かおレレからイカレレ
by 奥田亮
古本屋のスワロー亭にはピアノがあります。古本屋をはじめた最初から、ライブのできる古本屋にしたいという思いがあったので、大阪の実家にあったピアノを運び込むことに躊躇はありませんでした。そのおかげでこれまでに野村誠さん、平松良太さん、西尾賢さん、鈴木潤さん、片岡祐介さんなど、ジャンルもさまざま、個性豊かな音楽家のピアノライブを開くことができました。
今年の2月に入って店舗の改装工事がはじまったので、ピアノは毛布にくるまれて片隅に追いやられていたのですが、工事も終わり所定の位置に設置。先日ようやく調律をお願いしました。
調律したてのピアノというのは、なんとも気持ちのいい音がするもので、ろくに弾けもしないのにポロポロと音を鳴らしております。弾けないなりに手前勝手流に長年ピアノで遊んできたので、それなりに楽しむ術を編み出してはいて、弾いていて飽きることはありません。ピアノは自分にとっては、まずは和音を楽しむ楽器です。左手で低い音を一つ鳴らし、右手で3音以上の音をデタラメに鳴らすだけで、のけぞるようにシビレます。
自作のヒョウタン楽器は多くが弦楽器ですが、ギター型の楽器でもフレットを付けない楽器が多いため(三味線タイプ)、和音(コード)が弾けないか、弾けたとしても響きがあまりよくありません。ピアノに和音の楽しみを求めるのは、こんなことも理由なのかもしれません。
そんな中「レレシリーズ」は、数少ないフレット付きのギター型弦楽器群です。群と大きく出ましたが二つしかありません(写真上)。これはウクレレをもじった名前で、最初にできたのが右の「かおレレ」。顔の形をしたウクレレです。フレットはテグスを簡単に巻いただけのすぐに動かせるもので、このフレキシブルな仕様がじつはとても便利です。かおレレは正規のウクレレの音程で調弦せず、かなりゆるめにして弾くことも多く、その場合音が狂ってしまい、きれいな和音が出ないのですが、フレットを動かせるので、状況に応じて微妙な音を調整できます。またテグスをわりとゆるめに巻いているので、音がズレていると、弾きながら調整ができるのです(写真下)。
その後「ヒゲレレ」とか「ケツレレ」とか、「○○レレ」と名づけられた楽器がいくつかあったのですが、最終的に現存するのは「かおレレ」と「イカレレ」だけです。
このイカレレ誕生には、ちょっとしたエピソードがあります。これは先日のラジオ放送に繋がる、ゴンチチのチチ松村さんとのご縁のお話で、かれこれ十数年前(もっと前?)のこと。当時(今でも?)イカがマイブームだったチチさんが、「イカ展」を大阪の小さなギャラリーで企画され、そこにごあいさつ方々、かおレレを持ってお伺いしたのです。「イカ展」は、さまざまなアーティストがイカをテーマに作品やグッズを展示販売し、BGMにはベートーベンの皇帝(イカルス)、ハワイアン(「イカポ〜ノ〜♪」)などが流れるむちゃくちゃ楽しい展覧会でした。かおレレを見られたチチさん、「ほんならイカレレ作ってよ」と。ということで作ったのがイカレレだったのです。
といっても、完成に至るのはたぶんその1年ぐらい後だったのではないかと思います。イカレレ制作の詳細は、長くなるのでまた来週。でれろん。
(311日目∞ 7月13日)
チチ松村さんがイカについて語る「花形文化通信」(2019.09.10)インタビュー「イカを食べた日の数は幸せの数」はこちらから。