イチから考え直した方がよさそうです。降参です。

 by 奥田亮

《芳一》 自然木の棹を市販の丸棒に換えました。この先どうすべきか…。

ひょうたんの収穫も無事終え、自作楽器のメンテや音の調整をしています。先週は《巌窟王》のメンテについてご紹介しました。今週は最新の楽器《芳一》についてです。《芳一》は、カンボジアの楽器 kse dievとタイの楽器 pinpiaを参考にして作った2弦の楽器で、倍音をひょうたんの共鳴胴に響かせます。本家の kse diev や pinpiaの複雑で美しい音色には及びもつきませんが、高い倍音を響かせながら共鳴孔を胸で開け閉めしてワウワウ効果を楽しむ楽器ということで、かろうじてその存在意義を保っているのでした。

ただ、この楽器を何度かライブなどで演奏してみると、わりと響くと思っていた音がじつはあまり聞こえていないということがわかりました。共鳴胴のひょうたんが胸元にあるので、自分ではよく聞こえていただけだったのです。それと、棹に使ったのがまっすぐではない自然木のため、味わいはあるけれどとても弾きにくい、さらには、枝を削って作った糸巻きが硬くて動かないと、いろいろな不具合がありました。これはもう一度考え直した方がいいような気がしていました。

そこで、まずは自然木で作った棹をホームセンターで買ってきた丸棒に換え、弦を太い銅弦から細めの銅弦とステンレス弦に換えてみました。多少弾きやすくはなりました。ただ、音が大きくなったわけでもないですし、オクターブ高い倍音が響くだけ、というと元も子もありませんが、正直、「だからどうなん?」という感じです。「う〜ん、芳一くん、面白くないねえ、君」「いや、僕のせいにされても困るんですけど」と一人芝居を打ってもどうしようもありません。

ということで、もう一度基本に返って、kse diev の YouTube をじっくり観てみることにしました。

う〜ん。まず自分自身が動画をかなりテキトーに観ていたと改めて思いました。いろんな部分で肝心の構造を理解していませんでした。そしてよく見ると弦をはじく右手の薬指に金属のピックを着けている人もいます。弾く音程によって微妙に弾く位置を変えていたり、どうもはじくだけではなく、弾いていない指を微妙に弦に触れさせているようにも見えます。どうやったらこんな音が出るのか、動画だけでは理解できそうにありません。カンボジアまで習いにいく気力もないですし、自分なりの解釈で第三の道を歩くしかないのですが、どちらにせよ、イチから考え直した方がよさそうです。降参です。

幸い、関連する YouTube 番組もいくつかあるようですので、少しお勉強してみようと思います。もう一つの参考楽器タイの pinpiaも形はよく似ていますが弦の数も多く、ハーモニクスを和音で響かせ、さらにワウワウ効果を出しているので、こちらもさらなる追求が必要になりそうです。

それにしても、倍音といえばトゥバやモンゴルなど北アジアのイメージがあったのですが、カンボジア、タイ、ベトナムなど南アジアにも、独特の倍音文化が息づいているようです。この沼にはまってしまうと抜け出せなくなりそうです。はまってしまうか、逃げ出すか、どうしたもんでしょう。でれろん。

(1251日目∞ 11月25日)