楽器が壊れると、楽器を改造するいい機会に
by 奥田亮
1月後半から2月、一年の中で一番寒い時期に突入しました。ただ今年は、最高気温が氷点下という日があると思えば、暖かい春のような日もあって、寒暖の差が激しく、余計に寒さがこたえます。ここ数日で積もっていた雪もすっかり溶けて、過ごしやすくて助かりますが、冬はやっぱり雪景色がいいなと、すっかり信州に慣れた口ぶりの、移住12年目の冬です。あれま、もうそんなにたつんですね。
先週は「馬鈴薯のための演奏会」のご報告をさせていただきました。演奏中に《ヘビオ》が崩落するという「おいしい」ハプニングがあり、そのことも一助になって柄にもなく弾けてしまったのですが、今週はその壊れた《ヘビオ》について記したいと思います。
ひょうたん楽器が壊れることはよくあることで、今までもいくつもの楽器が壊れたりヒビが入ったりしたのですが、ショックを受けたり落ち込んだりということはほとんどありません。ああ、壊れちゃったなと思うだけです。接着剤でくっつければ直るのか、もう寿命だと判断するのか、フラットに判断します。修理後の方がいい音になることもよくあります。何度も壊れてはくっつけて、を繰り返し、さすがに限界が来て処分した楽器もあります。成長具合にもよりますが、ひょうたんは案外もろい素材で、経年劣化でさらにもろくなるようです。
《ヘビオ》に使っている長瓢は、たぶん1999年ごろ滋賀県栗東町で開催したひょうたん楽器づくりのワークショップのギャラの一部(?)としていただいた「目川ひょうたん」という地元の特産品でした。かれこれ25年以上前に収穫したものということになります。楽器を作ったのがもう少し後だとしても、少なくとも20年は経っていると思われます。《ヘビオ》になる前には、《ダイブナガーイ》という名前だった時代もある、一度転生した楽器で、《ダイブナガーイ》の時代にも何度か壊れ、結構大々的に改造しています。何度目かの改造で最終的に蛇の飾りを付けて《ヘビオ》になったのです。《ヘビオ》になってからも胴体にヒビが入り接着剤で修繕しています。今回もそのヒビのところから割れたので、崩落は必然だったといえます。
じつは《ヘビオ》には、さらに改造したいところがいくつかあったのですが、面倒だなと思っていたのでした。楽器が壊れると、楽器を改造するいい機会になります。今回壊れたのはネック部分のひょうたんで、構造上ひょうたん自体には弦のテンションの影響がないので、破片を接着剤でくっつければ、しばらくはそれで問題ないのですが、せっかく壊れたのですから、壊れたことを活かして改造することにしました。
ネックまであったひょうたんの共鳴胴が割れてなくなると、言ってみれば箏系(ツィター属)からギター系(リュート属)に鞍替えしたことになります。ツィターからリュートへの転生です。ひょうたんの割れ口は、このまま空けて共鳴孔として活かすことにします。それから、かねてから《ヘビオ》の問題だったのは、楽器が軽すぎる上に、底面が丸くて安定せず、とても弾きにくいということだったので、この際この問題を解決すべく改造しようと思います。その他にも改善したいところがいくつかあります。
ということで今回は、部分的にバラしたりネジを外したりするところまで進めてみました。あらためて見ると我ながらなんとも雑な作り。繊細な作業はできませんし、まあ音が出ればそれでいいやんか、という考えが基本ですが、今度はがんばって少しはきれいに仕上げる努力をしてみましょうかね。 ちょっとじっくり考えて、どんな改造をするか決まったら、ホームセンターにお買い物に行こうと思います。続きはまた来週。といいつつ、来週進展しているかどうか、怪しいのですが。でれろん。
(1136日目∞ 1月28日)