【P探】プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。
先月の関西は「アレ」で盛り上がったわけですが…。
「アレ」というのは、もちろん「アレ」。わからない方は、日刊スポーツのウェブサイトの記事(18年ぶり「アレ」目前 岡田監督も表現する「アレ」の語源とは?)が簡潔に説明してくれているので、参照していただきたいのですが、ざっくり言うとプロ野球・阪神タイガースの「優勝」のことですね。
知ってる方には「何、今頃、ごちゃごちゃ言うてんねん!」と怒られそうなので、「アレ」の説明はコレくらいにしておきます。
はい!
…ということでっ!!
阪神タイガースは先月14日、甲子園球場で読売ジャイアンツに4対3で勝って、2005年以来、18年ぶり6回目のセ・リーグ優勝を果たしましたぁ!!ありがとうございました。
これも、ファンのみなさまの応援のおかげです。
選手に代わって御礼を申し上げます(ここで、約15秒間、深々とおじぎ)。
…「って、お前、誰なんだよっ!」と相方がツッコミを入れてくれれば、ナイツの漫才のできあがりですが、それはさておき。
この「アレ」が現実のものとなったので、大阪を中心にした関西圏が大騒ぎになったことは、かなり報道もされましたので、ご周知の通りでしょう。
プレスリリースの配信にも当然、こんな(↓)感じで反映されるわけで…。
岡田監督アレつかんだ!! サンスポ特別版「阪神18年ぶり優勝」9月17日発売
祝・阪神優勝!関西の報道量は関東の3.27倍に!ついに「アレ」は「優勝」へ・・・在阪テレビも18年ぶりに歓喜!《東西》阪神タイガースリーグ優勝関連報道量(2023/9/14~17)
◆宮本勝浩 関西大学名誉教授が推定◆阪神タイガース2023年「アレ」 の経済効果は関西地域において、約872億2,114万円
とのことで「アレ」のオンパレード。
このなかでも個人的に驚いたのが経済効果です。
なんと、約872億2,114万円。
プレスリリースによると…。
宮本名誉教授は、「今年春の大谷翔平選手が活躍したWBCでの『侍ジャパン』の優勝の経済効果は、約654億3,329万円であった。このように、スポーツにより多くの人が元気をもらうことで、日本が元気になり今後益々発展していくことを願っている」と述べています。
…とのことで、日本のWBCでの優勝の経済効果約654億3,329万円。海外を巻き込んで日本中が注目した「侍ジャパン」よりも、兵庫県西宮市の甲子園球場を本拠地にして大阪界隈で盛り上がったタイガースの「アレ」の経済効果のほうが大きいって…。
どんだけ、すごいねん、阪神。
で、さらに…
同月20日、オリックス・バファローズが本拠地の京セラドーム大阪(大阪市西区)で、リーグ優勝を決めてパ・リーグ3連覇を果たして関西のチームがセ・パ両リーグを制覇。
「18年ぶり」の「アレ」と比べると「3連覇」は安定感と貫禄がありますけど…。
中嶋オリックス、黄金時代到来! サンスポ特別版「3連覇オリックス」9月23日発売
…といった定番の配信のほか、
阪神タイガースの18年ぶりリーグ優勝とオリックスバファローズの逆転によるリーグ3連覇で、大阪府民と兵庫県民はどう動いた?AI位置情報解析のレイ・フロンティアが優勝前後の人流を分析~独自の位置情報分析技術で野球ファンの動きを可視化~
…といったプレスリリースもあって、タイガースと同様にオリックスの優勝でも人流に顕著な影響があらわれていることがわかります。
「東京一極集中」とかいわれていますけど、プロ野球の今季に関しては「関西一極集中」といえるわけかというと、まだまだ、そうでもない。
10月28日から始まる日本シリーズで、タイガースとオリックスが争って、やっと「関西一極集中やなぁ」と断言できるわけです。
それには両チームがクライマックスシリーズ(CS)で、揃って「アレ」しないといけない。
で、日本シリーズを制して、やっと日本一の「アレ」が達成できるわけで、もう「アレ」がたくさんあって、ドレが「アレ」なのかわからないほどです。
ちなみに阪神とオリックスは、オリックスが「阪急ブレーブス」だった時代から日本シリーズで対戦したことがありません。
もともと阪急時代は甲子園球場と同じ西宮市内にあった「阪急西宮球場」が本拠地で、阪急ブレーブスのまま球団が存続して、両チームが日本シリーズで対戦すれば、もう「関西一極集中」っていうより「西宮一極集中」になったわけです。
そんな状況を想定した小説があります。
1974年に発表された「決戦・日本シリーズ」という作品で、著者は、かんべむさしさん。
『’74日本SFベスト集成』という本に収められていまして、当時のSFファンにはおなじみの古典的名作と言ってもいいと思います。
大阪と神戸間を並行して走る阪急と阪神それぞれの電鉄傘下のブレーブスとタイガースが日本シリーズで争い、勝ったチームの選手とファンが、それぞれの親会社の車両に乗って相手の路線をパレードするというストーリーで、作品中では、それぞれがシリーズを制したケースが上下2段の体裁でパラレルワールドのように話が展開していきます。
とはいえ…。
京セラドーム大阪と甲子園球場は、2009年に「阪神なんば線(尼崎—大阪難波)」が全通し阪神本線(大阪梅田—元町)とつながって“直結”しましたし、何より阪急と阪神両電鉄が「阪急阪神ホールディングス」というひとつの企業の傘下になっているのですから「決戦・日本シリーズ」が描かれた昭和40年代後期とは全く状況が変わってしまっています。
「決戦・日本シリーズ」の世界観と重ねるには無理があるのですが、やはり気になる…。
それは僕だけではないらしくて…。
作者の、かんべさんの「ホームページ」を見てみると…。
「玉石混淆・ふりーめも」欄の今年9月エリア「というわけですので、あしからず御了承ください」という項目に…。
「当方のデビュー作『決戦・日本リーズ』は、往年の阪神タイガースと阪急ブレーブス(現在のオリックス)の対決を扱った、ドタバタ小説だった。以来近年に至るまで、シーズン中ちょっとその可能性が出てくると、コメント、取材、インタビューの依頼が来ていた」と記されていますからマスメディアも気になるようです。
でも、かんべさんは…。
「現在、両チームのことを問われても何も知らないし、沿線住民の反応を聞かれても見当がつかない。半世紀も前に書いた作品を題材に、あれこれ聞かれたり言わされたりするのは、もはや苦痛以外の何物でもないのである」
「ましてこの歳になって、相手の期待にこたえて『浮かれる』気など、まったくない。よって先年来、この作品に関するコメント、取材、インタビュー等々は、どちら様に限らず御容赦を願っており、今年もその意思は変わらないのだ」
…とのこと。
ちょっと残念な気もしますが、いわれてみれば、腑に落ちます。
…というものの、「決戦・日本シリーズ」は気になりつつ、とにかくタイガースとバファローズがCSでともに「アレ」して、プロ野球の「関西一極集中」が実現することを、ひたすらに祈っております。
ちなみにバファローズといえば、「近鉄」にもふれておきたいのですが、そこに話が行くと長くなるので、次の機会にして、きょうはこれくらいで。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
(岡崎秀俊)