月刊フリーペーパー「花形文化通信」(1989~97年発行、愛称:はなぶん)の、ウェブマガジン(当サイト)としての〝復刊〟を記念する「集い」を7月6日、大阪市中央区備後町(旧船場地区)の綿業会館で開きました。アコースティックギターデュオGONTITIのチチ松村さんと、箏とテルミンのユニット「短冊」をゲストにお迎えして、音楽を楽しみながらの和やかな会となりました。
「集い」に先立ち、開演1時間前に、綿業会館内の階段を上り下りする「階段ツアー」を行いました。「花形文化通信」編集部がある同会館は、国の重要文化財でもある歴史的建造物です。参加されたのはお申し込み先着の約25人の方々。連載中の「うつくしい階段」筆者である下坂浩和さん(建築家)の案内で通常の見学コースを軸にめぐり、階段の所では立ち止まって詳しい解説を聞きました。
テレビドラマ「白洲次郎」にも登場した、タイル・タペストリーの壁面が豪華な談話室には、読書室へとつなぐ流麗な階段があり、地下のバーやグリルへはバーの内装と調和をなす緩やかな螺旋階段がありました。ロビー正面の階段にはふんだんに大理石が使われていますが、アンモナイトの化石が入った大理石が床となっている会議室(通称「鏡の間」)もあり、参加者の中には、歴史を感じさせる荘厳さに思わず歓声を上げる方もいました。
「集い」は同館1階の会員食堂で午後5時半から始まりました。約70人で満員となった会場には、チチさんや短冊ファンの方々をはじめ、フリーペーパー「花形文化通信」ファンの皆さん、1989年創刊時のオリジナルメンバーやレギュラーライターの面々、当時の編集部に併設の「SHOPへなちょこ」常連客の方、終刊後に北浜に開いたカフェ「workroom」でおなじみだった方などなど。塚村真美編集長の「こんちくわ」という挨拶でオープニング、ほのぼのとした雰囲気のなか、演奏がスタートしました。
まずは「短冊」の今西紅雪さん(箏奏者)と児嶋佐織さん(テルミン奏者)がオリジナルの「春雨」「月の庭」をはじめ「辻斬り」などの4曲を演奏。インタビューで話していたテルミンの「星に願いを」に、箏で「たなばたさま」をかぶせる二重の演奏も。テルミンと箏のハーモニーがミューラル・デコレーションの装飾天井の空間を神秘的で幽玄な雰囲気で満たしてくれました。
「短冊」のおふたりのインタビューを掲載したページはこちら
ちょうど翌日(7日)が七夕ということもあり、会場入口に笹を飾りました。そして「は」「な」「が」「た」「ぶん」「か」「つう」「しん」と書いた短冊を用意し、それぞれの文字のあとに続く願いを来場した方々に書いていただき、笹に結びました。「短冊」とチチさんとの幕間、塚村編集長が〝あいうえお作文〟よろしく「『は』はははと笑える世の中に」「『な』なかよしになりたい、会社の人と」「『が』がんばった成果が千倍に」「『た』たいしたことがたくさんありますように」…と皆さんのお願いを紹介しました。
また「(今回のようなイベントを)年に2回くらいできたらいいな、と思い始めています」と塚村編集長が小声で話すと会場から大きな拍手が起こりました。また高齢化が進むなかで「長生きすることが心配になってきて、楽しく生きていくためにはウェブなどで発信しないことには難しい時代になっている」と考えたと「花形文化通信」復刊の背景についても説明しました。
そして、いよいよチチさんの登場です。後ろにはなぜかテルミンの児嶋さんも。
チチさんは、この日「短冊」の演奏を聴いて突然「セッションをしたいと思って」児嶋さんに声をかけたと話し、「曲の最後の一音だけ出してほしい、とお願いしました」とオリジナル曲「僕は見た」の弾き語りに入りました。そして、歌詞にある「軍艦の上のゾウ」のイメージに重ねた「パォーーっ」というテルミンの一音で曲が締めくくられました。
外国語によるボーカルにも挑み、シャンソンやブラジル音楽を初めて人前で披露。これまでに何度か、大好きなインド映画の曲をヒンディー語やタミル語で歌ったことのあるチチさん。その時と同じくカタカナで書いた歌詞を、見事にフランス語やポルトガル語に聞こえる発音で歌い上げました。
チチさんはクイズ形式という仕掛けで進行。クイズによって、一曲一曲、音楽に関する知識を深めることができました。
今回の「集い」は「カネテツデリカフーズ株式会社」さまの特別協賛で、同社の、鱧の風味を生かし全面を香ばしく焼き上げた一本竹輪「はも竹」をご提供いただきました。ここは「デイリーちくわ」連載中の児嶋佐織さんの出番です。「伝説の〝ちくわの狂い投げ〟(劇団リリパット・アーミー)をしてしまいたい」という気持ちを、〝重要文化財〟の中ということでぐっとこらえた児嶋さん、「てっちゃんのうた」が流れるなか、結婚披露宴のドラジェのように、会場を後にする方ひとりひとりに「はも竹」を手渡して送り出し。無事に「集い」は幕を閉じました。めでたしめでたし。