ホーメイとイギルと炊飯釜、倍音に圧倒された日
by 丸黄うりほ
先週末、京都・出町柳にある多目的カフェ「かぜのね」さんで、「ひょひょひょひょひょうたん ホホホホホーメイ」というイベントが開催されました。イベントの主催者は、ホーメイ歌手でイギル奏者の和田史子さんです。
写真①の看板も和田さんが描かれたもの。ひょうたんとホーメイを歌う人の絵がとても素敵!そして、よく見るとあちこちにひょうたんを散りばめてくださっています!(写真②)
古民家を改装して作られている「かぜのね」さんは、奥に多目的スペースがあり、ごはんもスイーツもお酒もおいしいお店。天井にはひょうたんスピーカーもぶら下がっています!(写真③)
14時からはじまったライブはほぼ満席。トゥバ共和国の民族衣装に着替えた和田さんが颯爽と登場し、京都にいながら中央アジアの草原に連れて行ってくれるような、見事な歌と演奏を披露してくださいました。
和田さんが得意とするホーメイは、卸市場の競りのおじさんのようなダミ声と、笛のような響きの倍音を同時に発声する、トゥバの伝統的な唱法です。初めて聴くと「どうやって出しているの?」とびっくりしますが、特に女性からこの声が出ると鳥肌モノ!
和田さんが演奏する楽器もすべてトゥバの伝統的な楽器です。ドシプルールは三本の弦を持つ楽器で、先端に馬の頭がついています。(写真④⑤)
写真⑥の笛は、ショールというそうです。かすれのある渋い音で、とてもかっこいい!
本格的な演奏を聴かせてくださった和田さんのあとに出るのは非常にやりにくく、お客様に対しても大変申し訳ないと感じながら、私は「オール電化ひょうたん」というソロユニットで自作ひょうたん楽器の演奏をさせてもらいました。幸いなことに、いつも「ヒョウタン総合研究所」で一緒に出てくれているモリカワさんが後半から参加。さらに、最後は三人で合奏させていただくことになり、なんとかその場をしのぐことができました……(写真⑦)。ほんと冷や汗。
写真⑦で和田さんが弾いているのは、イギルという二弦の楽器です。レモンを二つに割ったような形、胴は革張りで、弓で弾いて音を出します。ドシプルールのほうが形は馬頭琴に似ているものの、擦弦楽器であるイギルの方が馬頭琴と祖先をともにする、親戚のような楽器なのだそう。この楽器も基音と同時に風のような音が同時に出る!
倍音ってすごい。おもしろい。
その思いは、演奏会が終わってからの打ち上げでさらに高まりました。
和田さんは、ソロ活動以外に音頭バンドの「サンポーヨシ」というグループのメンバーでもあり、「瓜生山オーバートーン・アンサンブル」のメンバーでもあります。打ち上げの会場を提供してくださったのは、「瓜生山オーバートーン・アンサンブル」のよっしーさんとひさゑさんが営む学習塾「えんぴつ舎」さんでした。
秋田出身の和田さんが監修する「正しいきりたんぽ鍋」は、関西人の私にとって本当に珍しく、滋味あふれるものでした。おいしいものをいただいて、気分が良くなってきたら、みんな自然に歌い出す、奏ではじめる!
さすが、オーバートーン(倍音)というだけあって、みなさんホーメイをなさるだけでなく、口琴の演奏もさらりとなさる。さらに驚いたのは、炊飯釜が山ほどあることでした。(写真⑧)
炊飯釜の周囲にすりこぎを当てて回すと、「ほわわわぁん」という倍音が出るんですね。しかも、どれも音の高さや音質が違って楽しいのなんの!
さらに。和田さんがスマホで私の声を録音してくださり、その声を炊飯釜の底で再生しながら、ひとまわり小さい炊飯釜を逆さまにして、スマホに覆いかぶすようにすると……。
自分の声から、ホーメイのような倍音が聴こえてきたのです!
炊飯釜を使って、こんな楽しい倍音遊びができるとは。
楽器じゃないもので演奏する、ひょうたん音楽の自分にとって、炊飯釜の登場は衝撃でした。そして、今更ですが「音」ってなんて不思議な現象なのかと感じ入りました。
(928日目∞ 2月14日)