第4回は、シモーヌ深雪さんお気に入りの漫画や映画がテーマ。今までのインタビューでシモーヌさんの口から何度も飛び出した「キャンプ」という言葉がありましたが、その「キャンプ」感覚にそって眺めれば、ここでリストアップされている作品に一貫性を感じることができるはず。そしてその熱い語り口から、シモーヌさんってほんっとにオタクだよな……(褒め言葉)と実感することでしょう。(丸黄うりほ)

漫画、小説、映画、アニメ。飽和するまで集めてしまう!

——ここからは、シモーヌさんが現在心惹かれているものについてうかがっていきたいと思います。

シモーヌ深雪さん(以下、シモーヌ) 昔からコレクター癖があります。ひとつのものにこだわりだしたときに、ある程度飽和するまで集めてしまう癖があるんですよ。最初はりぼんや花ゆめ、プチフラワー、グレープフルーツなどの少女漫画の雑誌やコミックスで、その後やおいへ。厳密には違うのですが、いまでいうところのBLですね。昔は同人誌で、耽美やソドミーと呼ばれてたりしました。本屋さんに行ったら雑誌とかアンソロジーとかコミックスとか、いろいろ並んでるじゃないですか。表紙を見てると読みたくなって買ってしまう。ある程度までいくと、その世界観がだんだん図式化できて、自分の中で分類できるようになる。その分類がうれしくて集めてるんだろうと思います。BLと並行して、モダンホラーというジャンルの映画とか小説とか、ハウツー本などもコレクションしていました。

——その次は?

シモーヌ その次は、日本ではあまり知られてないんですけど、ユーロトラッシュっていう映画のジャンルがあって、スペインとかイタリアとかフランスとかの、いわゆるB級C級って呼ばれるような作品群なんですが、気づいたらそれにはまっていました。60年代のセクスプロイテーションやサイケ・ドラッグ文化とも密接に結びついていて、それがユニークで面白くて。

ジェス・フランコっていうスペインの監督がいるんですが、生涯で200本近く撮ってるんですよ。で、やっぱり作品を観たいじゃないですか。ネットで探したり中古のビデオ屋さんに行ったり、字幕のない輸入版もそれなりに集めました。フランコはあと30本くらいです。同じくスペインのポール・ナッシー、フランスのジャン・ローラン、イタリアのポリセリやバーヴァ、フランスのペカスやダラマーノ、ポーランドのボロズウィックなど、まだまだいます。そのあたりに詳しい人はハイハイって感じなんですけど、一般的にはほとんど知られてないですね。でも、ユーロトラッシュを集めることによって、世界観や価値観の視野が広がったことは確かです。

フェリーニの「サテリコン」やパゾリーニの「ソドムの市」、アラン・レネの「去年マリエンバードで」などは文芸扱いされてますが、ユーロトラッシュの見地から観るとすごく解やすかったり。ヴィスコンティの「ベニスに死す」も同じく。ロジェ・バディムの「バーバレラ」に至っては、どうつついても実はユーロトラッシュだったという (笑)。

——どういうところが魅力でそんなにはまったんですか?

シモーヌ トラッシュってゴミとかクズっていう意味なんですね。平たくいえば、それなりにお金はかかってるけど、監督の趣味が暴走することにより、不条理が膨張し、物語が破綻してしまったトンデモ系かな。トンデモといってもライトなんですけどね。

あと、「サロンキティ」みたいにポルノ扱いされてるものもたくさんあって、そんな作品に限って哲学的だったりするのも興味深いところです。女性のヌードも男性のヌードも頻繁に出てきて、もちろんそれはエロティックに撮られてるんだけど、どこか絵画的な印象を受けるというか。エロい雰囲気だけがちりばめられているというか。

バタイユにしろ、マンディアルグにしろ、サドもジュネも「エロティシズムを嗜む」みたいなところがあるじゃないですか。結果的にだけど、ユーロトラッシュにもそんな要素があります。70年代はまだお金が潤沢にあったので、装飾や装置が豪華だったり、有名な俳優や女優が出てたりもして。ほかには吸血鬼とか狼男とか、夢魔とか魔女とか、私が好きな怪奇幻想のモチーフがよく扱われているところですかね。それらがゴシックだったりSFだったりで演出され、いかがわしさや訝しさと結託して先の読めない展開が続いてゆく。そんなところに魅力を感じてるんだと思います。

——ユーロトラッシュには何年間くらいはまってたんですか?

シモーヌ 7、8年くらいかな。網羅はできてないので、コレクションは継続中です。

——いま、はまってるものはありますか?

