ラオスの釣り用浮きと、カンボジアの一弦弓琴

by 丸黄うりほ

①ラオスの釣り用浮きひょうたん(撮影:湯浅浩史)

②カンボジアのひょうたん一弦弓琴kse diev(撮影:湯浅浩史)

③kse dievは、ひょうたんを左胸に当てて演奏する

花形文化通信で、5回にわたって掲載された植物学者・湯浅浩史先生のインタビュー。みなさんは、もうお読みいただきましたか?

かつて世界中の人類がひょうたんと共に生き、その恩恵を受けてきたというお話は、ひょうたん好きはもちろん、今までひょうたんに興味などなかったという方までもが瞠目する驚きの内容だったと思います。

その湯浅先生が、昨年末に「全日本愛瓢会」の会報『愛瓢』を私宛に郵送してきてくださったことは1月6日の「ひょうたん日記」に書きました。

きょうご紹介するのは、その時にプリントを同封してくださったラオスの釣り用浮き(写真①)と、お手紙に書かれていたカンボジアの一弦弓琴(写真②)についてです。

湯浅先生は、昨年11月にカンボジアとラオスを旅してこられました。なんと先生ご自身が案内人をされ、参加された方たちとともに自然観察を行うという豪華企画。時間とお金があれば私も行きたかった!!

ラオスの釣り用浮きについては、ご著書の『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』(岩波書店)の105ページにも写真が載っていますが、詳しい使い方については先生もこれまでわからなかったのだそうです。それが、今回の旅行でメコン川のひょうたんの浮き流し漁Lai Taoについて話を聞くことができたとのこと。ひょうたんの浮き自体はTao bedと呼ばれているそう。

先生のお手紙によると……。

「釣り糸は使わず、死肉の餌にかかった大魚がヒョウタンの浮きを引きずりこんで逃げようとし、弱ってしまうのを待ってから捕獲するのだそうです」「ヒョウタン浮きの中心に棒を通しているのですが、水が入らないように塗る黒い「塗料」の正体もわかりました。ハリナシバチの蜜蠟でした」

ひょうたんで大きな魚を捕まえる。こんな漁法がラオスにはあるのですね!そして、これってもしかしたら「瓢鮎図」の、「ひょうたんでナマズを捕まえることはできるか?」という問いにずばり答えているのでは?Lai Tao漁法なら、もちろんその答えは「できる!」ですよね?

ただし、先生は「メコン川のメコンオオナマズは、シオグサという藻を食べていて肉食ではない、と秋篠宮殿下から教わりました」とおっしゃっています。

ちなみに、湯浅先生は「瓢鮎図」においてナマズは捕らえることが「できる」説をとっておられます。Lai Tao漁法とは全く違うやり方ですが、『ヒョウタン文化誌—人類とともに一万年』198ページに「瓢鮎図」の絵解きをされていて、ひょうたんでナマズを捕らえる方法が見事に解説されています。

一方、カンボジアでは一弦の弓琴を入手されたそうです。現地のガイドはこの楽器をsadeavとかtadeavと呼んでいたそうですが、ネットなどではkse dievとも書かれていると教えてくださったので調べてみました。

このページにリンクを貼ったのは、Sinat Somnangという人によるkse diev の演奏です。ブラジルのビリンバウともよく似た形をしていますが、ビリンバウのように腹にひょうたんを当てて棹を上向きにし石を使って演奏するのではなく、左胸に当てて棹は下向きに指で弾いて演奏するようですね。音もビリンバウのぶんぶんいう音とはだいぶ違っています。この演奏方法については湯浅先生も珍しいとおっしゃっています。

YouTubeについている解説には、「ひょうたん共鳴器を備えたモノコードスティックツィター」とも書かれ、カンボジアには少なくとも7世紀から存在していたこと。しかし、クメール・ルージュ時代に演奏者が殺され、以降ほとんど姿を消してしまい、ミュージシャンがいなくなったとも書かれています。この映像のSinat Somnangさんは、数少ない若い世代の演奏家であるようです。

ひょうたん文化を探し求めて、世界中どこへでも確かめに出向かれる。得た知識を惜しげもなく伝授してくださる湯浅先生。そのバイタリティと懐の深さには敬服の二文字以外にありません。

(906日目∞ 1月13日)

※次回907日目は奥田亮「でれろん暮らし」、1月16日(月)にアップ。

908日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、1月17日(火)にアップします。