いわゆるエフェクターなるものを導入してみることに
by 奥田亮
今年は新年を寿ぐ気分になれない大変な幕開けとなりました。ごあいさつをしないまま小正月を迎えましたが、遅ればせながら本年もよろしくお願い申し上げます。
小布施町では毎年1月14日、15日、新年恒例の「安市」が開かれます(でれろん暮らし132参照)。商工会の役で担当している達磨のお焚き上げ係も今年で3年目。とはいえ、この2年はコロナの影響で開催しない行事があり今回ようやくすべての行事が再開されるようです。このでれろん暮らしがアップされる15日には、お稚児行列と火渡りの神事が執り行われます。きっとにぎわうことと思いますが、土曜日から大雪の予報。14日朝は雪かきから始まるんでしょうね、ああ。
今年は14日朝の準備と達磨お焚き上げ係の後、午後からの役はご容赦いただいて、上田市のブックカフェ NABOで開かれる「馬鈴薯のための演奏会」に出演いたします(前回のでれろん暮らし参照)。ひさびさの演奏なので先週はその準備と練習を集中的にやっておりました。ひとりひょうたん楽団なので、ループマシンを使って音を重ねていくのですが、練習は概ね、ループマシンの操作や調整に費やすことになります。久しぶりなので操作方法を忘れてるんですね。スイッチペダルを踏むタイミングも練習しないとうまくいきません。
そして今回は意を決して、いわゆるエフェクターなるものを導入してみることにしました。スイッチ一つでかっちょいい音が出るのでこりゃさぞや便利だろうなと思いつつ、なかなか手が出なかったのですが、今回思い切って使ってみることにしたのでした。zoomのA1X FOUR(MULTI-EFFECTS PROCESSOR)というやつ。当然ながらひょうたん楽器用ではなくて(あたりまえやん)、基本アコースティックギター用なのですが、ハーモニカやサックスにも対応していて、いろんなエフェクターがたくさん入った魔法の箱!ループもリズムマシンも入ってます。ああ。買っちゃった…。買った時は微妙な敗北感に襲われてちょっと落ち込みました。テクノロジーに魂を売るのか、という心の声が聞こえてきたのです。でも、そう考えること自体が敗北で、テクノロジーは使ってなんぼ。昔っからなんとかとハサミは使いよう、とかいうじゃないですか。使いこなすには、楽器を弾きこなすのと同じぐらいの技量と練習と感覚が必要なんですね。
いつも練習しながら、うすうす気づいていたのですが、どうも私は、練習や準備をすればするほど、本番のテンションがどんどん落ちていってしまいます。練習してうまくいった感じを再現しようとすると、そればかりに気を取られ、予定調和が起こって演奏していても面白くないし、あの感じを本番でも!と欲が出てしまいます。なのでできるだけ準備してない心持ちで本番を迎えないといけないのですが、これが難しいわけです。今回も同じ轍を踏みそうだったので、楽器を練習する気持ちをグッと抑えて、機材の操作だけ覚えるようにしました。ライブはノリとテンションが大切、というか、それさえあればなんとかなるような気がします。即興で演奏できてすごいですね、みたいなことを言われることがあるのですが、そうじゃなくて、むしろ即興しかできないんです。
さてさて、「馬鈴薯のための演奏会」は、どんなことになるのでしょうか。ご報告は来週にさせていただきます。ああ、雪がどんどん降ってきた…、大丈夫かな。でれろん。
(1130日目∞ 1月15日)
- 奥田亮 ∞ 1958年大阪生まれ。中学生の頃ビートルズ経由でインド音楽に触れ、民族音楽、即興演奏に開眼。その後会社に勤めながら、いくつのかバンドやユニットに参加して音楽活動を続ける。1993年頃ひょうたんを栽培し楽器を作って演奏を始め、1997年「ひょうたんオーケストラプロジェクト」結成、断続的に活動。2009年金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」展に「栽培から始める音楽」出展。2012年長野県小布施町に移住し、デザイン業の傍ら古本屋スワロー亭を営む。2019年還暦記念にCD『とちうで、ちょっと』を自主制作上梓