ひょうたんから菊、イベールさんの節句会にて

by 丸黄うりほ

①重陽の節句に、「後の雛」

②菊に真綿を被せる「着せ綿」

③テーブルコーディネートも菊づくし

④金の漆塗りの菊型菓子器

⑤裏返すと、なんとひょうたん!

⑥持ち上げるととても軽い!

 

きょう9月9日は重陽の節句。私は、大阪市中央区で画廊を営まれているイベールさんの節句会にまたまた参加してきました。前回七夕の様子は、7月16日(557日目)の「ひょうたん日記」に書いていますので、よかったらそちらもあわせてお読みくださいね。

ところで、みなさんは重陽の節句ってご存知でしたか?五節句と呼ばれる1月7日の七草、3月3日の雛祭り、5月5日の端午、そして7月7日の七夕に比べて、9月9日の重陽はいちばん地味で、いちばん盛り上がってない節句であるような気がします。ほかの節句が子どもや若者を中心にした行事であるのに対して、こちらは長寿を願う大人のお祭りだからかもしれません。

重陽の節句は別名・菊の節句とも呼ばれ、菊酒や菊湯を飲むほか、茱萸袋(ぐみぶくろ)に呉茱萸(ごしゅゆ)という赤い実と菊の花を入れて飾ったり、身に着けたりして厄を払い、無病息災と不老長寿を願います。また、菊の花に真綿を被せておき、吸った露で身体を清め、アンチエイジングを願う「着せ綿」という飾り方も印象的。とにかく菊づくしです。

江戸時代には「後の雛」または「秋の雛」と呼ばれる風習もあったそうです。「後の雛」とは、桃の節句で飾った雛人形を半年後の重陽の節句で飾ること。これは人形や道具類の虫干しも兼ねていて、人形を大切にしながら長寿や厄除けを願う。暮らしの知恵と祈りの心が合わさった、心優しく素敵な行事だったのですね。イベールさんによると、ごく最近になってまた「後の雛」を復活させよう、重陽を盛り上げようという動きも出てきているそうです。

さてさて。

今回、じつは事前にイベールさんから「重陽の道具類にひょうたんが見つかった。けど、きっと気がつかへんと思うよ。意外な感じやから……」と聞いていたのです。「菊の節句にひょうたんは無いやろうな」と思い込んでいた私は、「どこに?どこに?ひょうたんが?」とずっと気になりっぱなしでした。

それが、写真④だったのです!直径20センチほどもある、金色をした大輪の菊花。漆塗りの菓子器だそうで、ちょっと見たところは、まったくひょうたんらしくありません。

しかし、裏返すと……!これはまさしくひょうたんの地肌!ひょうたんのお尻の部分が器になっていることがわかります。加工する前はかなり大きなひょうたんだったでしょう。持ち上げてみると、空気のように軽い!木を削ったり彫ったりして作った器とはまったく軽さが違います。なんというおしゃれな器なのでしょう!(写真⑤、⑥)

このような器を見せていただくと、素材としてのひょうたんと、漆という工芸は、よくなじむのだなと改めて感心します。菊づくしの節句会に参加させていただいて、またひとついいひょうたん体験ができました。

(593日目∞ 9月9日)