兵庫県立美術館で出会った、ひょうたんの硯

by 丸黄うりほ

①開催中の兵庫県立美術館のコレクション展は二つ

②「中国明清の書画篆刻 -梅舒適コレクションの精華-」は2階で開催

③楊峴「隷書五言聯」、蒲華「富貴図」

④楊沂孫「篆書道徳経語」

⑤胡公寿「平安如意図」

⑥清時代の「瑠璃釉陰刻波濤文長方硯」に、ひょうたん!

兵庫県立美術館に行ってきました。閉会ぎりぎりの日程でやっと来れた「李禹煥(リ・ウファン)展」を見たあと、コレクション展を見て回りました。ひょうたんに出会えたのは、2階の常設展示室です。

それは「中国明清の書画篆刻 -梅舒適コレクションの精華-」と題された展覧会でした。私は中国の書画のことも篆刻のこともまったく知識のない者で、梅舒適という人のことも知りませんでした。「李禹煥展」のついでがなかったら、おそらく足を踏み入れることもなかったでしょう。

展覧会でいだたいたパンフレットの説明によると、令和元年、梅舒適(ばい・じょてき/本名:稲田文一)氏が約60年をかけて蒐集したコレクションが、ご遺族によって兵庫県に寄贈されたとのことです。梅舒適氏は、戦後日本を代表する篆刻家・書家であり、国内外で書芸術の普及発展に貢献された。はやくより中国の文物、とりわけ古代文字に興味を持ち、生涯で200回以上も中国を訪問し、訪中のたびに書画、文房具、印譜類を買い求めてコレクションを形成されたとのこと。

昨年も他の人による寄贈品とあわせて、そのコレクションの一部が小企画として公開されていたようですが、今年は第I期(1月21日から2月19日)と、第II期(2月28日から4月9日)の二回にわけて、中国の明清時代の優品約90件を紹介する大規模な展覧会となったようです。

知識のない私のような者が見ても、そのコレクションの美しさだけはわかりました。篆書、隷書、行書、楷書など、さまざまな書体に見惚れてしまいます。とりわけ、「うわぁ!」と思わず声が出たのは、写真④の篆書でした。

写真⑤は、不思議な絵だなと思い、心惹かれたのですが、目録によると清時代の胡公寿「平安如意図」とありました。如意棒が花瓶にささっている図で、縁起がいいとされているそうです。

ひょうたんは、清時代の硯にデザインされていました。(写真⑥)

目録によると、「瑠璃釉陰刻波濤文長方硯」とあり、陶器製の硯であるようです。ひょうたんは灰色、そのまわりは瑠璃色に塗られていて、文様から波を表現しているのだとわかります。よくみると、波間から魚の尻尾と頭がのぞいていますね。

つまり、このひょうたんは波間に浮いているという設定なのでしょうか?それとも、このひょうたんから水が溢れ出て、そこに魚が泳いでいるという設定なのでしょうか? 作品のタイトルにも、展示の説明にも、このひょうたんについての説明はまったくありませんでしたが……。

この展覧会は第I期と第II期で展示内容が入れ替わるようですが、ひょうたんの硯は第II期も引き続き観ることができるようです。写真撮影も許可されていますので、ひょうたん好きのみなさま、ぜひお出かけくださいね。

(931日目∞ 2月17日)

※次回932日目は奥田亮「でれろん暮らし」、2月20日(月)にアップ。

933日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、2月21日(火)にアップします。