シモーヌ 深夜アニメにはまっています。ゲイ目線ってのがたぶんに入っていて、男性声優やキャラクターに特化して観てしまうのは、ご愛嬌にしてもらうとして (笑)。ちゃんと俯瞰して作品そのものも観てますので。もともとは妖怪系やいわゆるファンタジー系から入ったんですが、主人公よりは敵対する怪物やサブキャラに焦点をあてて観ていました。ブリーチのお父さんとか、犬夜叉の弥勒とか、ポケモンのタケシとか。それはいまでも続いてるし、きっとこの先も続いてゆくのでしょう。腐ってますね (笑)。

BLもモダンホラーもユーロトラッシュもひとりで集めてたんですが、アニメに関しては詳しい人たちが周りにいたので、いろいろと情報を教えてもらうことができました。マンガではあっても、映画やドラマを観て泣くことってまずなかったんですが、アニメってこんなに泣かされる作品が多いんだってことに、改めてびっくりしています。

いま「鬼滅の刃」とかが社会現象にまでなってますが、同時期にやってたダークファンタジーなら「ブラッククローバー」や「炎炎の消防隊」の方が私には魅力的に映っていました。それまでにも社会現象となった作品、古くはヤマトからガンダム、エヴァ、まどマギ、けいおん、進撃の巨人、おそ松さんまで、ファンじゃなくても流行る文脈はそれなりにわかるのですが、鬼滅がなぜそこまでもてはやされるのかは、未だによくわかりません。リアルタイムで観ていて面白くはありましたが、フリークになるほどではありませんでした。友だちはヒーローの在り方が時代とマッチしたのでは?と言ってましたが、頑張る主人公でいえばヒロアカとどう違うの……みたいな。

私は過剰なものが好き。悪趣味なものが好き。

シモーヌ あ、そういえばソフビの怪獣やマテルのバービーも集めていました。ソフビは古いものじゃなく、90年代以降に発売されたものを中心に。きっかけはマーミットのビニールパラダイスというシリーズを、とあるところで大量に安価で手に入れたことでした。そのうち、他のメーカーやオリジナルのものまで手を出すように。どうこうしているうちに制作者とも知り合うようになり、ヤモマークさんとドリームロケットさんとピコピコは、年に一回、日本橋のフェスで会うようになったりとか。ピコピコはソフビを作る前からの知り合いでしたが……。

バービーはボブ・マッキーのシリーズを中心に。ボブ・マッキーはダイアナ・ロスやシェールの衣装デザイナーで、パリのキャバレー LIDOのレヴュー衣装も作ってた人です。とりあえずビーズ。とりあえず羽根。とりあえずスパンコールで埋めとけ、みたいな。首も手も足も動かず、ただ飾るだけのものも数点あります。こちらも90年代以降のものですね。

——シモーヌさんって、もしかしたらベースに怪獣好きがあるんでしょうか?

シモーヌ 幼少が高度経済成長の末期ですから、年代的に怪獣や怪人からは多大な影響を受けていますよ。私が好きなのは変なフォルムをしていたり、表情が読めなかったりするものなんですが、恐竜系はおしなべて苦手ですね。人気があるのはそっちなんですが、ここでもマイノリティの方に傾いてしまってます (笑)。怪人系でいうと、ドン(首領)よりもその下の幹部のポジションが好きでした。赤影や仮面ライダーの初回の放映時から、いつか東映から依頼が来ないかな~とか妄想してました。ヒーロー側の出演依頼ではなく、悪側の出演依頼。正義よりも悪に惹かれてしまうこの気質は、いったいどこから来てるんでしょうね?

——そういうのも、ヒット作品よりキャンプテイストな作品が好きっていうのとつながっている感じがしますね。

シモーヌ つながってるような、つながってないような。この間、友だちと話しててわかったというか、判明したことがあるんです。どれだけ過剰でも、足してあるものは理解したり分解できたりするんですが、ストイックに代表されるような引いてあるものは、さっぱり理解ができないみたいです。

——なるほど(笑)。

シモーヌ 私が今まで歩んできた世界や集めてきたものも、足し算で構成されたものなのでしょう。よくそれで今までやってこられたなと……。世間ではストイックなものの方が高尚とされ、過剰や華美なものは悪趣味とか露悪的なものとされてしまうじゃないですか。でも審美の見地からするとどちらも互角だと思うんですよね。ストイックに軍配があがることの腹立たしさは、子どものころからずっとありました。押し付けはしませんが、シャネルよりスキャパレリの方が絶対楽しいですって。

