湯浅浩史著『秘境、辺境、異文化 世界の絶景植物』淡交社, 2024年5月21日発行

この本の著者である湯浅浩史先生には、2022年に『花形文化通信』でロングインタビューをしました。この時は「日本一ひょうたんに詳しい植物学者」として、ひょうたんにまつわるお話を中心に語っていただいたのですが、湯浅先生が子どもの頃や学生時代から強く惹かれ、ずっと関心を持ってこられたのは、サボテンや多肉植物、バオバブなど、砂漠、秘境、辺境の地に自生する植物たちだったとも聞きました。

代表的な園芸植物であるひょうたんとはむしろ真逆の、厳しい自然環境や特殊な環境に適応して独自の進化を遂げた植物たち。少年時代にウォルト・ディズニーのドキュメンタリー映画『砂漠は生きている』を見た時の驚きと感動が、先生の将来を決める心のルーツだったともうかがいました。

今回出版された『秘境、辺境、異文化 世界の絶景植物』(淡交社)は、そんな湯浅先生の「秘境、辺境を旅する植物学者」としての面が強く感じられる一冊です。

「chapter 1.  織りなされる絶景」では、エチオピア高地に群生し、高山植物でありながら高さ5メートルにもなるジャイアントロベリアや、マダガスカル・マンゴキ川に面したバオバブの楽園、南アフリカの真っ赤なアロエ群落、ベネズエラ南東ギアナ高地の秘境・チマンタテプイに自生するチマンタエア・ミラビリスなどが、豊富なカラー写真とともに紹介されています。

その不思議な形状はもちろん、生き延びるための仕組みが非常に個性的で、知るほどに驚かされるような植物ばかり。また、青、赤、黄と三原色すべての花を咲かせる中国四川省のメコノプシス(ケシ)や、12年周期で花を咲かせるというインド南部のニュークリンジなど、日本人があまり目にすることのない珍しい花の写真も多数掲載されています。

後半の「chapter 2.  見知らぬ世界の花」には、オマーン、ギリシャのマニ半島、バルカン半島(ブルガリア)、キルギス、ロシアのバイカル湖畔、インドのカース台地など、自然がつくりだした花の名所とでも呼びたい世界中の自生地、珍しい植物の宝庫である国や地域が、画面いっぱいに咲き誇る花々の写真とともに紹介されています。また、スリランカの寺院で見られる供花や、ラオスの生け花など、日本とは違う花の献げ方やフラワーアレンジの文化、植物の利用法などにも触れられています。

これらは、すべて湯浅先生自身が訪れた60余りの国で撮影されたもの。掲載されている美しい写真は294枚にものぼります。

もともと小原流機関誌『小原挿花』の連載「世界の絶景植物」と、マミフラワーデザインスクールの月刊誌『FLOWER DESIGN life』で連載中の「世界の花を巡る」を再編集した本だけに、解説文はとてもわかりやすく、読みやすいのもうれしい。植物好き、お花好きなら誰でも楽しめそうです。本をぱらぱらとめくっているだけでも、異郷にいるような気分が味わえます。

By丸黄うりほ

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『秘境、辺境、異文化 世界の絶景植物』
湯浅 浩史 著
ISBN:978-4-473-04596-6
発売日:2024/5/10
四六判 並製 256頁(カラー128頁)
2,530円(税込)

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