ニガウリの実がなっています。緑のカーテンの最上段です。雌花が咲いて、膨らんできたな、と思ったら、ネットのマス目の一番上に引っかかって、そのまま大きくなりました。
ニガウリ栽培の目的は「日除け」が第一。第二は「観賞」で、部屋内からの眺めが楽しみです。もったいない話ですが「食用」は三番目で、特に手をかけて育てるわけでもない、けれど、実がなると非常にうれしい。炒めものか天ぷらか、実がなるともう「植物」ではなく、「食物」として、観賞することになります。
手をかけなくても育つのは、ニガウリには虫がつかないからです。ニガウリは、実だけではなくて葉も茎も全身が苦いので、虫が食べないんだそうです。でも、黄色い花が咲くと今度は虫が飛んできて、雄花の花粉を雌花に運んでいます。虫喰いのない葉っぱはきれいで、黄色い花はかわいい、これもまた観賞のポイントです。
そして、「観察」もまた楽し。ニガウリの成長で面白いのは、つる。一日でネットの一マスくらいは軽く伸びます。その伸びるつるを支えているのが、巻ひげです。『花形文化通信』「ひょうたん日記」の丸黄うりほさんが同じウリ科のヒョウタンの巻きひげについて詳しく観察しています(「ひょうたんの巻きひげは神秘的」と「魅惑の巻きひげギャラリー」)。私なんかはぼおっとしか見ていないので、右見て左みたら、巻きひげはすぐにくるくると巻き付いていて、数時間後にはネジになっていて、それが真ん中あたりで逆回転になっているのです。
それはどういうことか、というのを、植物生態学者の多田多恵子さんは、次のように書いていました。「先端が支柱に巻き付くと、巻きひげは両端が固定された1本の針金のような状態になります。これをバネの形にするには、中央部分をぐいぐいねじって、両端に向かってコイルを作っていけばいいのです。巻きひげもこの手順でバネになるので、向きは真ん中で逆転し、両側に逆向きのバネが同数できるというわけです」(「ワクワク植物の冒険no.19」ニガウリ, 園芸新知識 はなとやさい2020年7月号, タキイ種苗株式会社)
それってこれか?と思ったのは、ヘアドライヤーのコード。ヘアドライヤーのコードがいつもくるくるになってしまう。つまり、ヘアドライヤーの先が私の右手という支柱に巻き付いた、で、私はくるくる回したわけではないけれど、無意識にドライヤーを振っていて、コードは真ん中あたりでねじられてコイルのようになっていくのかと。違うか?違う? でも、コードと巻きひげは似ています。多田さんは巻きひげについて、こうも書いていました。「ウリ科の巻きひげは葉の変形で、葉の表と裏に対応して断面は四角い形をしています」と。うむ、コードも四角いぞ。
では、これはどうか?ビジネスフォンの受話器のコード。もともとくるくるねじれていますが、どういうわけか数年前までわが社には、さらに輪をかけてぐるんぐるんになる電話機があって、どうもそれは使い手によるようで、その人のコードだけが気がつくとぐるんぐるんになっているのでした。これもまた巻きひげの仕組みと同じか、別ものか? ビジネスフォンも受話器もいまとなっては絶滅危惧種です。わが社の電話もあまり鳴らなくなりました。コードがぐるんぐるんになることも、もうないでしょう。
梅雨明けのこのニガウリは天ぷらにして、巻きひげの切り口が四角いのにちなんで、そうめんじゃなくお蕎麦をゆでて、お昼は天ぷらそばがよいと思いました。
(8/2/20)
by 塚村真美