イカレレはツィター属∩リュート属

by 奥田亮

順調に育つキュウリ

弦鳴(目)・撥弦(科) のツィター属とリュート属の楽器の図

 

きょうも朝からキュウリ警察の出動です。大きくなりすぎた実はいないか、葉っぱに隠れているのを見つけて収穫です。今年はキュウリの隣にこぼれ種からひまわりが大きく育って葉っぱを茂らせているので、さらに発見が難しくなっています。

もう梅雨が終わらないんじゃないかと思うほど毎日雨が続きますが、おかげさまで夏野菜はそこそこ順調に育っています。とくにウリ科の調子がよく、キュウリ、カボチャ、それと今年初挑戦した小玉のスイカも順調に大きくなっています。

ただ今年は例年の主役的ウリ科ヒョウタンの栽培がありません。本編ひょうたん日記の丸黄うりほさんとふじっこさんのヒョウタンの生育状況を読ませていただくと、やっぱりちょっとうらやましい気持ちになりますね。来年はまた復活かな。

さてさて、イカレレの続きです。イカの形状についてはおおかたの理解を終え、いよいよ楽器の制作に進んだのですが、そこでいくつかの選択肢が出て来ました。

イカレレがイカ型のウクレレだとしたらウクレレに習って考えればいいので、それならヒョウタンの胴に棹(ネック)を取り付け、イカの装飾を施せば出来ます。そうやって作れば比較的話は早かったんだと思いますが、根っからの天邪鬼である私は、そのまま素直に進む気になれませんでした。もっとへんてこな楽器にしたい、いや、そうしなければ自分が作る意味がないと、その時手元にあった収穫ヒョウタンのストックを眺めながら思案を巡らせておりました。

ひとつ、小ぶりの長瓢(大長ヒョウタン)がありました。長瓢は通常少なくとも1メートル以上、うまく育てば2メートルを優に越えるほどバカ長くなるのですが、その長瓢は栄養が悪かったのか、あるいは他の品種と混ざったのか、長さは80センチぐらい。真ん中がほんのりくびれていて、わりと上品な面立ちです。これは使えそうでした。

さてこれで作るとなると、長いので胴と棹(ネック)を一体にするのがよさそうです。胴体全体に弦を張るなら、琴などいわゆるツィター属の楽器ということになりますが、一応ウクレレの仲間にしなくてはいけないので、フレットがついて指で弦を押さえるという構造も必要です。そういう意味ではリュート属的です。ツィター属とリュート属の折衷的な楽器ということになるでしょうか。これは意外とない楽器になりそうです。アイヌのトンコリが近いといえば近いですが、トンコリはフレットを押さえて音程を変えるという構造ではありませんし、他にそんな楽器はあまり思いあたりませんでした(あ、ちょっと反則技っぽいけど、大正琴はそうかもしれない)。ただ、ネックが随分太くて少々弾きにくいですし、力をいれて握ると場合によっては割れてしまう可能性もあります。でもそんなマイナス要因を思い浮かべつつも、弾き方を考えたらなんとかなるんじゃないのと、この「意外とない楽器」を作るという方向に気持ちはぐいぐい引っ張られたのでした。

弾きやすい楽器を作るよりも、作りたいように作ってあとで弾き方を考えて辻褄を合わせるのが好きなんですね、わたくしは。楽器製作者の使命は、演奏家がなるべくストレスを感じず、最高のパフォーマンスを発揮できる楽器をつくることだと思うのですが、そういう意味でやはり自分は楽器製作者ではないようです。

全体を胴にして、一部にフレットを付け、さらにイカに見えるようにするためには、かなり面倒な工程が待っていました。一番の問題は、糸巻きをどうするかということと、イカの耳をどうするかということでした。

糸巻きだけではなく、イカレレにはたくさんの特長があります。これは説明し始めるととても長くなりそうなので、続きはまたまた来週に持ち越しです。でれろん、れれろん。

(319日目∞ 7月27日)