんには大谷翔平の活躍なんて「仮面ライダー」とか「超人バロム・1」とか「マジンガーZ」とかよりも、ある意味、リアリティがない! そう思いませんか? 同世代のオジさんたち!!!

それはさておき。
なにをきっかけに、大谷翔平のことを書こうかと思ったのかいうと…

【はいだしょうこ朗読!】少女画の巨匠・高橋真琴の「にんぎょひめ」読み聞かせ動画を公開!

…っていうプレスリリースが目についたからなんです。

『高橋真琴のおひめさまものがたり』

高橋真琴といえば、先月、画業70周年を記念する展覧会が銀座三越で開かれまして公式ウェブサイトによると「1934年8月27日、大阪市住吉区に男3人兄弟の長男として誕生」だそうですから現在、89歳。今も新作を描き続けている現役です。(余談ですが、恥ずかしながら高橋真琴って大阪出身だったのを、初めて知りました。大阪府民として何だかうれしい)

それが、どんな風に大谷翔平につながってくるのかというと…。
高橋真琴の少女画といえば、まさにファンタジーの世界で、少女マンガのヒロインもそうですけど、あんなに目が大きくてスタイルがよくて、キラキラした人間なんて「おらんやろ」と思ってたんですが…。

最近、けっこう見かけませんか?

それもテレビとか映画だとかの話じゃなくて街中で、通勤途中のJR大阪駅とか大阪メトロの本町駅でも普通に見ますもん。顔が小さくて手足や腰が細くて八頭身どころか、九頭身かってプロポーション。
老眼も進んで目が弱ってきてますけど、錯覚じゃないし、もちろんCGじゃなければ、彼女たちが特別にコスプレをしてるわけでもない。
何がどうなって、こうなったのか、日本人の変化に驚いております。まさにマンガの世界が現実になった気がするし、現実なだけに「マンガを超えた」感があるわけで、自分としては必然的な感じで大谷翔平を思い浮かべてしまったわけです。

そういう意味では、マンガの世界も大変です。
いろんな分野で現実と追いかけっこですもん。
現実を超えられそうにないけど、共感が得られるリアリティがないと理解されないという境界を狙わないといけない。
それこそ大谷翔平を超える勢いを求められるわけで…。
もしかしたらAI(人工知能)が未知の扉を開くのかもしれませんけど、どうもそれではつまらない気がするのは現実に埋もれる、ただの時代遅れの人間だからかもしれません。
個人的にはマンガは超えられそうにないので、せめて道路の縁石くらいはつまずかずに越えたいです。
この間、足を引っかけてこけました。

=敬称略

(岡崎秀俊)