楽器が自分の好き勝手に音を出すので《フリーダム》と命名

by 奥田亮

リード笛《フリーダム》

ここしばらく、自家製ひょうたん楽器のメンテ・改造についてのご報告が続いています。楽器の改良・改造は、一旦完成したようで、弾いていると気になるところが出てきたり、すぐに壊れてしまったりして、行きつ戻りつしております。先週ご報告した《3.5弦》も、傍目にはわからないようなレベルで変化しています。

変化を続けているのは、音が気に入らなかったり、弾きにくかったりするのを「改良」しているからなのですが、改良すればするほど、結局どこか聞き覚えのある「いい」音に近づけていることになってしまっているような気がして、ハタと立ち止まってしまうのでした。聴いたことのないような音の楽器を求めていたはずなのに…。

さて、前置き?が長くなりましたが、今週取り組んだのは、管楽器のメンテでした。私の楽器の多くが弦楽器なのは、まあ好きだからというぼんやりした理由も大きいですが、弦楽器は、弦や天板の素材、大きさ、弾き方などで音色が大きく変わるのが面白いからというのも大きな理由です。いろいろ試しがいがあるというか、作っていて楽しいのです。とはいえ、糸を張ってはじいたりこすったりする弦楽器の音色の違いには限界があるのも確かです。すーっと伸びる音や、空気が当たって倍音が鳴る音も欲しくなってきます。

管楽器もいくつかはありますが、今回ご紹介するのは、成長があまりよくなかったアメリカ瓢(ロングハンドルディッパー)で作ったリード笛。アメリカ瓢はスーッと真っ直ぐに伸びたながーい首の下に、ぽっこりと丸い膨らみがある個性的なフォルムで、体長は1メートル以上になります。ホントに天然自然にこんな形なの?とつっこみたくなるようなひょうたん。成長のよかった実は首が太く、皮もしっかりしていて丈夫で、《げじげじ》と名付けた弦楽器になりましたが、成長のよくなかった実は、首が細く、皮も薄そうだったので、弦楽器には不向き。そこで管楽器にしてみようと思ったのでした。

そういえば私のつくるひょうたん楽器は、「成長がよくない」ひょうたんがよく出てきます。たまたま生育環境や育成技術の未熟さから十分成長できなかったひょうたんを収穫することが多く、それしかなかった、ということも大きな理由ですが、逆に成長がよくないひょうたんでなければできない、思いつかない楽器もたくさんあります。このアメリカ瓢のリード笛も、成長が悪かったからこそできた楽器です。

皮が薄そうだったので、水浸けせずに自然乾燥させたので、残った皮にカビが生えたりして、表面はあまり美しくありません。でも、これも模様だと思うとなかなか味わい深い。指穴はきっと法則があるんだと思いますが(そりゃそうだ)、わからないので長い首の真ん中あたりに、ブスッと一つ穴を開け、指を押さえやすい場所に適当な幅で穴を開けていきました。そんな適当でいいの?とツッコミが聞こえてきそうですが、あとは穴の大きさと吹き加減で微調整していくのです。開けすぎることもありますが、その場合はテープを貼って穴を塞ぎます。穴が大きすぎた場合も、テープで半分塞いだりしてごまかします。

適当に開けた穴

で、肝心のリードですが、先を斜めに切り落とした短い竹筒をひょうたんの先っぽにはめ、塩ビシートを丸く切ったリードを取り付けています。

竹筒を斜めに切って塩ビシートを装着したリード

塩ビは商品の包装資材の中から適した厚さ硬さのものを保管。

当然音は出たり出なかったり、音程も定まらず、急に高い倍音が鳴ったりしますが、まあこれが楽しいといえなくもありません。演奏者のいうことをきかず、楽器が自分の好き勝手に音を出すので《フリーダム》と命名しています。だれが吹いてもいい感じのフリージャズっぽくなります。

くわえ方や息の強さ、指穴の開け具合などを微妙に調整すると、偶然音階のある音が出ることがあり、そんな時は暴れ馬をてなづけたような達成感があります。この楽器は、もっとちゃんとリード楽器の仕組みとコツを学ばないとメンテできそうにありません。むしろ練習して勘所を覚えていく方がいいのかもしれません。でも、こんな不安定な管楽器で合奏したらさぞや楽しいだろうな、でれろん。

(1293日目∞ 3月17日)