——ミニマリズムって流行っているじゃないですか。MUJIとか、断捨離……。

シモーヌ デコラティヴなものや奇抜なものって、ベースにセンスの自信みたいなものが要りますからね。ストイックなものにももちろんそれは要ります。今の流行りのミニマムやMUJIって、中間地点のゼロ状態にしてあるんじゃないでしょうか。無難で誰からも非難されない安全地帯のような。そこで語られるオシャレはメディアによる幻影……みたいな。中立を美徳とする昨今の風潮にも似てますね。いざという時に困ればいいと思います。断捨離はまた別の次元のものですが、とりあえず断捨離は敵です。

——そこは強調しておきたいところですね。一貫性があって爽やかです(笑)。

いいえ、私はシャンソン歌手です

シモーヌ 深夜アニメに関していえば、オープニングやエンディングからいろんな楽曲やアーティストを知ることができたり、最新のグラフィックやタイポグラフィーの流行りの動向を研究できたり、季節ごとに新しい発見があります。J-POPのアーティストには疎かったので、知識のひとつとして無理なく自然に得られたのはよかったかも。

——どんなアーティストがよかったですか?

シモーヌ 今でもJ-POPそのものに興味があるわけではないので、どのアーティスト?と聞かれると答えに詰まっちゃうんですが。BUMP OF CHICKENやUVERworld、凛として時雨、MEN WITH A MISSION、いきものがかり、秦基博、フジパブリック、m-flo、やくしまるえつこ、最近だとビッケブランカやAimer(エメ)。全部アニメを通じて知ったアーティストたちです。中でもどちらかというとアニメ寄りのユニットですが、flipsideとKalafinaはいいなと思う曲が多いですね。肌が合ってるのかも。実際、Kalafinaの曲はシャンソンの中にいれても違和感がなかったりします。歌いたい歌と実際に歌える歌はまた違うので、もどかしさはあったりするのですが。そういえば、アニメをフューチャーしたパーティーにゲストで呼んでもらって、ミニライヴのコーナーを作ってもらえるまでになりました (笑)。アニメの楽曲を担当しているミュージシャンと仲良くしてもらったりとか。習うより慣れろですね。

——シャンソン歌手といっても、シモーヌさんが歌うのはシャンソンだけではないですよね。選曲のポイントはどこにありますか?

シモーヌ ドラマティックではなくて劇的なものが好き。

——ドラマティックと劇的は違うんですか?

シモーヌ ドラマティックより劇的の方がオーバーに誇張されているというか。ドラマティックは三次元でどこかノンフィクションともつながりがある緩やかな動きのイメージ、かたや劇的は二次元の書き割りの中で進行する華やかなフィクションやフェイクみたいなイメージです。

——そういう解釈ですか。やっぱり足し算なんですね(笑)

シモーヌ シャンソン歌手には、ドラマティック派の人って結構いるんですが、劇的な表現のスタイルを好む人って意外と少ないんですよね。たとえば、劇的なスタイルを好むのは美輪明宏や高英男、ドラマティックなスタイルを好むのは金子由香利や石井好子。越路吹雪や戸川昌子もぱっと見は劇的ですが、スタイルがそうであるだけで歌そのものはドラマティックなんですよね。ここを誤解して岩谷時子版の愛の賛歌を歌うと、とても所帯くさいものになってしまいます。私は本物のキラッと光る宝石より、イミテーションでもいいからギラギラ光っている方が好きなので、岩谷時子版の愛の賛歌は歌いません。

——歌手としてのシモーヌさんの個性は、オーバーアクションの積み重ねなんでしょうか?

シモーヌ そうですね。そうかもしれません。TOO MATCHというキーワードが好きなんでしょう。でも過剰に過剰を重ね過ぎるとカラフルな色ではなく、濁った汚い色になってしまうので、過剰のさじ加減には気をつけるように心掛けてますね。

——自分のテーマソングって言えるくらいの曲ってありますか?

シモーヌ テーマソング? なんだろ? 全体じゃなくパートでならあると思います。「アムステルダム」とか「化け物屋敷」とか。

——これまでに、いろんなテイストのものを歌ってますよね。

シモーヌ メロディやアレンジから受ける印象で多様に見えるかもですが、愛の不毛だったり、不実だったり、不道徳だったりのものがほとんどなので、テイスト的にはあまりバリエーションがないのかもしれません。

——だけど、選曲は自分でしているんですよね?

シモーヌ はい、自分で選んでます。ただ、拾い上げているものと振るい落としているものの間に、線引きの基準みたいなものがあるはずなんですが、その線引きの基準が何なのかは自分でもよくわかってません。……勘かな (笑)

——CDは91年に『美と犯罪』が出て、そのあと『血と薔薇』を出したんですね。これは何年に出てましたっけ。

シモーヌ 98年です。その後CDは出してません。ライヴ録音ですがカセットテープは出しました (笑)。

——新しくレコーディングして作品を作りたいっていうのはないんですか?

