【P探】プレスリリースを通して世相を探っているような気がする「プレスリリース探訪(略称:P探)」です。
いきなりですが…ここで問題です。
「道修町」
大阪市内にある地名です。何と読むでしょう?
テレビ番組なら、ここで「ジャジャン♪」とか、あせりを誘発するようなBGMに重ねて小刻みに制限時間が近づくことを知らせる「カチコチカチコチ」みたいな効果音が流れるところですね。
で…ここでタイムアップ。
「どしょうまち」と答えた、あなた!
「ピンポ〜ん♫」
正解です!!
おめでとうございます。
あなたが近畿圏にお住まいなら上位23.3%のグループに入ります。
「上位23.3%って……何の話?」ということになりますよね。
このプレスリリースをご覧ください↓
「大阪および大阪・道修町(どしょうまち)に関する調査2025」を実施-道修町を読める・知っている・「くすりの町」と認識する割合はさらに低下
田辺三菱製薬(本社:大阪市)が今年(2025年)の10月23日から同28日まで、大阪府を中心とする近畿圏在住の20歳から69歳までの男女1005人を対象に「大阪の地域特色に関する調査」を行いました。
その結果「道修町」を「どしょうまち」と正しく読めたのは23.3%だったそうです。
「十三(じゅうそう)」「放出(はなてん)」「喜連瓜破(きれうりわり)」という大阪府民以外には呪文にしか聞こえないような難読地名もエントリーされるなかで、正答率がダントツの最下位となったのが「道修町」。(以下のグラフ参照)

「以下の大阪の地名に読みがなをつけてください」の問いの正答率
正答率が「喜連瓜破」(59.5%)の半分以下。どんだけムズいねんっ!!
とはいえです。
この設問に並んだ道修町以外の地名は大阪の難読地名界隈でもメジャーすぎて、メディアなどで目にする機会が多いですよね。
その結果、露出度が高まって逆に多くの方が読めてしまうという事情があるような気がします。
「十三」「放出」「喜連瓜破」は大阪難読地名のベスト10の常連ともいえます。
つまり、道修町は大阪難読地名界隈では……。
ベスト30くらいには入るレベルではあるものの、登場する頻度が常連の“強豪”に比べて少ないため難易度が上がってしまったという見方もできるわけですよ。
さらに、この調査は「大阪・道修町について知っていることをお選びください」という質問もあって、回答率64.4%でトップとなったのが…。
「道修町について知っていることはない」
バッサリです。身も蓋(ふた)もない。
「どなたはんでしたかいな?」ということです。
この結果を一瞬「見えない」「聞こえない」というフリをしてスルーしようかな、と気まずくなったほど。
読めないのも宜(むべ)なるかな、です。
無人の荒野に乾いた風が吹く情景が脳内に浮かびました。
この調査は2016年から田辺三菱製薬が毎年、実施しているそうですが、プレスリリースによると…。
「道修町について知っていることはない」の回答は4年連続過去最高。
4連覇だそうです。
こうなると、この連覇記録がどこまで続くのか気になるほどです。
さらにですよ。
「道修町の立地がわかる割合」(18.4%))…。
「現役の『くすりの町』と認識する割合」(19.7%)…。
「『くすりの神様』を祀る少彦名神社を認識する割合」(12.7%)…。
いずれも、2016年の調査開始以来最も低い水準となったそうです。
…って…あかんやん…。
江戸時代から幕府も認めた「くすりの町」で、文豪・谷崎潤一郎の小説「春琴抄」などの舞台にもなっている由緒ある町なのに認知度が下がる一方のようです。

「大阪・道修町について知っていることを全てお選びください」への回答
そこで、道修町に本社を置く同社は「調査結果を踏まえて、道修町の認知向上と地域活性に引き続き取り組んでいきます」と宣言。薬に関する大阪の歴史のなかで最も重要な位置を占めると表現して過言ではない町ですからね。
たのもしいです、田辺三菱製薬!
来年の結果が楽しみになってきました。
この調査には他にも設問があって、そのひとつが「関西の府県でそれぞれイメージする動物」。
わかりやすいのが奈良です。
はい、そうです。
「鹿」です。
得票数374票で、次点が「ウサギ」と「猫」。
いずれも2票。
首位の背中がはるか彼方ですが、見えないことはなくて、あまりにも巨大なので地平線くらいの先にいても確認できそう。
奈良と聞けば反射的に脳内にそびえ立つ大仏さんと並ぶランドマークのようです。
気になるのは「猿」です。奈良公園には猿沢池があるのに、ベスト3に入れなかった気持ちはいかばかりか…。
いずれにせよ、鹿が圧倒的すぎますけど、異論を差し挟む余地が1ミクロンも見いだせませんね。
大阪はというと…。
1位は「虎」。
プレスリリースは「スポーツチームや信仰の象徴として『虎』が強い人気を誇っています」と解説していますが…。
「スポーツチーム」は、もちろん“アレ”(もう古いか?)のチームですが、「『信仰の象徴』」に…って」と「?」のマークが脳内でいくつも点滅する方もいるはず。
解説しましょう。
大阪・道修町は(実際の認知度はさておき)江戸時代から続く「くすりの町」として知られていまして、健康の神・医薬の神である少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)があります。
同神社で毎年11月22,23の両日に開催される例大祭「神農祭」では、張り子の虎や御札などが飾られた神虎笹(しんこざさ)が授与されます。
そんな背景によって虎は「くすりの町」である道修町の、いわばシンボル的な存在。
なので虎が「信仰の象徴…」となるわけです。

