これからユニクロの悪口は少し慎みます

文・嶽本野ばら

2001a〜2002wのコレクションをバックステージを含め撮影した『KEITA MARUYAMA BACKSTAGE + 』2001年 HIROMIX マガジンハウス刊(筆者所有)

 

ブランドものばかり着ていると思われがちですが(その傾向はある)成金趣味ではないのです。気に入ればユニクロも買います。フリース・ブームの頃、僕だってフリース上下を手に入れました。だけど一度着た後、また着ようと思えないので結局、ユニクロの購入は勿体ないと控えるようになったのです。

コムデギャルソンにしろ、ジュンヤワタナベは着ません。恐らくアメカジを根っこに持つラインだからでしょうが、どれも愛着を持てず、なおざりの扱いをしてしまうからです。ユニクロを着ない理由もジュンヤワタナベ を着ない理由も同じです。

ファストファッションの台頭でラグジュアリーは厳しくなったといわれます。しかしそれを口にするは、誌面で大きく扱うからと、それまでメゾンから莫大な広告料をせしめていたファッション誌に関わる人達です。

だってね、ずっとディオールを着ていた人が急にユニクロユーザーに変わろう筈もない。

ファストファッションが余りに人々の支持を勝ち取ったが故、僕もついこの前までは苦言を呈す立場にいました。でもよく考えるとファストファッションと従来のモードはコンセプトが全く異なるのですよね。

代表格ユニクロはフリースにしろヒートテックにしろ素材の開発に特化するメーカーです。かつてイッセイミヤケはプリーツプリーズで挑んだものの、繊維の動向を抜本的に変化させるには至りませんでした。新素材の模索は個人単位で動くデザイナーにとって必須であるけれども開発の時間、手間がかかり過ぎ、至極困難なものであるのです。

2020年4月に開始したGUのケイタマルヤマとのコラボレーションは、大成功を収めました。マオカラーのシャツなど人気商品は軒並み完売、オークションでプレミアがついている程です。漏れ聞くことろに拠れば、GUは存亡を賭けて挑む気合いだったとか。

大資本をバックボーンに多くのダブルネームを獲得してきたGUですが、実際の成果は今ひとつでした。2009年に鳴り物入りで開始したジルサンダーとのコラボ、+Jはジルサンダーのミニマルなラインが一般ユーザーに受けるとの目算だったでしょうが、ハイブランド、ファストファッション、どちらの食指も動かさず撤退を余儀なくされます(2020a/wから復活)。

つまりユニクロとて素材開発では成功するものの、モードは門外漢、大失敗をやらかしているのです。コラボやデザイナーの引き抜きに於いて、オートクチュールやプレタポルテのメゾンは、冒険——メンズの実績しかないデビューしたてのラフ・シモンズをディオールに抜擢など——をしますがミスをおかしません。ケイタマルヤマとのコラボはGUがようやく得たモード上の成功です。

ケイタマルヤマはシノワズリな刺繍を取り入れるなどで、小さなメゾンながらデビュー早々に内外に名を知らしめたメゾンです。

僕が感心したのはサイズ展開。GUですしね、XSからXXLまで6段階のサイズがあるのです。最低ロットしか作らない独立系メゾンにとってサイズは最も悩ましい問題です。ヨウジヤマモトやコムデギャルソンがパリコレでデビューした時に平面裁断の技法を用いたのは立体裁断へのアンチではなく、実はフリーサイズでしかお洋服を作る予算がないが故の苦肉の策でした。

ケイタマルヤマもまた細かなサイズ展開がやれないメゾンです。布や刺繍、製法にしろ既成の業者、工場をチョイスするしかないのでどこかで無理をしなければならない。その点をGUとのコラボは解消してくれる。

安価に仕上げる為、素材や手法の制限はあるものの、自社工場で全てを賄えるシステムならデザイナーは自分の創作の可能性を最大限に活かすことがやれます。表参道ヒルズでの20周年記念「『丸山景観』全集大成」に行った際、久々に丸山敬太さんにお逢いしたのですがその時「業界自体が低迷して久しいけど僕はお洋服オタクだから。状況がどうあれお洋服作りにしか興味ないのを居直るしかないよね」とおっしゃっていました。

2014年、デビュー20周年を記念して発行された『丸山景観』丸山敬太、森本千絵 2014年 六曜社刊https://amzn.to/3kAa3JC

デザイナーはお洋服のことしか考えていないのです。ファストファッションがコラボを仕掛ける時、僕らの眼には経営が厳しくなったメゾンをそれらが資本力で制圧しているよう映りますが、実際は「私達は技術を持ちますがデザインの能力に欠ける。ですから手助けして欲しい」と持ちかけているのでしょう。デザイナーも決して高い服を作りたい訳ではないし、合意出来れば悪い話ではない。

海外とは異なり日本では老舗メゾンがアートスクールの卒業制作を観てデザイナーをスカウトすることなんてない。もしかするとGUのようなファストファッションこそ、近未来、安価素材を使いこなす若く新しい才能を抜擢してくれるのかもしれません。GU×ケイタマルヤマにはそんな希望がみえます。

(11/8/20)