大船フラワーセンターで、世界のひょうたん楽器に会う(その2)

by 丸黄うりほ

①ガボンの「ンベット」(左)。湯浅浩史先生の最初のコレクション

②マダガスカルの「ジェゾ」。実のそのままの形を生かしている

③南アフリカの「スペラニ」、ケニアの「ニャアテイト」

④コートジボワール、マリの「コラ」(中央)と、湯浅先生

⑤ウズベキスタンの「ソーズ」

⑥インドの「ゴビチャット」

⑦カンボジアの「セディウ」

⑧アメリカ・ポピ族の「マラカス」

⑨ジンバブエの「双胴マラカス」、ブラジルの「カシシ」、「シェフレ」など 

昨日に続いて大船フラワーセンターで開催中の「ヒョウタン展」レポートをお伝えします。今回の展示の中で、最もボリュームを感じたのが「弦楽器」のコーナーです。

写真①の左に写っているのは、ガボンの「ンベット」。湯浅浩史先生のひょうたん楽器コレクションの第1号はこの楽器だったそうです。私は先生のご著書『ヒョウタン文化誌』で初めて存在を知り、今回初めて実物を見ました。ひょうたんを3つ使い、弦はヤシの葉柄が使われているのだそう。天秤のようにも見える形で、どんな音を奏でるのか想像もつきません。

湯浅先生によると、ひょうたんを共鳴器として使った「弦楽器」の最も古い形は弓に半割にしたひょうたんをつけ、身体に当てて奏でる「弓琴」。そのほか、ひょうたんに2本の腕を立て、そこに横棒を渡して弦を張る「リラ系」、ひょうたんに曲がった棹をつけ、縦に多数の弦を張る「ハープ系」、ヒョウタンに皮を張り、直線の棒を立てて弦を張る「リュート系」があるそうです。

また、マダガスカルには「ジェゾ」という「ツィター系」に分類される三弦のひょうたん楽器があり、多くはひょうたんを切断せず、そのままの形を生かして固着させているそうです。私はひょうたんで弦楽器を作るには切断することが必須だと思い込んでいたので、こういう構造のものもあるのかと新鮮でした。ただし、「ジェゾ」にはひょうたんを切って身体につけ響かせるタイプもあり、この楽器もやはり「弓琴」が原点にあるとのこと。(写真②)

写真③は「リラ系」楽器です。「スペラニ」は南アフリカ、「ニャアティト」はケニア。半割りのひょうたんに皮を張り、弦には動物の腱などを使用しているそう。この二つはよく似ていますが、国によって呼び名が違うのも面白いです。

ひょうたん弦楽器で大型のものといえば「コラ」。コートジボワールとマリのものが展示されていました。そして、おなじみインドの「シタール」。こうなってくると弦の数も多く、高い演奏技術が必要とされます。湯浅先生によると、「コラ」は胴の横に穴があり、それは音質とはあまり関係がない。なんと、演奏家が聴衆から投げ銭を入れてもらうために開けてある穴なのだそうです。(写真④)

個人的に素敵だなと感じたのが、写真⑤です。ウズベキスタンの「ソーズ」という二弦楽器。なんとこちら、ネックの部分もひょうたんです。ヒョータニストの奥田亮さんによると、中に芯木を通せばこのようなタイプも作れるそうです。

写真⑥は、インドの「ゴビチャット」。弦の横に取り付けられた木部を握るようにして、びよんびよんと音を響かせて演奏します。写真⑦は、カンボジアの「セディウ」で、ひょうたんを胸に当てて演奏します。「セディウ」は、湯浅先生が旅先で見つけられた時のことを「ひょうたん日記」で紹介させてもらったこともあります。いずれも面白い一弦楽器です。

弦楽器はこのほかにも紹介したい楽器がたくさんありましたが、きりがないのでこのへんで次のコーナー「体鳴楽器」に移りましょう。

「体鳴楽器」には、いろいろな音の出し方があるのですが、最初に展示されていたのは振って音を出すタイプの楽器たち。代表は、みなさんもよくご存知の「マラカス」です。

「マラカス」といえば私には中南米のイメージがあったのですが、今回の展示ではアフリカのものも多かったです。ひょうたんを3つくっつけたボツワナの「三連マラカス」や、2つくっつけたジンバブエの「双胴マラカス」など面白い形のものもたくさん。アメリカ大陸の「マラカス」は、羽などをつけたカラフルなものが目立っていました。

ビーズやタネなどをひょうたんの外側にまとった「シェフレ」や「チェフレ」も、ブラジルやキューバだけではなく、コートジボワールやマリなどアフリカのものが多数展示されていました。なかにはインドネシアのものも。この楽器は「シェケレ」とも呼ばれ、「ひょうたん日記」では「シェケレ」製作の名人、坂本真理さんにご登場いただいたこともあります。

第一展示室の「フラワーホール」には、ほかに全日本愛瓢会のみなさんによる工芸ひょうたんも多数並んでいました。メインのひょうたん楽器の展示は、第二展示室「フラワールーム」へと続きます。

(1228日目∞ 9月26日)

*あしたに続きます 明日も「ヒョウタン展」の続きをお伝えします。ぜひお読みくださいね!