アンクルージュ アクシーズファム リズリサ

文・嶽本野ば

もう僕も年寄りなので量産型とか地雷型とかいわれてもさっぱり解りません。

大量生産でありながらフェミニン、トレンドの要素を押さえ、可愛さをプラス――でも誰も彼も同じに観える平均的なスタイルの女子を量産型と呼ぶらしいけれど、その筆頭がアンクルージュと説明されれば、ロリータをカジュアルにして一寸、エロくしたということ? と多分、間違った解釈をしてしまいます。しかしセシルマクビーの会社が起こしたブランドだし見当外れでもありますまい。

アクシーズファムと明らかに違うのは解りますよ。アクシーズファムは絶対、ロリータを意識していますよね。イノセントワールドなどのお嬢様系コンセプトが伺える。フリルがザツ!と文句をいいつつ、結構、ロリータはアクシーズファムを買いますし。とりあえずヒラヒラさせとけとか、タータンチェック、ベレー帽を出しておけという安易さは、かつてのプトマヨを彷彿させますが、もしプトマヨがまだあったなら地雷系と扱われるでしょう。プトマヨもザツ!といいつつ安いのでロリータさんは、買っていた。

更に未知なのが地雷型。量産型をダークにしたのが地雷型のようですし、これはゴシックロリータの進化型でもあるのでせう。

axes femme 2022 AUTUMN WINTER COLLECTION カタログ。今期はロリータ界のテッパン『不思議の国のアリス』をコンセプトにしているがジャンパースカートは7000円代のお手頃プライス。実は20年以上続く中堅ブランド(筆者所有)

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しかし今、気に掛かるのはリズリサなんですよ。かつて109系の中でも姫系として可愛さに特化していたリズリサが僕は好きで、何時もつい、買っていました。ギャル服だけどロリータに通じる要素があったから。2000年代はギャルからロリータに転向する者が多くいましたがそういう人は大抵、元リズリサでした。ギャル服が廃れ109系のお洋服屋さんは迷走、リズリサも一時期はトゥララ、ドールとサブラインを展開し勢力拡大したものの、現在はリズリサのみに縮小している。それでも可愛い路線は死守したかったらしく、マイメロディやシナモンロールとコラボしフワフワな世界観を貫き現在に至る。だから断然量産型と思ったのですが、やや地雷型らしい。年寄りには理解出来ん!

そんなリズリサが最近、どんどんとアンクルージュ化してきている気がするのは僕だけですか? ジャンスカを出したり、うさみみフードなど、聞いたことのあるロリータメゾンを彷彿させるアイテムを出したり……。1999年創設、姫ギャル系の重鎮が、後発ブランドやロリータメゾンに寄せていってどうする? だけどそれでも僕はやはりリズリサを贔屓してしまうのです。

『LIZ LISA ×My Melody 2016 Winter collection』宝島社・刊。コラボ第10弾となるマイメロをセンターに据え、このシリーズらしく堂々と付録のトートバッグを押し出す。バッグはブーケ花柄の中にマイメロがいるこの号のみのスペシャルバージョン(筆者所有)

『LIZ LISA ×My Melody 2016 Winter collection』宝島社・刊。コラボ第10弾となるマイメロをセンターに据え、このシリーズらしく堂々と付録のトートバッグを押し出す。バッグはブーケ花柄の中にマイメロがいるこの号のみのスペシャルバージョン(筆者所有)

量産型や地雷型に於けるロリータの影響を論じるつもりはありません。仮令、同じ型紙を使ったとして、量産型も地雷型もロリータにはならないのですから……。ヒラヒラで、ヘッドドレスやボンネットを被り、スカートをパニエで膨らませてドロワーズを履いて、日傘をさして、カフェでは紅茶を飲むのがロリータのスタイル。これはアンクルージュでもアクシーズファムでもリズリサでもやれるのですが、量産型+地雷型とロリータは異なるのです。以下の質問に答えて下さい。

(1)ユザワヤのカードを持っている (2)食事が嫌い (3)お洋服は大抵、お取置きして買う (4)部屋の中に五匹以上、クマがいる (5)聖書をたまに読む (6)自転車に乗れない(又は乗らない) (7)高熱を発していてもヤフオクやメルカリを検索せずにはいられない (8)前髪パッツン (9)別珍に過剰反応をする (10)お洋服の為なら死ねる

半分以上イエスならヒラヒラしていなくてもロリータの要素が濃厚ですし、全部当て嵌まれば納得出来ずとも貴方はロリータです。

ロリータ程にお洋服への執着が非道い人種はない。買おうと思っていたお洋服が完売した時のロリータの絶望っぷりたらありませんし、好きなメゾンのアイテムがフリマなどで余りに安値で出ていると、欲しくないのに「救済」という名の許に買ってしまう。もし、貴方が死んだらこの服で棺桶に入れて貰う——決めているお洋服があるのなら、それがアンクルージュでも貴方はロリータです。ロリータが変な格好と笑われて怒るのは、自分のセンスをバカにされたからでなく好きなお洋服が貶されるのが耐えられないからです。

敢えていいます。ロリータは自意識過剰に非ず、お洋服への情けが深いだけです。量産型も地雷型もシーズンが過ぎればそのお洋服を容易に手放すでしょう。でもロリータは着ないと解っていてもロリ服を手放せない。故に何時もクローゼットがパンパンです。

僕は量産型女子をカッコいいと思っています。どの時代も若い人にとって纏う被服は世界への反旗の役割を持ちました。量産型もそうだと思う。彼女達が徒党を組んで歩いていると不穏な空気を醸し出す。無個性を増殖させる薄気味悪さ——クローンと呼ぶ人もいるだろう——を悪意と挑発で愉しんでいると感じてしまう。しかし彼女達はお洋服への愛を持たない。ロリータのように朝から晩までお洋服のことしか考えていない種とは異なる。

しげの秀一の『頭文字D』に登場する走り屋とロリータの感性は似ている気がします。藤原拓海に負けた中里毅はいいます。『俺の32がバトルで負けた……。いや違う……負けたのは俺だ、こいつがハチロクに負けたわけじゃねえ』——最終回、新しいエンジンもブローさせてしまった拓海はそれでもハチロクを廃車にせず、置いておきたいと告げるじゃないですか。走れない車なぞ着ないお洋服より無価値。つまり藤原拓海もロリータなのです。茂木なつきは量産型ですよね。

(13/11/2022)