シモーヌ すごくあります。今年こそというか、今月こそと思いながら早や10年くらい経つんですが、早や20年にだけはならないようにしたいです。それなりに準備はできてるんですけどね。

——新しいアルバムを出すとしたら、これは入れるだろうなという曲はありますか?

シモーヌ ブルーオイスターカルトのジョン・クロフォードやエドウィン・コリンズのサマーフェスティバル、パルプのフィアーなどは入れたいところです。

——シャンソンじゃないんじゃあ?

シモーヌ いいえ、私はシャンソン歌手です。

 

※その5に続く

※その1はこちら 

※その2はこちら

※その3はこちら 

 

シモーヌ深雪のおすすめBL(コミックス)

    • 『ニューヨークニューヨーク』 羅川真里茂
    • 『ふたりの関係』 大里幸子
    • 『38度線』 石原理
    • 『Don’t Cry 香港』 篠原烏童
    • 『成層圏の灯/年上のひと』 鳥人ヒロミ
    • 『願い叶えたまえ』 西田東
    • 『夢幻の果て』 今泉鶴子
    • 『炎舞う』 細倉ゆたか
    • 『BANANA FISH 』 吉田秋生
    • 『日出処の天子』 山岸涼子

シモーヌ深雪のおすすめモダンホラー (小説)

    • 『カーリーの歌』 ダン シモンズ
    • 『殉教者聖ペテロの会』 ジョン ソール
    • 『因果の火』 ジョン ソール
    • 『アッシャー家の弔鐘』 ロバート R マキャモン
    • 『ウォッチャーズ』 ディーン R クーンツ
    • 『マンハッタンの戦慄』 F ポール ウィルソン
    • 『ゴルゴタの呪いの教会』 フランク デ フェリータ
    • 『血の本シリーズ』 クライヴ パーカー
    • 『たたり』 雨宮町子
    • 『蛇棺葬/百蛇堂』 三津田信三

シモーヌ深雪のおすすめモダンホラー(映画)

    • 『レガシー』 リチャード マーカンド
    • 『ファンハウス』 トビー フーパー
    • 『キャッスルフリーク』 スチュアート ゴードン
    • 『遊星からの物体X』 ジョン カーペンター
    • 『キラークラウン』 スティーヴン キオド
    • 『ゾンゲリア』 ゲイリー A シャーマン
    • 『地獄のモーテル』 ケヴィン コナー
    • 『デビルズゾーン』 ジョセフ サージェント
    • 『怪猫亡霊屋敷』 中川信夫
    • 『ノストラダムスの大予言』 舛田利雄

シモーヌ深雪のおすすめユーロトラッシュ

    • 『ヴァージンゾンビ』 ジェス フランコ
    • 『呪われたレイプ魔』 ジャン ローラン
    • 『愛と惨殺の孤島』 ニコ マストラキス
    • 『痴漢ドワーフ』 ヴィダル ラスキ
    • 『サンドラ・ジュリアン 色情日記』 マックス ペカス
    • 『悪魔の凌辱』 ルイジ バチェラ
    • 『吸血淫乱姉妹』 ジョセフ ララツ
    • 『イザベルの呪い』 レナート ポリセリ
    • 『ファイブバンボーレ』 マリオ バーヴァ
    • 『ドリアングレイの肖像』 マッシモ ダラマーノ

シモーヌ深雪のおすすめアニメ

    • 『バジリスク 甲賀忍法帖』 GONZO
    • 『からくりサーカス』 スタジオヴォルン
    • 『炎炎ノ消防隊』 デイヴィッドプロダクション
    • 『凪のあすから』 P.A.WORKS
    • 『新世界より』 A-1Pictures
    • 『テガミバチ』 studioぴえろ
    • 『灰と幻想のグリムガル』 A-1Pictures
    • 『輪るピングドラム』 ブレインズベース
    • 『彼方のアストラ』 Lerche
    • 『クロムクロ』 P.A.WORKS
    • 『フェアリーテール』 A-1Pictures
    • 『ブラッククローバー』 studioぴえろ
    • 『メイドインアビス』 キネマシトラス
    • 『夏目友人帳』 ブレインズベース
    • 『今日からマ王!』 スタジオディーン
    • 『世界一初恋』 スタジオディーン
    • 『BACCANO ! -バッカーノ-』 ブレインズベース
    • 『初恋モンスター』 スタジオディーン
    • 『月刊少女 野崎くん』 スクウェアエニックス
    • 『セキレイ』 セブンアークス