「カレーライスは飲み物です」はタレントのウガンダ・トラさんの名言として知られますが、プレスリリースは読み物です、というわけで、プレスリリースをいろんな視点から愛(め)でてみる「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。

いきなりですが、「橋」って面白いですね。もちろん「潮来笠」とか「いつでも夢を」の橋幸夫さんのことではありません。歌手の橋さんと言われてもピンとこない若い方は、ここの部分は、あんまり気にしないでください。

ところで、あなたは「橋」をどんなアクセントで発音しますか?

僕は「はし」です…って文字に書くと、わかりませんが、「は」にアクセントを置きます。
音だけ聴くと、関東の方には食事のときに使う「箸」を浮かべるほうの「はし」です。

大阪人と東京人が話すと「橋」と「箸」がこんがらがってややこしくなりそうですが、「“はし”の上げ下ろし」と言われて「橋の上げ下ろし」と勘違いし、ゴッホの「アルルの跳ね橋」を頭に浮かべた人がいるという話は聞いたことがないので、特に問題はないようです。

で…。
「なにわ橋」なんかは上方落語の定番の舞台で、庶民の娯楽の…
…とか。

“此岸”から“彼岸”に渡る「都市の装置」で、そこが往来可能で“あっちとこっち”がオルタナティブなところが…
…とか。

徳島の祖谷のかづら橋は1970(昭和45)年に国鉄が展開したディスカバー・ジャパンキャンペーンで…
…とか。

そんなことも、まぁ面白さの前提としては必要なんですが、長くなるので、それはさておき、何が言いたいのかというと…。

「橋の専門家が全国を巡り、一つひとつの橋が最も美しく見える瞬間をとらえた、珠玉の写真集『心なごむ日本の橋』が発売」

…というプレスリリースのタイトルにものすごく興味を持ちました、ということです。写真集『心なごむ日本の橋』

「橋」といえばです。「長い」とか「美しい」とか「古い」「怖い」とか、そんな形容詞で「世界で一番」「曲線が」「吊り橋として」といったカテゴリーが加わって関心や評価の対象になるのが普通ですよね。

ところが、この写真集は「心なごむ」です。
「心なごむ」というのが穏便な印象なので、油断していると、その次に「橋」という言葉が来ても、納得してしまうのですが、あなたはこれまで、「心がなごむ」という観点で「橋」を見つめたことがありましたか?

僕はありません。

「いや、私はあります」とおっしゃっているあなた。そう!そこのあなたです。

それは「心がなごむ橋のある風景」ではありませんか?

この本は違うんです。

「なごむ」と「橋」が直結しているんですよ!

僕はそこに画期的な発想を感じたんです。目からウロコです。

発信元であり、この写真集の出版元は「株式会社パレード(大阪市北区天満)」さん。

プレスリリースによると…。

日本の橋はこんなにも美しい――。令和の時代にも遺したい日本全国に架けられた81景の橋を収録。橋の図鑑とも呼べる一冊に仕上がりました。

橋の専門家である平野暉雄氏が、全国を巡り、撮りためた約20万枚もの写真のなかから、厳選した日本の名橋81景を収録した決定版。B5横判で美しい橋の写真を大迫力でお楽しみいただけます。

あれ…「心なごむ」はどこへ行ったんや?

…という疑問はさておき、「20万枚」のなかからの厳選というインパクトもあって、なかなか、味わい深いプレスリリースでありました。

で、インパクトといえば、これもなかなかでした。

「ヴィレッジヴァンガード」さんのプレスリリースで…。

「【いつでもほろ酔い気分】赤提灯ショルダーバッグ登場!!」赤提灯ショルダーバッグ

なんといっても、写真に釘付け。

「会社で使われへんし、葬式にも持っていきにくいがな」「二日酔いの朝はキツそう」とか、ツッコミを入れながらも…。
「欲しいかも」

…と思ってしましました。

「ラーメン」の文字が入った赤提灯ショルダーバッグ

見つめると、おしゃれな気もします

何より、元新聞記者の観点でいうと、社会部、文化部、経済部などの部署にかかわらず、年末の忘年会シーズンに「夕刊の企画面の小ネタに困ったら使えるな」というネタですね。

それから、
インパクトといえば、これも紹介しないと…。

代表が“本当に”会社を背負って東京進出。株式会社人間「東京モバイル支社」“本当に”会社を背負って東京進出。株式会社人間「東京モバイル支社」

とにかくプレスリリースも見てほしいですが、写真とタイトルで一目瞭然なのが良いですね。

「ベタなのに斬新」だというウケるネタのツボを押さえているうえ、「モバイル支社」の造作に手抜きをしないで、アイデアだけで突っ走らないところに脱帽しました。“本当に”会社を背負って東京進出。株式会社人間「東京モバイル支社」

僕なら段ボールを適当につなぎ合わせて、お茶を濁すところです。

まだまだ気になったプレスリリースはたくさんあるのですが、今回はこれくらいにしておきます(岡崎秀俊)