神虎笹

「神農祭」開催中の少彦名神社界隈=2025年11月22日
神農祭に関係のあるプレスリリースも置いておきますね↓
「くすりのキャラクター」たちが無病息災を祈願!“薬の町”大阪・道修町の少彦名神社「神農祭」に 仁丹王子(R) が参加!
それから…。
博物館で張り子の虎が“参加”する展示会もあるようです↓
大阪歴史博物館 特集展示「郷土玩具が好き―風土と造形の愉しみ―」を開催します
今年の神農祭の初日(11月22日)には道修町と隣接する御堂筋で阪神タイガースの優勝記念パレードが行われました。
合わせたのかな?、知らんけど…。
「大阪の地域特色に関する調査」にまた戻りますと、大阪でイメージされる動物の2位は「猿」。
猿沢池がありながら奈良ではベスト3に入れなかった猿が大阪では次点に登場しています。
猿は干支にも入っていますし、おとぎ話の常連ともいえる存在ですから、なんだかホッとしました。
これは大坂城を築いた太閤さん(豊臣秀吉)が「猿」と呼ばれたことが関係するのでしょうね…知らんけど。
兵庫県はどうなっているのでしょうか。
阪神タイガースの本拠地の甲子園球場は兵庫・西宮にありますが…。
1位は「イノシシ」で、62票。
「虎」は2位で39票でした。
丹波篠山のボタン鍋のイメージが実力を発揮したのでしょうか。
「猪突猛進」という言葉があるものの、瞬発力というより昔からコツコツと積み重ねてきた実績が評価されているのかもしれません。
虎といえば、このプレスリリースははずせないと思いました↓
「ラ・メゾン白金グラン」より阪神梅田本店限定「虎柄ミルクロール」が新登場!11月26日(水)より販売スタートしました。
「阪神梅田本店限定」で「虎柄」という、もうコテコテベタでベタベタの大阪の定型コラボ。
でも、コテとベタの極地でありながら販売元は「ラ・メゾン白金グラン」。
プレスリリースには「⾼級住宅やレストランそして和と洋が融合する街、東京・⽩⾦の洋菓⼦店『ラ・メゾン⽩⾦』」とあります。大阪とは対極のイメージだと感じる方もおいででしょう。

「虎柄ミルクロール」。個人的には、虎が木の周りを走ってバターになってしまう童話の世界を彷彿させるメルヘン感も漂う気がします
さらに…。
大胆な虎柄デザインが思わず目を引くビジュアルが特徴です。ふんわりと焼き上げたスポンジ生地で、北海道・十勝産のフレッシュクリームを贅沢にブレンドしたミルククリームを、やさしく巻き込み口に入れた瞬間にすっと溶ける軽やかな味わいに仕上げました。
インパクトのあるビジュアルながら、味わいはどなたにも親しみやすい、シンプルなミルクのおいしさ。華やかな見た目と上質な味わいを兼ね備えた一品…
とのこと。
こう表現されると「大胆な虎柄」がいい具合に(大阪弁でいうところの)“シュッとした”感じに変換され、大阪がまとう串カツやお好み焼きのソース臭を排出する換気扇がフル稼働している気がします。
阪神タイガース界隈と白金のコンビネーションによって独特の世界観が展開されていて新鮮ですね。
たこ焼きパーティ(略称:たこパ)のデザートに出せば、「何ぃ?これぇ!?」という戸惑いと歓喜が入り混じった声が沸き起こり、大盛りあがりは必至かも。
たこ焼きもいいですが、僕は「阪神名物・いか焼き」を食べたあとに“トライ”してみたいです……………。
阪神だけに“トラ”イ…………。
……失礼しました。(岡崎秀俊)







