瓢箪座さんと、ひょうたんで結ばれたご縁

by 丸黄うりほ

①ひょうたん尽くし! 中野由紀昌さんの私物

②「玄」の字はひょうたんに似ている?

③黒ひょうたんに松岡正剛さんからのメッセージ

④「Edit Office瓢箪座」のマーク

⑤植物学者・湯浅浩史さん(左)と中野さん

⑥「九州ちよみ」のマーク

北国街道・木之本から長浜へ。先週火曜日からお届けしてきたひょうたん紀行におつきあいいだいた中野由紀昌さんは、福岡県福岡市にある「Edit Office瓢箪座」の代表でいらっしゃいます。

さて、ここで中野さんの私物を見せてもらいましょう!写真①は、長浜で中野さんが身につけていたマスクと、手ぬぐいと小銭入れ。みごとなひょうたん尽くしですね。ひょうたんマスクは、デザイナーでクラフト作家でもある内倉須磨子さんが作ってくれたものだそうです。

中野さんは、このようにかなり重症のヒョータニストなんですが、もとはといえば「ブツとしてのひょうたんに魅せられたというより、イメージからひょうたんの世界に入ったクチ」と自分でおっしゃいます。

どういうことかというと……。

図②は、編集工学者で著述家でもある松岡正剛さんが校長を務める「ISIS編集学校」の九州支所「九天玄氣組」のロゴマークです。松岡さんの俳号「玄月」から一字をもらって名付けられ、このロゴを制作したのは前述の内倉須磨子さん。この「玄」のカタチが、なんとなくひょうたんに似ているなあ……というところから、中野さんはひょうたんが気になりだしたのだとか。そういえば、ちょっと棚からぶら下がったひょうたんみたいに見える?

中野さんは2000年に「ISIS編集学校」に入門し、やがて師範代から師範となり、そこで「でれろん暮らし」の奥田亮さんとも知り合いました。2006年に「九天玄氣組」が発足した後は、内倉さんのお父さんが栽培したひょうたんを譲り受け、それを黒く塗ったものを松岡さんに送り、一筆書いてもらったのだそうです。それが写真③のひょうたんです。ひょうたんには、「九天玄氣組/祈願玄月印」「壺中九天有」「ISIS 2008 KYUSHU」と書かれています。

こうして黒ひょうたんは「九天玄氣組」のシンボルとなり、また2009年に設立した中野さんの個人事務所「Edit Office瓢箪座」のトレードマークにもなりました(図④)。いわく、「シンボルとしてひょうたんを掲げているうちに、巷で見かけるひょうたんに過敏反応するようになった」のだそうです。

「Edit Office瓢箪座」は、編集やDTPなどを請け負っているほか、講座やワークショップなどの催事も企画しています。2017年には、福岡市の天神にあった期間限定書店「Rethink Books」に、植物学者で『ヒョウタン文化誌 –人類とともに一万年–』(岩波新書)の著者でもある湯浅浩史さんを招いてトークイベントを開催。そうです、湯浅さんといえば、東京・上野の科学博物館で2015年に開催された「世界のヒョウタン展–人類の原器–」のブレーンであり、講演もされた、ひょうたん界の至宝ともいうべき人物であります!素晴らしい!超うらやましい!私もお会いしたかった!(写真⑤)

さらに、「Edit Office瓢箪座」は2019年に「九州ちよみ」という新たな部門を立ち上げ、こちらには「ひょうたんでなまずを押さえている」マークを採用。このイラストは中野さん自身が描いたのだそうですが、本当に多才で感心します。そして、九州愛とひょうたん愛がすごい! (図⑥)

ひょうたんのおかげで、中野さんと知り合うことができた。この世にはひょうたんに魅せられ、人生そのものが変わってしまう人物が、自分以外にもいることを知った。ひょうたんにもらったご縁、これからも大切にしていきたいと思います。

(689日目∞ 2月4日)

※次回690日目は奥田亮「でれろん暮らし」、2月7日(月)にアップ。

691日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、2月8日(火)にアップします。