11月7日|でれろん暮らし|その123「既存の楽器を改造」 by 奥田亮

リアノン・ギデンズの弾くバンジョーを真似したくなったので

by 奥田亮

《べんべん》のボディに穴を開け、塞いだり開けたりして音の違いを聴き比べ

なんだかいかにも秋!な快晴が続いています。昼間はそこそこ暖かいですし「この世の春」ならぬ「この世の秋」、とでもいいたくなります。菜園はひょうたんの収穫も終わり、最後まで置いてあった里芋も収穫。ついでに、勝手に伸び放題に伸びていたゴボウも掘ってみましたが、石だらけの地面に生えていたので掘り進めることもできず、少しだけ採ってあとは諦めました。キンピラにしましたよ。

ライブの続いた秋も終盤になり、そろそろ何か楽器を作ろうかなという気持ちが湧いてきたのですが、まだちょっと本格的に取り掛かるまで気持ちが熟していません。ということで、ウォーミングアップといいますか、既存の楽器を改造してみることにしました。

ここのところ出場率が高かった《べんべん》。《べんべん》はりっぱな貰い物のひょうたんにタンバリンを貼り付けてネックをつけた2弦ベース。弾く回数が増えるにつれ、いい感じの音が出るツボもわかってきたのですが、逆に課題もクリアになってきて改造したくなってきていたのです。課題は次の二つ。

1. 他の楽器と合わせた時に音が聞こえにくいので、もう少しクリアな音にしたい。
2. 2弦という潔さは悪くないけれど、3弦にすることで表現の幅が広がるかも。
この二つは、前々からなんとかしたいと思ってはいました。

じつは改造に着手する重たい腰を上げるきっかけはもう一つあったのです。たまたまYouTubeでRhiannon Giddens(リアノン・ギデンズ)という人が演奏するバンジョーを見たことでした。バンジョーといえば、金属弦でカンカラと甲高い音を出す楽器だと思っていたのですが、このバンジョーは古い形なのか、弦はガット弦ぽくて(ナイロン弦でもなさそう)、ボディも金属ではなく木製。音は柔らかくしっとりしています。この感じ、いいなあと思っていたのですが、もっとすごいものを見つけてしまったのです。

ボディがひょうたんでできたバンジョーです。それは、「Rhiannon Giddens interviewed by David Holt」というYouTubeの番組に出てきました。

ご興味のある方は2:00あたりをご覧ください。“ handmade gourd type instrument ”と言っているのでひょうたん製に違いありません。そしてそのボディの横っ腹には大きくサウンドホールが開けられているのが見えます。おお! そうか! ということで、《べんべん》のボディにも穴を開けたくなったのです。ちなみにこのひょうたんバンジョーの演奏は、4:37あたりから見ることができます。モコモコしたいい音で、ちょっと《べんべん》の音にも似ている気がします。それにしてもリアノン・ギデンズ、カッコイイっす。

ということで、いよいよ改造に取り掛かりました。まずは穴あけ。やはり今まで使っていた楽器に穴を開けるというのは、少々勇気がいります。最初はドリルで小さく穴を開け、その穴を掌で塞いだり開けたりしながら弦を爪弾き、音の変化を聴き分けてみます。閉じれば「んー」、開けば「おー」ぐらいの変化。だんだん穴を大きく広げていくと「あー」に近づいていくようです。音が大きくなるというより、倍音が変わる感じでしょうか。倍音が変わり、穴から音が出ることで、楽器全体が鳴るようになる感じです。実際に弦を張ってみないとわかりませんが。

最終的にこんなサウンドホールになりました。周りの小さな穴も何か効果があるような気がします。気がするだけですが。

そして、もう一つの課題、弦を2本から3本にする改造にも着手しましたが、これは簡単でした。というのも、この《べんべん》の糸巻き部分は、その昔作った《チョットナガーイ》という楽器の糸巻き部分を流用していたのですが、この《チョットナガーイ》は、複弦2コースの4弦仕立てだったので4本の弦を張ることができる構造になっていたのです。それに、ペグ(糸巻き)自体も4弦のエレキベース用のマシーンヘッドを購入していて、そのうちの2つを使っていたので、残っていた2つのうちの1つを使ったのでした。

3本弦仕立てに改造した糸巻き。元々あった穴を流用

ボディに穴を開け、弦も3弦になったので、これで課題は解決したわけですが、それで終わらないのがなんというか私の性癖といいますか、めんどくさいところです。上述したリアノン・ギデンズの弾くバンジョーが、5弦仕立てだったのがカッコ良くて、どうしてもこれを真似したくなったのです。5弦バンジョーは4弦バンジョーのネックの途中から1弦短めの弦を付けている構造になっています。この途中から1弦加えられているという付け足し感がかっこいいではありませんか。しかもこのひょうたん5弦バンジョーの糸巻きの波打つような装飾もいい感じです。なので《べんべん》は、3弦プラス1弦という4弦構造にしようと思います。ネックの途中に糸巻きを付ける橋桁を作って取り付け、糸巻きはこれまた以前、《イカレレ》用に購入して余っていたウクレレのペグを使いました。

4弦目のための橋桁(着色前)

ネックの真ん中あたりに装着

さあ、これですっかり改造が終わりました。あとは、3弦ならぬ4弦となった弦を支えるブリッジを作って弦を張れば出来上がりです。ところが、またここで問題が発覚しました。現在使っている《べんべん》の弦は、誰かにいただいた使い古しのお琴の弦だったのですが、今使っているものしかもう残っていません。さて、いったいどんな弦にすべきでありましょうか……、

というところで今週は時間切れ。ちょうど時間となりまーした、これにて終了、また来週、でれろん。

(865日目∞ 11月7日)

  • 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓。