ひょうたんだらけのお食事処「瓢箪」

by 丸黄うりほ

①瓢箪山の住宅街にある和食店「瓢箪」

②看板にもひょうたんマークが

③「瓢箪定食」というのもあるようです

④お店にはひょうたんがいっぱい!

⑤ひょうたんはすべてお客さんからもらったもの

⑥くるんと丸まった長瓢が、最初のひょうたん

⑦焼き魚定食に、冷奴をつけてもらいました

瓢箪山稲荷神社から少し西へ入った静かな住宅街のなかに、「瓢箪」というお食事処があります。昨日紹介した酒店「ひょうたん屋」とも近く、私は何度かお店の前を通ったことがあり、ずっと気になっていました。ですが、食事の時間帯をはずしていたためか、いつも閉まっていて入れなかったのです。

いつか行きたいなと思っていたら、瓢箪山在住のヒョータニスト、フェイ・ターンさんが、このお店で食事をしたことをフェイスブックに書き込んでいらっしゃるのを見かけました。さすがは地元民!

その写真を見ると、なんと店内ひょうたんだらけではないですか!ごはんもなかなかおいしそうだし、これはちゃんと行ってみなければなるまい。

そんなわけで、今回はお昼時に時間をあわせてうかがいました。

入り口に白いひょうたんが染め抜かれた、清潔なえんじ色の暖簾がかかっていました。そのことから、今日は営業中だということがわかります。そっと中を覗き込むと、数人のお客様の影も見えました。暖簾の横には、メニューの書かれた木片が並んでいます。丼物や定食が中心で、価格もランチにちょうどいい感じ。「瓢箪定食」というメニューもあるようです。

少し緊張しつつ戸をあけて入ってみますと、おおおお!ひょうたん!ひょうたん!お店の端から端まで大小さまざまなひょうたんがぶら下がっていて、私のひょうたんアイはパッカーンと開きっぱなしになりました。

厨房に立っていらしたご主人が、怪訝そうな表情で私を見つめ返してらっしゃったので、私はあわてて正直に言いました。

「じつは私、ひょうたんが大好きで」

「あ、そう」

クールな感じのご主人でした。でも、私は負けずに「ひょうたん、すごいいっぱいありますね!写真撮ってもいいですか!(ニッコリ!)」と言いました。ご主人はあいかわらずクールに「ええよ」と一言。

数人いたお客さんは年配の方ばかりで全員が常連ぽく、みなさん一人で来ているのにお互い知り合いのようでした。そういう中で、「ひょうたん!」「ひょうたん!」と目をぎらつかせているイチゲンの女は、かなり浮いていたと思います。

食事のほうは何を注文しようかと迷っていたら、ご主人が「天ぷら定食か、焼き魚定食は?」ときいてくださいました。それで、「……えっと、瓢箪定食には、ひょうたん型の器とか使ってらっしゃいますか?」ときいてみると、「いや。天ぷらと造り」とのことだったので、焼き魚定食を注文することに。

食器棚を見ると、ひょうたん型の器があり、「これは冷奴の器」とご主人がおっしゃったので、冷奴もつけてもらうことにしました。

食事を運んできてくださった女性に、「このひょうたんはコレクションですか?」と尋ねてみると、「いや、全部もらったものばかり」との返事。ご主人も「みんなが勝手にもってきてくれはるねん」とのこと。

「お店の名前が「瓢箪」だからですか?場所が瓢箪山だから?」と尋ねると、「そうやね。もう40年以上ずっとここでやっているからね。最初にもらったのが、このひょうたんなんですよ。これがいちばん古い」と女性。その指先で示してくださったのは、くるりと丸まった味わい深い長ひょうたんでした(写真⑥)。

焼き魚定食はきちんとおいしかったです。常連のお客さんはずっと上機嫌でしゃべり続け、物静かなお二人はそれを聞きながらもくもくと仕事を続けていらっしゃる。壁にはお客さんが勝手にもってきて、いつのまにかこうなったというひょうたんがぶーらぶら……。

楽しそうなおしゃべりと店いっぱいのひょうたんは、どちらもここに安らぎの居場所を見つけたのだと思いました。

(750日目∞ 5月20日)

※次回751日目は奥田亮「でれろん暮らし」、5月23日(月)にアップ。

752日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、5月24日(火)にアップします。