ウイグル料理店「ムカーム」で見かけたひょうたん

by 丸黄うりほ

ホーメイ歌手でイギル奏者の和田史子さん（「ひょうたん日記」824日目と、928日目に登場）が、少し前にSNSで色あざやかにペイントしたひょうたんの写真をアップされていました。

どこか外国にでも行って来られたのかな？と思って聞けば、大阪のウイグル料理店「ムカーム」で見かけたひょうたんだとのこと。ええっ、大阪ですって？大阪住みで、しかもエスニック料理好きの自分が、このお店を知らなかったとは、なんたる不覚でありましょう！

ということで、先日ヒョータニストの杉浦こずえさんと一緒に、ごちそうをいただきに行ってまいりました。

お店は地下鉄難波駅からすぐ、御堂筋を少し西に入った道沿いにありました。間口は狭く、奥行きのあるお店のようです。

お店に入るとすぐにレジがあり、その頭上に、いきなりひょうたん発見！

和田さんがSNSに写真をアップされていたひょうたんに間違いありません！

そのひょうたんの大きさは20センチほど。上の膨らみと下の膨らみのバランスが良く、ウエストもいい感じに締まっています。蔓がついたままで、その蔓の先に針金をつけて天井から吊るしています。ひょうたんには、色とりどりの唐草模様が描かれ、下の膨らみの真ん中あたりには文字が書かれていました。（写真①②）

私はレジにいたお店の人に「これはひょうたんですよね？何と書いてあるのですか？」と尋ねてみたのですが、外国人の容貌をしたその男性は「？」という表情をされました。なので、もう一度「この文字は何語ですか？ウイグル語？何と書いてあるのでしょうか？」と尋ねたところ、「わからない」と日本語で返してくださいました。

そうなのか、わからないとおっしゃった。しかし、このお店はウイグル出身の人がやっているお店だとネットには書いてあったし……この文字はウイグル語ではないのかも？

そこで、私は「これはひょうたんですよね？ウイグル語でひょうたんは何というのですか？」と聞き直してみました。すると男性は、「ああ、ひょうたんですね。ウイグル語ではわからない。ロシア語ではティークワ」と教えてくださいました。

杉浦さんは、「アラビア文字っぽいよね」とおっしゃったのですが、確かに。ロシア語ではないし、中国語でもないし、もしかしたらトルコ語かな……。外国語に詳しい方、ぜひ教えてください。

それにしても。ごはんを食べにきたのに、ひょうたんひょうたんとはしゃいでいるお客は怪しいですよね。私と杉浦さんは予約していた席に座り、メニューを開きました。このお店は本格的なウイグル料理がいただけるだけでなく、ボリュームも満点で開店と同時に満席になる人気店なのです。最近料金が改定されたとかで、正しい値段は紙のメニューではなくスマホで見て、そこから注文してほしいとのこと。

注文は、はっきり言って迷いました。メニューが多いし、どれもおいしそうだし、知らない料理が多いし。中国料理に似たものもあるけど、トルコ料理に似たのもある。羊肉を使ったメニューが多く、二人とも羊好きが一致したので羊中心に串焼き、サモサ的なものなどいろいろ注文してみました。

写真③は、そのうちの一つで、羊肉と野菜の煮込みがパイ料理の上にのったもの。メニュー名は忘れてしまいましたが、とてもおいしく、しかしボリュームが尋常でなく、おなかがはちきれそうになりました。

ウイグルはイスラム教徒が多く、このお店の料理はすべてハラール食材を使って作られているそうです。こんなに品数が多くて、調理法や味付けも多彩だとは思いもしませんでした。さすが、シルクロード。さまざまな文化が交わる文明の十字路の豊かさを感じました。

おなかが満ち足りてくると、店内にある装飾品が目に入ってきました。あちこちにいろんな弦楽器がおいてあり、壁に飾られた絨毯には笛や太鼓などを手にした楽団が織り込まれています。（写真④⑤）

この楽団こそ、店名の由来となった「ムカーム」なのだそうです。「ムカーム」は、声楽と器楽と舞踏が一体となって繰り広げられる古典的な組曲のパフォーマンスで、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されているそうです。お店のウェブサイトには、「ムカーム」のことを「ウイグルのアイデンティティ」とまで書いてありました。

その「ムカーム」とは、どんな音楽なのでしょうか？調べてみたら、YouTubeでも見つかりました（「THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY ウイグルの音楽〜ムカームと民謡」）。料理と同じく、いろいろな国の音楽が入り混じったような、深みと豊かさを感じる音です。いつかリアルで体験してみたいと思いました！

（1026日目∞ 7月25日）