リアル「ひょうたんせんぱい」との出会い/和歌山・上富田探訪(3)

by 丸黄うりほ

①とても香りが良くて、おいしい梅干し

②口熊野・八上農園、「せんぱい」の梅干し

③製造所の奥に、立派なひょうたんが!

④ひょうたんがどんどん出てきます。「八上王子跡」案内板と記念撮影

⑤「八上神社」の鳥居前で。幸せいっぱいのうりほ(撮影:フェイ・ターン)

⑥「創作館」に到着しました

⑦収穫したひょうたんを、大きな樽二つで水浸け中!

⑧樽の底に仕込んだホースで水を交換する 

ひょうたんの聖地・和歌山県西牟婁郡上富田町訪問シリーズ3日目をお送りします。

とにかく最初から予定通りにいかない旅でした。ランチにするつもりで訪れた中華料理店が閉まっていたのを皮切りに、ころころとひょうたんのように転がっていく展開に……。

他に店がなく、たまたま入った「コーナン」で、思いがけなく町のキャラクター「ひょうたんせんぱい」グッズに出会った私たちヒョータニスト4人組。そこでお弁当を買って「八上神社」の近くまで戻り、道端の空き地で食べようとしていたら親切な男性に声をかけてもらいました。そこまでは先週の木曜日と金曜日の「ひょうたん日記」に書きましたね。

その年配の男性は、ひとりで梅干しを干す作業をされていました。どうやらただの民家ではなく、梅干しの製造所であったようです。

弁当を食べている私たちに、「梅干しあげようか?」と言ってくださったので、遠慮なく一粒ずついただきました。これが、とてもおいしい! 「どこから来はったん?」ときいてくださったので、「大阪です」と答えました。「私たちはじつは全員ひょうたんが大好きで……」と自己紹介を始めると、男性は目をキラリと輝かせて「ひょうたんならあるで!」とおっしゃいます。

製造所の中へ入らせてもらうと、棚の上のざぶとんに大きくて見事なひょうたんが鎮座していました。さらに、奥からも布でくるまれて「寿」マークの刺繍のついたひょうたんが登場!

「これは私の父親が作ったひょうたんなんや」と男性。

「すごい!さすがひょうたんの聖地、上富田だ!」と、私たちは大騒ぎ。そのひょうたんをお借りして、神社の鳥居前や「八上王子跡」の案内板の前で記念撮影をしました。

私たちは「八上神社」にお参りをした後、おいしかった梅干しを買いました。値引きしてくださった上に「売り物にならないから」と不揃い梅をたっぷりとくださって、うれしいけど申し訳ない気持ちになるほど。

さらに、男性の親切はそれだけではありませんでした。

「ここのひょうたんの収穫はもう終わったよ。せやけど畑の近くに『創作館』っていうのがあるんや。そこで水浸けにしてるから見に行っといで」

なんと、目当ての一つであった上富田町・岡地区のひょうたん畑はもう収穫を済ませてしまったのか!またしても予定通りにいかなくて少々気落ちはしましたが、代わりに水浸けの様子を見せてもらえるとのこと。

「創作館」は地図でみるとわりと近くに見えましたが、徒歩で行くと結構かかるということで、フェイ・ターンさんの車で移動することになりました。しかも、男性が自分の車で先導してくださるというのです。私たちは「申し訳ないです」と言いつつも、思いがけない展開がうれしくて大はしゃぎ。

「なんと親切な人!あの人こそ、リアル『ひょうたんせんぱい』だよね」。私たち4人のなかで誰が初めにこう言い出したか覚えていないのですが、車の中で全員が首をぶんぶんふって頷きました。ということで、ここからは男性のことを「せんぱい」と呼ばせていただこうと思います。

現地に到着し、車から降りたせんぱいは、大きな樽二つで水浸け中のひょうたんを見せてくださいました。せんぱいによると、樽に入れたひょうたんの下にホースを仕込んであるそうで、こうすれば浮いてこない上に水道の蛇口をひねれば水交換も簡単。大量のひょうたんにしては瓢臭が薄めなのは、その水浸けシステムの工夫によるものだということです。

樽が置いてある建物には「創作館」という木の看板が。ガラス戸から中を覗き込むと、ひょうたんが見えました。入り口には鍵がかかっていましたが、なんとせんぱいは「わし、鍵も持ってるで」とおっしゃいます。

(1070日目∞ 10月3日)

*明日に続きます。 

*上富田の旅はこちらから