秋田県の重要文化財「旧奈良家住宅」にひょうたんが?
by 丸黄うりほ
2月に秋田県を旅してきた『花形文化通信』の塚村編集長から、またまたひょうたん情報をいただきました。
まずは写真①をご覧ください。こちらは秋田県立博物館が発行している『秋田県立博物館ニュース N0.177』という冊子です。この冊子を塚村さんは兵庫県立美術館に行ったとき、美術情報センターで入手したそうです。
この7ページ目に「学芸ノート」というコーナーがあります。そこで秋田県立博物館の分館でもある重要文化財「旧奈良家住宅」が紹介されています(写真②)。
その記事のなかに……なんと、ひょうたんが登場しています!
「ふくべ(写真4)は、ヘチマの実を取り、水を入れて腐らせた後、乾燥させます。その中に種籾を入れて、凍らせないで保存するためのものです。「ひょうたんから駒」ということわざがありますが、駒は馬ではなく米であるという説もあります。(民俗部門:深浦真人)」
このように書かれているのを塚村さんは見逃しませんでした。塚村さんのひょうたんアイはどんどん鋭さを増しているようで、私もうれしいです。
文中で「ふくべ」が「ヘチマ」と書かれていることに「?」と感じつつも、塚村さんは博物館に行くついでにここにも実際に行って確かめようと思ったそうです。ちなみにこの『秋田県立博物館ニュース NO.177』はネットにもアップされていてPDFで全文が読めますので、ぜひみなさんも読んでみてくださいね。(これまでの博物館ニュースはこちらから)
さて、写真③をご覧ください。こちらが塚村さんが今回足を運んだ「旧奈良家住宅」の全景です。奈良家は江戸時代の裕福な農家だったそう。昔話に出てきそうな、素晴らしい建物ですね。(秋田県立博物館|分館 旧奈良家住宅はこちら)
この中には秋田県内から寄贈された農具が多数展示されています。写真④の下の方に、「いなべや」と書かれた札が立っていますが、これは「稲部屋」のことらしい。本来は収穫した稲を保管する場所だそうですが、現在は農具を展示してあります。その中に「ふくべ」も見えますね!(写真⑤)
案内してくださった女性に、塚村さんは「これは、ひょうたんですね?」と尋ねてみたそうです。すると、その女性は「私たちはユウガオと呼んでいます」とのこと。(ん。ユウガオなら、わかる)と塚村さん。ヘチマとひょうたんはどちらもウリ科ではありますが別の植物。でも、ユウガオとひょうたんは学名まで同じ、Lagenaria siceraviaなのです。
手の届きそうなところにあったので、触りたかったけど触ってはいけないということで、スマホを上からかざして撮ったのが写真⑥だそうです。皮がとっても分厚いですね! 先日「ひょうたん日記」(1143日目)にぱっくりと割れてしまったことを書いた、我が家のオオナガユウガオ「トラヤヌス7号」の皮とはずいぶん違います。
「旧奈良家住宅」の「ふくべ」は、上記にも書いたように種籾の保存容器として使われていたらしい。これだけしっかりしていたら、何年でも使えるでしょう。黒くなっているのは、おそらく囲炉裏の炭の上に吊るしていたからではないかな。炭火の上に吊るしておくと、いっそう中身の持ちが良くなるらしく、農家ではそのようにひょうたん容器を使っていたと何かで読んだことがあります。
塚村さん、秋田県のひょうたん情報をありがとうございました!
(1151日目∞ 3月6日)
- 丸黄うりほ ライター・編集者。ひょうたんをタネから育て、その実から音の出るものを自作し、演奏する楽団「ヒョウタン総合研究所」立ち上げ所員。ソロで「オール電化ひょうたん」としても活動中。ひょうたん栽培歴は15年ほどになるが、畑がないので毎年マンション(大阪市北区)のベランダでプランター栽培している。「花形文化通信」では、ほかにインタビュー記事を担当。