予想できないぐらい行き当たりばったりに進めている
by 奥田亮
崩壊した楽器《へびお》の修復はどんどん意外な方向に展開していき、もはや修復の域を超えて新しい楽器を作っていると言った方がいい状況になってきました。全体の構造、フォルムは先週ご披露した形を保ちつつ、ディテールで予想外のことが起こり(というか、予想できないぐらい行き当たりばったりに進めているので)、軌道修正を繰り返しております。
《へびお》は糸巻きがボディの下にあり、通常のリュート属の弦楽器とは逆の構造になっています。なので、糸巻きに巻く弦の反対側の端っこを固定するのはネックの先ということになるのですが、今回は、ネックを包み込むようにサブ共鳴体を付けることにしたので、弦を留めるところがひょうたんで隠れる形になります。それはそれで、なかなかおもしろい感じになるやんかと、まずは下図の上のように長めの木ネジをひょうたんとネックに貫通させ、ネジの頭に弦を巻きつける形にしようと考えたのです。ひょうたんのふくらみのところは、穴をあけて弦をくぐらせればいいではないですか。ところが実際やってみると、いろんなマイナス要因が出てきて、結局弦をうまく張ることができないということに気づきました。
どうすればうまく行くのか2日ほど考え、ようやくお風呂で妙案を思いついたのですが(図の中)、それも実際やってみるとうまくいかず、ということを繰り返しながら、最終的に比較的ノーマルに、ネックにネジを打って弦を留めるという形に落ち着いたのでした(図の下)。
最後に弦が切れた時に取り替えやすくするためにサブ共鳴体のひょうたんに窓を開けました。でも、このひょうたんは付け外しができるので、弦を張る時はひょうたんを外せば窓を開ける必要はなかったんじゃないの?ということにあとで気がついたのでした。覆水盆に返らず。瓢穴元に戻らず。
予想外のことはあちらこちらで起こりました。そのため、いろいろなパーツを作っては試し、試しては作るを繰り返し、無駄なものをたくさん作りましたよ。ちゃんと設計図を作るとか、もう少しちゃんと計るとかすれば、少しは効率的にできると思うのですが、いきあたりばったりなのが好きというか、計画してそれを実行するという行動ができないのだと思います。敬愛するグラッフィックデザイナー祖父江慎さんはよく「うまくいかないよろこび」ということをおっしゃっていて、最初はどういうことなのかよく分からなかったのですが、うまくいかないからおもしろいんですよね。ホントにつくづくそう思います。
紆余曲折を繰り返しながらも、少しずつ完成には近づいています。昨日試みに1本弦を張って音を出してみたら、思いの外いい音。サブ共鳴体もかなりいい仕事をしてくれています。張った弦はシタール用の銅弦。柔らかく伸びるネットリとした音は銅ならでは。ねじるとすぐに切れてしまうのが欠点ですが、この銅弦の音にはしばらくハマりそうです。
あとはかねてよりの懸案であるブリッジ(ジャワリ)を作れればほぼ完成です。はやく音を出したい気持ちをぐっと抑えて、オイルステンで着色。さあ、来週にはできているでしょうか……、でれろん。
(1147日目∞ 2月26日)