根津美術館
古美術っておもしろい!-今回は「美術のなかの文字」の鑑賞ポイントをたっぷり解説します。


書そのものではなく、絵画や工芸の中にあしらわれた署名や印章、賛や作者名や和歌などの「文字」に注目!

近世の特定の画家に焦点を当てた展覧会が話題となる一方で、東洋古美術は西洋美術にくらべてむずかしい、あるいはなんとなく敷居が高い、という声があいかわらず少なくないのが実情です。こうした声にこたえて、当館では2016年の「はじめての古美術鑑賞 -絵画の技法と表現-」を皮切りに、「紙の装飾」(2017年)、「漆の装飾と技法」(2018年)、「絵画のテーマ」(2019年)、「人をえがく」(2021年)、「写経と墨蹟」(2025年)など、古美術の技法やテーマをやさしく解説する企画展示「はじめての古美術鑑賞」シリーズを6回開催してきました。
 今回は「よめない」と敬遠されがちな書そのものの作品からあえて離れて、画家の署名・印章(落款)や所蔵を意味する鑑蔵印、自筆・他筆によって加えられた詩文や和歌の賛、屏風絵や絵巻の景色の中に組み込まれた和歌、仏画のなかの文字、銘文、文房具や器物に記されたや詩歌や吉祥の文字など、「美術のなかの文字」に注目してみました。
 景色の中に和歌一首が散らし書きされた当館所蔵の「鏡山図」(鎌倉時代)を、類品3幅とともに初めて同時公開するのも一つの見どころとなるでしょう。
 この展覧会を通して「美術のなかの文字」がいかに大切かを実感していただき、みなさまと東洋古美術とを少しでも近づけることができたらうれしく思います。

絵画の中の文字



重要文化財 竹雀図 伝 牧谿筆 1幅 紙本墨画 中国・南宋時代 13世紀 根津美術館蔵 (5月30日~6月21日展示)
落款と鑑蔵印絵のなかにある文字で、第一に重要なのは画家の落款(署名や印)である。しかし、仏画をはじめ古い絵画には無落款のものが多い上、捺された印が将軍や大名などが所蔵したことを示す鑑蔵印のこともあるので要注意。




重要文化財 江天遠意図 伝 周文筆 大岳周崇ほか11 僧賛 1幅 紙本墨画淡彩 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵(6月23日~7月12日展示)
賛絵の上部や空間に書き込まれた詩文や和歌などを賛という。多くは依頼された他人が書いたもので、画家がみずから記したものは自画賛。室町時代に流行した詩画軸の中には、30人もの禅僧が賛を加えた作品もあった。




文字絵十一面観音像 大臨晋城筆 1幅 紙本墨画 日本・江戸時代 嘉永6年(1853) 根津美術館蔵
仏画にも文字仏画に書き込まれる文字には経典からの引用や、多数の尊像を見分けるための名札などがあり、種子とよばれる梵字が用いられることもある。江戸時代には経文を書き連ねて仏菩薩や五百羅漢などをあらわすことも行われた。

← 拡大図はトップのポスター画像でご覧ください。




鏡山図 1幅 紙本着色 日本・鎌倉時代 13~14世紀 根津美術館蔵
景色のなかの和歌描かれた名所や景物に合わせて和歌を詠み、それを絵の中に書き込むことが平安時代中期に流行した。そうした伝統をふまえた、絵と和歌の二重奏ともよぶべき作品が、鎌倉時代の絵巻や近世の屏風絵のなかにみられる。
本展では、もとは1つの画巻から掛け軸とされたこの「鏡山図」を含む類品4幅(「草花図」、「紅梅図」、「海浜図」)を、はじめて同時公開する。



工芸のなかの文字


重要文化財 霰地松梅図真形釡  芦屋 大江宣秀作 1口 鉄 日本・室町時代 永正14 年(1517) 根津美術館蔵
銘文絵画の落款に相当するのが工芸の銘文。その歴史は中国古代の青銅器にまでさかのぼる。作者や所有者の名だけでなく、制作の目的や出資者、用いる場所などを表記したものもあり、その作品の来歴を知る重要な鍵となる。






重要文化財 花白河蒔絵硯箱 1合 木胎漆塗 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵 (5月30日~6月21日展示)
器物に記された文字身のまわりの道具や器にも文字がある。とくに文房具には詩歌をデザインしたものが多い。なかには、絵の中に隠した数文字から1首の和歌を連想させるものもある。「寿」「福」などの文字は器に吉祥文としてデザインされた。



関連催事 

当館ホームページ<「イベント情報」>の各申込フォームから参加をお申込みください。受付開始は2026年5月12日(火)午後1時です。

スライドレクチャー 「はじめての古美術鑑賞 -美術のなかの文字-」


※担当学芸員がスライドを使って展示解説を行います。各レクチャーは同内容です。
※参加は無料ですが、美術館入館料が必要です。

同時開催展 展示室5 「うた、ものがたりと蒔絵」

蒔絵の意匠には、和歌や謡曲、物語を主題とした作品が多く見られます。ストーリーが一目で理解できる、その優れたデザインをお楽しみいただきます。

謡寄蒔絵提重 1基 木胎漆塗 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
全体に散らされた、合計49面もの扇面の中にあらわされているのは謡曲意匠。タイトルも添えられ、各演目の表象を知ることができる貴重な作例。



同時開催展 展示室6 「涼一味の茶」

蒸し暑いこの季節、茶の湯では道具に工夫を凝らすことで、清々しさを演出します。涼感をもたらす季節の茶道具約20件の取り合わせ。

法花蓮華文水指 1口 中国・明時代 16世紀 根津美術館蔵
「洗」(せん)とよばれる口が大きくひらいた器を、日本で茶の湯の水指に見立てたもの。輪郭を盛り上げて色釉を加え、蓮の花をあらわしている。






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