インドの楽器タンブーラ
by 奥田亮
先週投稿した翌日、ヒョウタンの苗づくりをしました。タネは、IPU、UFO、百成と、物置に入っていた品種不明(たぶん千成)の種の4種類。苗ポットでそれぞれ8苗ずつ作り、衣装ケースに入れて上からビニールをかけました。衣装ケースは簡易温室として便利です。日中は中がかなり熱くなるのでビニールを外しますが、朝晩は冷え込むのでかけ戻します。この中からいくつ発芽するでしょう。
さて、楽器づくりの続きです。共鳴板ならぬ共鳴皮で、中に金属の心棒を入れるところまで前号でお伝えしました。次は糸巻きと弦の固定方法に取り組みました。 あ、その前に、何を作っているか、種明かしをしておきます。インドの楽器、タンブーラ(タンプーラ)です。タンブーラは、インド古典音楽において主奏楽器の背後でびよ〜んびよ〜んとドローン(通奏低音)を流す楽器で、演奏するラーガに合わせて4〜5音階の音を、ずーっと流しつづけます。フレットはなくて、開放弦を淡々と爪弾く楽器なので、特別の技量が必要ということもないようですが、逆に曲に合わせてリズムを早めたり盛り上がったりはしないように、ただただ淡々と弾き続けるのが肝要で、これ、案外難しかったりします。主奏楽器奏者の一番弟子のような人が担当して、師匠の演奏を間近で拝聴するということもあるようです。
私は若かりし学生時代に、習いもしないのに近所に居られた弘雄介(ひろゆうすけ)さんのシタール教室に入り浸っていて、なぜか公演の時に同行して、先生の後ろでタンブーラを弾かせていただいたりしたことがあったりしたのです(たぶん人がいなくて暇な私が呼ばれたんだと思いますが)。そんなことでなじみがないでもないタンブーラという楽器を、いつか作ってみたいと考えていたのですが、一昨年、大きくてしっかりした長瓢ができた時、これでタンブーラを作ったらおもしろいかもしれないと思ったのです。
タンブーラやシタールは、弦の響きを共鳴板に伝えるブリッジを、湾曲した面にすることで倍音が複雑に響き、びよよ〜んと音が伸びるように作られていますが、この湾曲をヒョウタンの自然な曲面をそのまま使ってできないかと考えたのでした。ちなみに、この湾曲してびよ〜んと鳴らす部分のことをジャワリというそうですが、琵琶や三味線の一の絃がびょ〜んと鳴るのをサワリといいまして……、ああ、話がどんどん楽器づくりから離れていってしまいそうなので、この話は止めておきます。
話を戻しまして、まずは糸巻き。バイオリンや三味線のように木製の硬い棒を突っ込んで巻き付けるのが、見た目にも好きなのですが、これで弦を安定的に固定させつつ、チューニングも容易にできるようにするには、木の素材選び、糸巻き棒と穴の口径を合わせる技術などハードルが高く、ナイロン弦ならまだしも、硬くて張りの強い金属弦を使うとなると、なかなか(私にとっては)至難の技です。これまでも何度か試みては失敗を繰り返してきました。演奏中に弦が緩んで、チューニングしてもまたすぐ緩んでしまったり……。
やっぱり簡単に音程が安定させられるのは、歯車のついた既製品のペグ。ちょっと敗北感は否めないのですが、今回はギター用のペグを購入することにしました。ただ、ヒョウタンが柔らかすぎて、そのままヒョウタンに取り付けようにもネジが留まりませんし、ダイレクトな張力には耐えられそうにありません。過去に作った楽器では楽器に通した木の心棒にペグを取り付けましたが、今回は金属の心棒なのでそれも叶いません。そこで考えたのが、木でドーナツ状に丸い輪っかを作り、そこにベグを取り付けて、ヒョウタンに帽子のようにはめ込む方法です。
ということで、ホームセンターで円形に加工された木を買ってきて、ドーナツ状に真ん中に穴を空けました。穴はいびつなヒョウタンの形に合わせていびつにしないといけないのですが、それはとても無理なので、ちょっと小さめの穴にして木槌でコンコンと打ち込み、隙間が空いたところは後で何かで埋めることにしました。はめてみるとあまりにもきれいな円形がどうも不釣り合いな気がして、ランダムに切ってちょっといびつにさせました。張力によるヒョウタンへの負荷は気になりますが、この長瓢、結構しっかりしていますし、金属の心棒があるのでなんとかなるのではないかと、高を括ったのでした。
ところが、ペグの金具を無理に打ち込んだところにヒビが入ってしまったのでした。がっくり…。
気を取り直してもう一度作り直しです。どうせならちょっとへんてこにしようと、ぐねぐねっとした形にし、ついでにゴールドに塗装。タンブーラは通常4弦または5弦ですが、ギターのペグは6個セットなので、6つとも付けました。6弦のタンブーラというのはあまりないかもしれませんが。
さて、ペグも付いたので、このドーナツ型糸巻きを木槌でコンコンとヒョウタンにはめ込んでいったのですが、またちょっと無理に打ち込んでしまって、あらら結局また少しヒビが入ってしまいました。でもまあこれくらいは問題ない範囲ねと判断して、このまま進めることにしました。もしこれが販売するものだったら絶対また作り直さないといけませんよね。私が楽器を販売したり、人に作ったりしないのは、こういういい加減さが許されないからなんです。自分で弾く分には問題ないし、不具合が起こったら修理するか改造するかすればいいのですから。
ということで、糸巻きまでは出来ました。次なる問題は反対側の弦を固定するところをどうするか、ということでしたが、ここでまた何度も失敗したのでした。 ずいぶん長くなってしまったので、続きはでれろんとまた来週!
(502日目∞ 4月26日)