湯浅先生の鼻煙壺コレクション

by 丸黄うりほ

①湯浅浩史先生の著書『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』岩波新書

②湯浅先生のコレクションより。アフガニスタンの鼻煙壺(写真提供:湯浅浩史)

③右は中国の鼻煙壺。耳かきのような付属物がついています(写真提供:湯浅浩史)

④左端がアフガニスタン、それ以外はウズベキスタンの鼻煙壺(写真提供:湯浅浩史)

 『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』(岩波新書)の著者である湯浅浩史先生から、なんと直メールをいただきました! じつは4月にメールをいただいていたのですが、あまりにもびっくりして、あまりにもうれしすぎて、今ごろこんな文章を書いています。

ひょうたんがちょっとでも気になる人なら、『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』は必読本です。ひょうたんという植物と、人類・文化との関わりという大きなテーマについて、これほど網羅的に、しかもわかりやすくコンパクトに解説した本は他には見当たりません。日本だけではなく、おそらく世界中探してもこんな本は出ていないのではないでしょうか。

新書なのに写真や図版も豊富で、それらがすべて湯浅先生のフィールドワークをベースにしていることが内容から伝わってきます。その知識の深さはもちろんですが、ひょうたん愛もすごい方なのだということが、一読すればわかります。そんなわけで、この本に心から感動した私にとって、先生は長い間憧れの人物でした。

そんな湯浅先生が、福岡市で「Edit Office 瓢箪座」を営む中野由紀昌さんと面識をもっておられることを知りました。そして、なんと中野さんが「ひょうたん日記」のことを先生に紹介してくださったことも中野さんから聞き、びっくりしました。うれしい。はずかしい。でも、私もいつか先生にお会いできたらいいな……と思っていました。

それが、なんと先生の方から私に連絡をくださったのです。メールには先生の鼻煙壺コレクションの写真3点(②③④)が添付されていました。

鼻煙壺というのは、嗅ぎタバコを入れる小さな容器のことで、清朝の宮廷で流行し、磁器、ガラス、金属などさまざまな材質で作られました。そのなかにはひょうたん製のものも。大阪の東洋陶磁美術館には素晴らしい鼻煙壺コレクションがあり、かつて私も「ひょうたん日記」(636日目)で紹介したのですが、それを先生が読んでくださったとのこと。そして、それに対応する形でご自分のコレクションの写真を送ってきてくださったのです。

写真②の4点はすべてアフガニスタンのひょうたん鼻煙壺。写真③は、左がアフガニスタンで右が中国。そして、写真④は、左端がアフガニスタン、それ以外がウズベキスタンのひょうたん鼻煙壺だそうです。

写真③の中国の鼻煙壺には、ふたの部分に耳かきのような付属物がついているのがわかります。この付属物で中身をかき出すようになっているんですね。中央アジアのものにはそれがなく、銀細工で飾られていてとても豪華です。写真④の左端のように型をはめて栽培し、表面に凹凸をつけたものも。ウズベキスタンには右端のように染めた革を栓にしているものもあるらしい。

ひょうたんの鼻煙壺にも国による違いがあるのですね。私は、使われているひょうたんの形にも国による好みの違いのようなものを感じたのですが、湯浅先生によるとそうではなく、「たまたま手に収まりやすく使いやすい形や大きさが選ばれています」とのこと。実際は中央アジアでもいろいろな形をしたひょうたんが栽培されているそうです。

また、ひょうたん好きにとっては、大変心の痛む情報もいただきました。

「ヒョウタンの鼻煙壺はウズベキスタンではわずかにまだ残っていますが、アフガニスタンでは内乱で絶えてしまったようです」

『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』でも、ウズベキスタンではひょうたんの鼻煙壺がお土産品として売られていることが書かれていますが、アフガニスタンのものはもう入手できないのですね。

貴重な品を見せてくださった湯浅先生、本当にありがとうございました!

(745日目 ∞ 5月13日)

 

※次回746日目は奥田亮「でれろん暮らし」、5月16日(月)にアップ。(「でれろん暮らし」でも『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』を紹介しています)

747日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、5月17日(火)にアップします。