ひょうたんのオバケとひょうたんの落款

by 丸黄うりほ

①大阪府池田市にある逸翁美術館

②「ひゅう どろどろ 怪奇まつり 歌舞伎に出てくるオバケだぞ〜」チラシ

③いろんなオバケの切り抜きがちりばめられています

④ひょうたんのオバケもいます!

⑤展覧会の入口までは撮影OKでした

大阪府池田市にある逸翁美術館で、「ひゅう どろどろ 怪奇まつり 歌舞伎に出てくるオバケだぞ〜」を見ました。会期は今月4日まで。まさに滑り込みです。この展覧会は、歌舞伎などの演劇に取り込まれたオバケの絵を紹介するもの。幽霊やオバケが登場するシーンを描いた江戸時代から大正時代にかけての錦絵を中心に、辻番付や看板、ポスターなどが集められています。

展覧会をぜひとも見たい!と思ったきっかけは、やはりひょうたんです。チラシのなかに、ひょうたんのオバケを見つけたから。

写真②をご覧ください! これが今回の展覧会のチラシであります。めちゃくちゃ素敵なデザインですね。いろんな絵から切り抜いたオバケをちりばめてレイアウトしてあり、「ひゅうどろどろ」というタイポグラフィもいい感じ。

そして、写真③と、さらにクローズアップした写真④をご覧ください!

ひょうたんがいます!なんというかわいさ!

数あるオバケのなかから、このひょうたんオバケを選び出すデザイナーさんのセンスの良さったらないですよね。私は、これがどの絵に出てくるのか、ぜひ自分の目で確かめてみたいと思いました。

逸翁美術館の展示室入口にはチラシと同じデザインの垂れ幕がかかっていました(写真⑤)。写真撮影は入口まで可、室内の作品撮影は不可でした。なので、ここからは文章で伝えていきましょう。

ひょうたんのオバケは、展示室に入ってすぐに見つかりました。三世豊国画、大判錦絵三枚続「天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)」の一枚です。

絵の中央にはお盆の祭壇のようなものが描かれており、そこに置かれた行灯から幽霊の累(かさね)ゆうこんが出現。チラシ③の右の青い顔をしたざんばら髪が累ゆうこんです。ほかに祐念上人と田舎娘おりき、木下川与右衛門という4人の人物が描かれています。ひょうたんのオバケは行灯の隣にいくつか、もう少し左にもいくつかいました。白い顔のもいましたが、ほとんどが青い顔。そして全部が片目です。

絵は、どうやら田舎娘に取り憑いた幽霊を上人がやっつけている場面らしい。累ゆうこんはこの絵では目が二つありますが、片目で描かれることが多かったらしく、ひょうたんの片目もそれに揃えられたもののよう。

しかし……、見ればみるほど不気味可愛い!色といい表情といい、ちょっとスライムを思わせるところがありますね。

全展示作品のなかで、ひょうたんのオバケが登場するのはこの作品だけでしたが、貞房画の大判錦絵「尾上菊五郎当り狂言合」には、かぼちゃのオバケがいました。江戸時代の作品ですが、まるでハロウィンのおばけ。そして「天竺徳兵衛韓噺」のひょうたんオバケにも通じる不気味可愛い表情をしていました。

あと、私は絵師のサイン、落款に注目して鑑賞していました。というのも、8月19日の「ひょうたん日記」でも書いたように、五雲亭貞秀という絵師の浮世絵にひょうたん型の落款を見つけたから。その後調べてみると、五雲亭貞秀は歌川貞秀の別名だとわかり、歌川国貞の弟子だということもわかりました。そして歌川国貞は三世豊国の別名でもあり……。

しかし、三世豊国は今回見た作品のなかでひょうたんの落款を使用してはいませんでした。ところが、ずっと展示を見ていくと、歌川国芳が「児雷也豪傑譚話」という錦絵でひょうたんの落款を使用しているのを発見!ただ国芳の他の絵の落款はひょうたんではありませんでした。

私は落款の形って絵師や、その一門によって決まっているのかもしれないという仮説を立て、今回ひょうたんが大量に見つかるのではないかとうっすら期待していたのですが、どうやらそうではないことがわかりました。ということは、その絵に合わせて? 絵師の気分によって?ひょうたん型を選んでいるのでしょうか?

このあたり、引き続き調べていきたいと思います。

(825日目∞ 9月6日)