プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。

芸術の秋…。まもなく、本格的にそんな時季でもありますし、早くマスクなしでコンサートに行けますようにという願いも込めて…。
前置きなく、今回いきなり紹介するのは、このプレスリリースです↓

【島村楽器調べ】島村楽器従業員に聞く音楽漫画に関する意識調査 楽器店員が選ぶ 「スゴい!音楽漫画」ランキングベスト10!2位は『BLUE GIANT』!1位になったのはあの作品!

島村楽器(本社:東京都江戸川区)が、音楽と楽器に詳しい従業員2315人を対象に「個人的に好きな音楽漫画」と、楽器店スタッフの立場から見て「音楽的にスゴいと思う音楽漫画」という2つの視点からアンケートを実施した結果をまとめました。

有効回答数は158人で、従業員数(2315人)と比較すると「ちょっとアレかな」という気がしないでもないですが、細かい事情はわかりませんので、それはさておき。

「好きな音楽漫画」の第1位は「のだめカンタービレ」で、2位が「けいおん!」、続いて3位が「BECK」。

好きな音楽漫画ランキング
音楽的にスゴい漫画」も「のだめカンタービレ」がトップ。
2位は「BLUE GIANT」、3位「けいおん!」という結果となっています。

音楽的にスゴい漫画ランキング

「のだめ」が「好き」と「スゴい」の両部門を制していて、楽器店の従業員という“音楽のプロ”からの評価の高さが音楽漫画としての“ホンモノ度”を証明しています。

ちなみに「のだめ」は僕も全巻、持っていまして、音楽になくてはならない「音声」という要素を使えない二次元の漫画という表現方法で、あそこまで音楽を伝えられることに感じ入ります。

「あそこまで」というのが「どこらへんまでなのか?」ということが気になった方で、まだ読んだことないと言う方は一度、手にとってみてください。
「あそこまで」が「どこらへんまでなのか」がわかっていただけるかどうかは、保証できませんけど…。
僕はこれを機にまた読み返していまして、登場人物のユニークさが織りなすストーリーと作品中で奏でられる音楽のコントラストが絶妙だとあらためて思っています。

以上は音楽漫画のランキングでしたが、こんなランキングもありました。

【ランキング】月間動画再生数<芸人>~エガちゃん4本/ガーシー王族になる!?~(8月)

「アナライズログ」社の調査によるYouTubeの芸人チャンネルで8月1日から31日までに公開された動画の月間再生数ランキングです。

301万再生を獲得し、第1位をランクインしたのは『渡辺直美』の生配信。
週間ランキングでも数多くランクインしていた『エガちゃんねる』は、月間ランキングでも4動画(2位:295万再生、6位:175万再生、7位:147万再生、10位:132万再生)にランクイン。
また『極楽とんぼ』コンビでのYouTube出演となった、『中田敦彦』『宮迫博之』『山本圭一』が出演するYouTube番組『winwinwiiin』の動画が2動画(5位:224万再生、8位:137万再生)ランクインしている。

…とのこと。

ランキング月間動画再生数 芸人

このプレスリリースはPR TIMESのプレスリリース配信サイトで掲載されているのですが、興味深いのは、以下の記述です。

※本PRtimesに公開した記事は、nofollowをつけずに上記ランキングのリンクを設定した場合のみ、使用許諾をしております。

:表記は原文のまま。

上記ランキングのリンクとは、
https://digitalcreators.jp/youtube_ranking_1m_comedian_220901/
…です。

「nofollowをつけずに」という部分が気になる方はご自身で調べていただくとして、リンクを貼らなければ、プレスリリース配信サイトに発信した内容を使用できないという点が新鮮ですね。

ということは、このプレスリリースの内容はリンクを設定できない紙媒体を対象としていないことになります。

「そんなもん、プレスリリースやあらへん!」と怒る昔ながらの記者もいらっしゃるかもしれませんが、それはもう時代遅れの反応ということでしょうか。

ネット動画(YouTube)を対象にしたランキングなので、それも当然かもしれず、これまでのプレスリリースとは違った発想で、既存の大手マスメディアに依存しない姿勢ともいえます。

そういう意味では、以下のプレスリリースも新しいです。

国宝・重要文化財建造物の修理現場を無料公開します! 大徳寺 方丈【国宝】(京都市北区)他

京都府教育委員会によるプレスリリースで、文化財建造物に対する理解を広く深めるために修理現場の公開を実施するという告知なのですが…。

大徳寺方丈 修理前内観

大徳寺方丈 修理前内観

公開日時や会場は示されているものの、申し込み方法などの詳細はなくて、
「京都府文化財保護課ホームページ」へのリンクURLが設定され、詳細は、そちらで確認するスタイルになっています。

つまり、このプレスリリースだけで完結していなくて、公式のウェブサイトへの誘導して成立する構成になっています。

京都府教委による告知ですから大手のマスメディアが所属している地元の記者クラブには、この情報は流されているはずですので、このネット上のプレスリリースはメディアに向けているというより、一般のユーザーに発信していると考えられます。

もしかして記者クラブにも同じ内容をメールで発信している可能性もありますし、もうプレスリリースは「プレス」だけに向けた情報ではなくなっている実態が見えます。

発信する側も衰退していく既存メディアに広報するだけでは心もとないのかもしれません。
マスメディアというフィルターを通すよりも、直接、資料を見てもらったほうが早いとこともあるのでしょう。

そんな傾向は次のプレスリリースにも…。

大阪湾りんくう芸術花火2022 関西、日本、世界No1!音楽花火の最高峰

2022年11月5日(土)にりんくう公園マーブルビーチ/大阪府泉佐野市りんくうにおいて、日本の伝統的な花火と音楽をシンクロさせた新しい「芸術文化」を創造する花火大会を開催します。

…という告知ですが、プレスリリースには、花火大会を紹介するYouTube動画の埋め込みと、内容の簡単な説明などだけで、料金などの詳細は「関連URL」として示されたリンク先で確認する仕様になっていて、このプレスリリース自体は情報の窓口のようなものでしかありません。

これもまた「プレス」というよりは直接「一般ユーザー」に向けて発信する性格が色濃い構成になっていますね。

…といういうわけで、もはやプレスリリースは、この「プレスリリース」という名称を変えたほうがいいという情況になっているようですね。

(岡崎秀俊)