1614(慶長19)年に徳川幕府と豊臣家が戦った「冬の陣」の様子を描く「大坂冬の陣図屏風」がデジタル技術と手作業によって復元され、7月27日から徳川美術館・名古屋市蓬左文庫(名古屋市東区徳川町)で開催される特別展「合戦図~もののふたちの勇姿を描く~」で初公開される。9月8日まで。
復元に取り組んだのは凸版印刷(本社・東京都千代田区)。同社は画布の半分が欠損したクロード・モネ作「睡蓮・柳の反映」(国立西洋美術館所蔵)のデジタル復元など、国内外の貴重な文化財を後世に継承するために、実物のデジタルアーカイブや、消失文化財のデジタル再現に取り組んでいる。今回はインクジェットプリントによるデジタル彩色、さらに手作業により金箔、金銀泥を施した。
東京国立博物館が所蔵する「大坂冬の陣図屏風」は模本(模写)とされており、原本の所在は不明。つまり〝誰も見たことのない姿〟の再現をめざした想定復元となる。2017年11月から同社はこのプロジェクトを推進してきた。
作業を進めるにあたって城郭考古学の観点から奈良大学文学部の千田嘉博教授、美術史学は徳川美術館、絵画技法は東京藝術大学が、それぞれ監修している。屏風には各部分の色指示が書き残されており、この記述にあわせデジタルで彩色を行い、学術的な考証に照らし合わせ完成形を考察。絵の具ごとの質感の差などを考慮することで、インクジェットプリントでありながら肉筆画のような質感を追求した。金箔や金銀泥の指示が書き込まれていた部分には、再現度を高めるため手作業によって金箔、金銀泥を施して仕上げた。
7月28日に同美術館で開催されるシンポジウム「大坂冬の陣図屏風、これまでとこれから」では、今回の復元プロジェクトの取り組みを紹介する。(申込締切は7月7日必着)
復元プロジェクトや特別展の詳細は凸版印刷のウェブサイトで。