師匠!イプのタネが大きすぎて穴から出てきません!

by 丸黄うりほ

①ぷぅう〜〜ん!凄まじい臭いを放つ水つけイプ

②表皮をタワシでこすり、ドロドロに溶けた中身を振り出します

③どうしよう?タネが穴にひっかかって出てこない!

④とりあえず、空洞に水を満たして戻しましたが……

 

10月29日(628日目)の「ひょうたん日記」で、ついに瓢道の試練の山場「水つけ」に突入したことをお伝えした、我が家のひょうたん、イプの「ドミティアヌス」。

それからざっと2週間たちました。ゴミ箱にぴったりサイズの黄色いカゴを取り付けて、その上に重石のブロックをのせ、ゴミ捨て用の透明なビニール袋で覆っただけの簡単な水つけシステムでしたが、意外とこれが正解でした。きっと臭いが漏れ出すだろうなと思っていたのですが、案外臭わず。

先週末、そろそろ中身が溶けてきているんじゃないかな……と思い、ぺらっとビニール袋をめくってみると、「######ゔおぉぉ!!」

すさまじく臭っています。これはもうしっかりと腐敗している臭いです。強烈であります。拷問であります。この状態が写真①であります。写真から臭いをお伝えすることができなくて本当に本当に残念であります!

しかし、めくってこれだということは、ビニール袋1枚でしっかり悪臭を遮断できていたということですよね。えらいな、ビニール袋。そして、この水つけシステム、完璧ちゃうのん?と、私はちょっと天狗になりかかっていました。

しかし、何かがひとつうまくいくと、また別のところで失敗してるんですよね……。

私は手袋とマスクをつけてひょうたん洗いに挑みました。タワシでひょうたんの表面をこすると、ぺろりと一皮むけます(写真②)。そして、穴をあけた口部を逆さにして振ると、どろどろとした液状になった中身がドボドボと出てきます。ああー、本当に臭い。

この臭い中身と一緒にタネを振り出します。ひょうたんはタネだらけ。タネが多いので「子宝にめぐまれる」シンボルに選ばれ、転じておめでたい印になったとも言われるくらい。

……のはずなのですが。あれっ、何かおかしい。中身が続けて出てこない。見ると、口にタネが引っかかって止まっています(写真③)。私はピンセットでそのタネを取り除き、作業を再開しましたが、またすぐ止まってしまう。

そのとき、私はやっと自分がやらかした失敗に気がつきました。

「イプのタネが大きすぎて、それに比べてドリルで開けた穴が小さすぎて、引っかかって出てこないんだわ……!」

そういえば、春にタネまきをしたとき。あまりにイプのタネが大きくて、「今まで自分が育てたことのあるひょうたんとはだいぶ違うな。これはきっと巨大な実がなるに違いない」と思い、通販で入手できる最大サイズのプランターを購入したのでした。しかし、実際に育てて収穫してみると実は高さ30センチほど。このサイズなら過去にも栽培したことがありました。大きめのひょうたんには直径1センチのドリルで穴を開けることにしていますので、イプも1センチの穴を開けたのですが……。

私は悪臭のなか、作業を中断。ひょうたんを握りしめたままで、しばし考え込んでしまいました。

「ひょうたんのタネはできるだけ振り出してしまったほうがよい。タネをたくさん残したままで乾燥させると、うまく乾かない。それに、臭いも残りそう」

穴を一回り大きく広げればいいのでしょうが、濡れたひょうたんの口部にドリルを突っ込むと割れてしまいそうです。乾いてからなら棒ヤスリで広げることもできるでしょうが、濡れているとそれも無理。

「どうしたらいいの……?」

とりあえず、私はひょうたんの中にもう一度水を満たして、ゴミ箱に戻し、上からもきれいな水を注ぎ入れました。重石をせずともひょうたんはすっかり沈んだので、腐敗そのものはちゃんと進んでいることがわかります(写真④)。

修羅場を片付け、水つけに蓋をしてから、私は再び途方にくれました……。「ほんまにアホなことをした……」。うんうんうなっていたとき、私の頭にピカーッと浮かんだのは師匠のお姿であります!

そうです、もともとこのイプのタネを送ってくださった信州・小布施の奥田亮さん。月曜日「でれろん暮らし」を執筆中の私のひょうたん師匠。奥田さんなら大型ひょうたんの栽培経験も豊富だし、こういう場合どうしたらいいのかもご存知なのでは?

そこで私は、このようになってしまった旨をメールしました。すると奥田さんはすぐに親切な返信をくださいました。

「丸黄さん こんばんは。ご相談の件 私は種が残ったまま乾かして支障があったことはありません。天然のマラカスになりますし。カビが生えたりするかなあ?あんまりそうなったこともないですが。気になるようなら穴を拡げるしかないですね。確かに乾いてない状態だとドリルだと割れそうな気がしますね。小刀で少しずつ削ぐように拡げるのがいいでしょうか」

目からウロコ。私はこれまでなぜか頑なに、タネをほぼ出し切って乾かさねばならない……と思い込んでいたのですが、そうでもなかったのですね!

「今年のイプはタネを残したままで乾かしてみよう。それでどんな様子になるか観察しよう。うまく乾けばそれでいいし、もしうまくいかなくても経験になる」。私はそのように決意しました。

本当にありがとうございます、師匠!

(639日目∞ 11月16日)