ギャラリーほそかわの細川佳洋子さんと一緒に、アートフェア「ART OSAKA 2022」を見てまわりました。今年の会場は中之島と北加賀屋の2カ所で行われ、中之島のGalleries Sectionを見たあと、クルーズ船で北加賀屋のExpanded Sectionへ移動しました。その流れで関連イベント「千島土地コレクション『TIDE – 潮流(タイド)が形(フォーム)になるとき – 』」も見に行ったのですが、会場に、そのコレクションの主である社長がいらっしゃったらコマを回してもらおうということになり、社長さんをつかまえて、コマ回しをお願いしました。

社長さんは、芝川能一さん。大阪で芝川といえば、船場の近代建築「芝川ビル」を思い浮かべる人も多いでしょう。豪商・芝川家6代当主で実業家の又四郎さんが建てたビルは、 関東大震災を教訓にした、地震や火災にも耐える頑強な造り。又四郎さんは、朝ドラ「マッサン」ことニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝さんの大家さんでもあったことから、設立にあたって資金を提供されたそうです。

社長の会社が持っているのは、芝川ビルだけではありません。社名は「千島土地株式会社」といって、関連会社を含めると、大阪市大正区・住之江区を中心に約33万坪の土地を所有し、また大阪市内・神戸市内・西宮市内・福岡市内に約60棟の建物を所有、さらに海外不動産も所有して、土地や建物の賃貸事業を行っているのです。しかも、賃貸事業は土地や建物にとどまらず、航空機の機体を所有して、エールフランスだのブリティッシュエアウェイズだの世界中の航空会社にリースしているのです。今年4月に購入した機体は56機目だそうです。

さて、芝川家は江戸時代から続く商家ですが、株式会社としての設立は1912年(明治45年)。今年は設立110周年にあたります。そこで、設立110周年を記念した「千島土地コレクション『TIDE – 潮流が形になるとき – 』」が開催されたのです。メイン会場は、北加賀屋の家具店舗を再生したギャラリーkagoo(カグー)。期間は7月6日~11日で、アートフェア「ART OSAKA 2022 Expanded」と同じです。わたしたちがおじゃましたのは日曜だったので、芝川社長はいかにも日曜日の社長さんといういでたちでいらっしゃいます。

今年、現代美術のアートフェア「ART OSAKA 2022」も記念すべき20回目でした。中之島にある大阪市中央公会堂ではこれまでのようにブース展示を行い、さらに今年は新たな会場として、北加賀屋にある「クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)」で大型作品の展示を行ったのです。造船所の敷地・建物は千島土地株式会社の所有で、2005年にクリエイティブセンター大阪として開設されました。千島土地株式会社は今年のアートフェアの特別協賛企業でもあります。

造船所があった北加賀屋のまちに広大な土地と多くの建物を所有している千島土地株式会社では、2009年より「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」を掲げて、北加賀屋エリアを「アートのまち北加賀屋」に変えていく試みを進め、現在、KCV関連の拠点は40カ所を超えたそうです。2011年には「一般財団法人  おおさか創造千島財団」を設立、大阪で行われる芸術・文化活動の支援と創造活動拠点の提供を行っています。芝川社長は財団の理事長でもあります。

千島土地コレクションは、2000年代から行ってきた地域創生・社会貢献活動の中で出会った作家の作品を中心に蒐集したコレクションです。つまり、北加賀屋のまちと共に育ってきたコレクションというわけです。

さて、日曜日の社長がコマを回しているのは、作品の展示台のアクリルケースの上。木製のコマだから大丈夫かな。展示作品は、森末由美子さんの作品《新聞》。2012年の作品で、新聞は紙に印刷したものではなくて、ビーズで編まれています。

by 塚村真美

森末由美子さんの作品(詳しくはこちら)

芝川社長が動画の中で言っている「松尾くん」は次回に登場します。