古代ハワイに思いを馳せる

by 奥田亮

収穫の喜びにひたるユウコさん(右)とユカリさん(左)

水漬けはユカリさんのお父様のヘルプが入った模様。帽子が素敵です

意外なところから瓢縁が繋がって、ハワイのヒョウタン・イプの実の水漬けをすることになったことを先週ご報告しました。うちで漬けられたイプは、順調に腐敗しているようで、漬けた水が少し白濁し、イプの表面の皮がぬるっとめくれそうになってきました。取り出してもう一度口から棒を突っ込んで中身をつぶし、液状化を促進させるべきなのですが、最近ちょっと寒くて水が冷たいので躊躇しています。もう少し様子をみましょう。

イプをくださったユカリさんとユウコさんから、収穫の喜びにひたる素敵な写真が送られてきました。たくさんできてます!水漬け作業はユカリさんのお父様が手伝ってくださったようです。今後の苦行が楽しみです!?

さて、そんなこともあって、ずいぶん以前に現地で調達した“LIFE IN EARLY HAWAI`I:The Ahupua`a” という冊子に、イプについて書かれた箇所があったことを思い出しました。この冊子は、古代ハワイの自然と人々の暮らしを詳細に描いた絵地図とその絵解きで構成されていて、ハワイ語の勉強にもなるとてもいい冊子です。ちなみにAhupua`aは、古代ハワイの伝統的生活空間を指す言葉で、ハワイ先住民の自然と調和しながら暮らす根源的なあり方を表しています。 (http://ulukau.org/elib/cgi-bin/library?c=ahu&l=enで全ページPDFで見られます)。

“LIFE IN EARLY HAWAI`I:The Ahupua`a” Kamehameha Schools press, 1994

この絵地図の中に、ありましたありました、イプを栽培している絵が。棚を作らず地面に這わせて育てています。絵解き解説に描かれたイプのイラストは、まさに今回ユカリさんが育てられたイプと同じ形をしています。解説によれば、ハワイでもヒョウタンはいにしえの昔よりさまざまな器として使われていて、暮らしの道具に欠かせないものだったようです。

79がイプ畑

収穫したイプとよく似た洋梨型のイプのイラスト

冊子にはヒョウタンの楽器として、イプ(解説ではipu hulaとなっています)だけでなく、ヒョウタンあるいは硬い果実の殻で作るガラガラ(マラカス)、uliuli(ウリウリ)、ulili(ウリリ)が紹介されています。フラダンスをしている人にはわりとポピュラーなのかもしれません。

知らなかったのは、hokiokioというヒョウタン笛。どんなものなのか、検索してみたところ、メトロポリタン美術館のサイトに詳しく載っていました。それによるとこの笛は、鼻で吹く鼻笛の一種。静かな夜、恋人同士が互いに吹き合う笛で、”he mea ho’oipoipo” (a thing for love making)と呼ばれることもあるとか。きゃー、ちょっとドキドキ。

それにしても、アフリカ原産といわれるヒョウタンが、太平洋の真ん中の小さな島でも活躍しているのはなんとも不思議です。長い長い時間をかけて、アフリカから大西洋〜南米〜太平洋と渡っていったのでしょうか、あるいは、アジア経由で伝わったのでしょうか。いずれにせよヒョウタンは飲料水を入れる道具として不可欠なものだったはずで、人類はヒョウタンがなければ移動できなかったし、移動できなければヒョウタンは伝わらなかったわけですね。ヒョウタンは人類とともに。でれろん、でれろん。

(371日目∞ 10月12日 )