気まぐれにちょっとご紹介
by 奥田亮
急に寒くなりましたね、秋をすっ飛ばしたのかと思うぐらい。この間までTシャツ1枚で暑い暑いと言ってたのに、その翌日からいきなりセーターを出してきたりして。先週の金曜にはとうとうストーブを出しました。
先週「ずく」出してひょうたんの水づけしないと、と言ってたんですが、こう寒くなっては、ずくを出すずくもなくなってしまいました。まあ、古民家カフェ「Cカフェ」の裏のひょうたん(74号で紹介)を間もなく収穫するので、それと一緒にやろうと思ってるんだよっと自分に言い訳。
菜園のひょうたんは、IPUとアメリカを残して根っこから抜きました。IPUももうほとんど枯れているのでそろそろとは思いますが、実のなっているあたりはまだ葉っぱも緑で実も緑。もう少し表面が白くなってから、と毎日眺めています。水づけしていた千成は、ついこの間水から取り出して乾燥に入りました。一応少しは、ずく出しておりますよ。
さて、先日仕事部屋の書棚の整理をしていて、昔読んだひょうたん関連の本が出てきたので、気まぐれにちょっとご紹介しておこうと思います。
『ひょうたん漫遊録〜記憶の中の地誌』中野美代子著(朝日選書425 1991年)
中野美代子は北海道大学名誉教授。中国文化史がご専門で、特に西遊記の研究が有名です。あとがきによると、この著書は主に中国人の空間意識を論じたものをまとめたとのことで、桃源郷、ユートピア、崑崙山、風水など、ひょうたんが隠れキーワードになっている事柄について縦横に論じられています。ダンテの『神曲』とか、前方後円墳とかも出てきます。丸黄うりほさんも以前ご紹介されていましたが、ヒョウタニスト必携の書といえるでしょう。『ひょうたん漫遊録〜記憶の中の地誌』はこちら
『星への筏〜黄河幻視行』武田雅哉著(角川春樹事務所 1997年)武田雅哉は北海道大学教授。上記中野美代子に師事し、中国漫画、図像の研究、西遊記の猪八戒の研究など、中国文化のなかでもちょっとマニアックな分野を深堀されておられます。この著書では、太古から続いた黄河源流をめぐる諸説を多面的に考察。黄河源流がひょうたん型に描かれた地図など、興味深い図像とともに中国人の精神宇宙に内在するひょうたんが随所に登場します。同じ著者の『桃源郷の機械学』(作品社刊 1995年)と併せてお勧めです。『星への筏〜黄河幻視行』はこちら
『ヒョウタン文化誌〜人類とともに一万年』湯浅浩史著(岩波新書 2015年)比較的最近でた本で、これも丸黄さんがご紹介されておられましたが、湯浅浩史は、民族植物学がご専門。植生や種のことなど、植物としての理系(農学)の情報も参考になります。『ヒョウタン文化誌〜人類とともに一万年』はこちら
『ヒョウタンの絵本 そだててあそぼう29』おおつきよしあき編/やまふくあけみ絵(社団法人農山魚村文化協会 2001年)
農文協の人気絵本シリーズの一冊。絵本だと軽く見るなかれ。なかなか濃密かつ分りやすい内容で、なんと楽器の作り方まで載ってます! 編者の大槻義昭は農水省にもおられた農学博士。課外活動としてJH(ジャンボひょうたん)会を主宰されているヒョウタニスト。絵の山福朱美は絵本作家。いい味出してます。『ヒョウタンの絵本 そだててあそぼう29』はこちら
食べ物ではない栽培植物として、またその特異な形状から、宇宙観や精神文化を巻き込んで唯一無二の存在となったひょうたん。やっぱりおもしろいな〜とあらためて思うのでありました。でれろん!
(624日目∞ 10月25日)