既製品の助けを借りる

 by 奥田亮

スワロー亭もお正月仕様

明けましておめでとうございます。2021年最初の「でれろん暮らし」です。今年もよろしくお願いいたします。お正月は時節柄、例年以上にどこかに出かけることもなく、誰かが来るわけでもなく、静かに過ごしておりました。

商工会の習わしで、通りの商店は12月末から1月半ばまで店先に紅白の垂れ幕を飾るので、お正月らしい風情になりますが、このあたりは、新年に神社に初詣する慣例はあまりないようで、大晦日にお寺にお参りして除夜の鐘を撞く「二年参り」でお正月は静かに過ぎていきます。うちの斜め向かいの浄土真宗のお寺「西永寺」も、除夜の鐘を撞き、道の向い側にある「桜塚観音堂」にお参りする方で少し賑わいます。その賑わいを当て込んで(?)、「スワロー亭」も深夜営業をしようか、と思いましたが止めました。じつは昨年開けてみたのですが、ひとりも来なかったのです。ははは……。今年の年末は開けてみようかな……。

さて、年末の満龍寺配信ライブに出演させていただき、演奏技術や音楽的な力量はさておいても、楽器の扱いにくさにあまりにも頓着していなかったことに気づいて、改良に着手しはじめました。まずはライブでの楽器の設置方法の改善。たくさんの楽器を現場で重ねていくという手法をとっているので、楽器を現場で次々ととっかえひっかえしなければならず、楽器の配置はけっこう重要なのです。

妻から「よくギターとか立ててあるようなものがあるじゃないの」と言われ、そういえばそうだな、でも結構高いんじゃないの?と思ってネットでギタースタンドを検索してみたら、あらあら、千円以下で買えるじゃないですか。これならいけるかもしれない。でも、当然ギター用に作られているのでこちらの手づくり楽器がうまく適応できるのかどうかわかりません。写真を見ても改良可能な構造なのかどうかも判然としないので、しばらく様子見としました。

年始に街場に出かけたのですが、ちょうど用事のあったビルの階上に楽器店がありました。楽器店は苦手ではあるのですが、勇気をもって向いました。やさしそうな若い店員さんに、あのー、ギタースタンドってありますか? あ、こちらにありますよ! あらら、結構たくさんあるではないですか。ギターはエレキですか? アコギですか? あ、いやあのその、ちょっとまああの手作りの楽器で……。へー、すごいですね。あ、ちょっと見せていただきます……。やさしい店員さんはそれ以上突っ込まずに淡々とそれぞれの機能を説明して、そのままそっとしておいてくれました。いい人でよかった。うーんなるほど、まあなんとかなりそうな感じだったので、とりあえず一つ買いました。

帰って試してみると、なかなかいいではないですか! ひょうたん楽器は既成のギターよりは小さいので、幅などの調整が必要でしたが、それも手でぐい〜っと曲げるとうまくいきました。これならということで、追加で4本をネットで注文。ああ、これで演奏環境が格段に上がります。

ギタースタンドの助けを借りて林立するひょうたん楽器群

こんなことに気づくのにいったい何年かかってるんでしょう。まあ、既製品を使いたくないという気持ちが邪魔していたことは確かで、そこを取っ払うと道が開けたということなのですが、こだわりを捨ててしまうことで閉じてしまう道もあるのかなと思うと、ちょっと負けてしまったような残念な気持ちもよぎるのでありました。めんどくさいですね、じぶん。でれろん、でれろん。

429日目∞1月11

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。