令和3年の幸を願う、空也踊躍念仏

by 丸黄うりほ

▲六波羅蜜寺では年末に空也踊躍念仏を厳修

▲観音様の厄難除けお守りを授けていただきました

▲六波羅蜜寺の案内本と、空也上人立像が表紙の暦

▲境内に咲いていたツワブキの花

 

12月に入って、空也上人が開山したと伝えられている京都市中京区の六波羅蜜寺で、年末に空也踊躍念仏が行われるということを知りました。11月に空也堂で行われた「空也上人開山忌」の歓喜踊躍念仏では、今年の特殊事情によって「ひょうたん叩き」が見られなかったことを2週間前(416日目、417日目、418日目)の日記に書いたのですが……。

もしかしたら、こちらの念仏では「ひょうたん叩き」が見られるかもしれない。

……というわけで、「ひょうたん日記」の今年ラストは、そのレポートをお送りしますね!

この日、私が六波羅蜜寺に着いたのは午後3時半くらいでした。本堂に上がらせていただくと、もうすでにお念仏の開始を待つ数人の参拝者の姿がありました。空也踊躍念仏は、毎年12月13日から31日までの夕刻に行われ、31日だけは非公開ですが、それ以外の日は一般の参拝も受け付けていただけるのです。ただし、お堂での撮影は禁止。また、こちらの御本尊である十一面観音菩薩立像は秘仏なので一般公開されていません。

しかし、御本尊が安置されている金色の厨子の前には……、しっかりと「金色のひょうたん」が置かれていました!!

4時になると参拝者はほぼ本堂いっぱいになりました。住職がお出ましになり、空也踊躍念仏についての説明がありました。

「今から1600年ほど前のこと。京都は悪疫に見舞われた。天皇の詔により、空也上人はこの地に観音様をたて、自身は町へ出て命がけで祈祷と看病に当たった。やがて病の流行はおさまったが、その後もしばらく世の中は暗く沈んだまま。そんな世を救うため、空也上人はわかりやすい言葉と踊りによる念仏を民衆の間に伝え、念仏の祖と呼ばれるようになった。

ところが、13世紀ごろに念仏弾圧が起こり、昭和52年に一般公開されるまでの800年間、空也踊躍念仏はかくれ念仏として、お堂のなかでひっそりと行われるものになった。そのため、普通のおつとめの中にお念仏が組み込まれ、急にパッと終わるのが特徴である。つまり、何かあればいつでも止められるようになっている。また文書は残さず、すべて口伝で伝わってきた。今では重要無形民俗文化財に指定されている。

このお念仏は、1年間に誰もが気づかぬうちに犯した罪の反省を行うものであり、来年の幸せと悪疫退散を願うものである」

だいたいこのようなお話だったと思います。悪疫退散とは、まさに今年の問題ですよね。そして、どれだけ弾圧を受けても800年もの間、密かに続けられてきたという念仏への思いに胸が熱くなります。

祈りは、「モーダーナンマイト」、「ノーボーオミトー」と、聞かれてもわからないような不思議な言葉にうつしかえられています。始める前に、「みなさんも練習してみましょう」と住職がおっしゃる。マスクをしたままですが、声に出してみると、リズミカルで心地よい言葉です。

住職を中心に、右に二人、左に二人のお坊さんがそろそろと内陣に入られました。全員、空也上人立像と同じような鉦をぶら下げてらっしゃる。ですが、ひょうたんは……?見当たりません。

鉦をたたきながら、五人のお坊さんが輪になって回り、「ノーボーオミトー」と唱えながら跳ねる。「モーダーナンマイトー」と唱えながら回る。その動きの面白さに見とれ、リズミカルな鉦と声にしばし聞き惚れていると、「カチン!」と鋭い音がして、いきなり全員が姿を消してしまわれました。

あれっ?今のはどうなっているの?

……すると、そろそろとまた五人が戻って来られ、一礼してからまたも「モーダーナンマイトー」を再開されました。そして、お堂にいる参拝者たちも一緒に「モーダーナンマイトー」を7回唱えて、どうやらお念仏は終わりのようでした。参拝者は順にお焼香をさせていただき、観音様の厄難除けのお守りを授けていただきました。

結論から言うと、空也踊躍念仏でも「ひょうたん叩き」は見られませんでした。ひょうたん探しという意味では残念ではありましたが、とても変わった構成で、一幕の劇を観ているような感じがしました。特に、あの「暗転」のような断絶の直前に聞こえた「カチン!」という鋭い音。この日は鉦の音だったと思いますが、あれはもともとはひょうたんを強く叩く音だったのでしょう。

私は、空也踊躍念仏を見せてもらって、ますますこのお寺が好きになってしまいました。とても寒い日でしたが、境内ではツワブキが健気に、きれいな黄色い花をつけていました。

(425日目∞ 12月29日)

※「ひょうたん日記」と「でれろん暮らし」は、12月30日(水)から1月5日(火)までお休みをいただきます。

次回426日目の丸黄うりほ「ひょうたん日記」は、1月6日(水)にアップします。どうぞ来年もよろしくお願いします!