平井章一さんは、関西大学の先生です。いただいたお名刺には教授 博士(文学)文学部 芸術学美術史専修とありました。

大学教授はここ数年のこと、それまで30年間ずっと美術館にお勤めでした。兵庫県立美術館や、東京の国立新美術館、京都国立近代美術館など。

「具体」の大きな展覧会を手がけられ、2004年の「結成50周年記念『具体』回顧展」(兵庫県立美術館)や、2012年の「『具体』-ニッポンの前衛 18年の軌跡」(国立新美術館)が代表的なお仕事です。

「具体」展のほか、メンバーであった白髪一雄、ヨシダミノルの展覧会も企画。ヨシダミノルについては「知られざるニューヨーク時代」を引き続き調査され、その後、ニューヨークのギャラリーが企画したヨシダミノル展につながりました。

また、平井さんの企画で面白いのは、「具体」だけではなく、その周辺の美術芸術グループの動きを紹介する展覧会。「具体」が誕生する以前から、アバンギャルドな芸術は「前衛」と呼ばれ、数多くの集団がぽこぽこと生まれては活動していました。そんな前衛芸術家集団から、「制作者集団『極』」とか「グループ〈位〉」とか「ケラ美術協会」とかを紹介する展覧会を企画。前衛の方々のもとを訪ね、調べ、展覧会をつくるわけですが、会期中にその方々のトークがあったりして、なかなか楽しかったです。

「知られざる」前衛の人や活動や作品に光を当てて調査する、目のつけどころがユニークで、ちょっと探偵みたいです。

そして、そんな熱き「前衛たちの時代」をまとめた本をつくろうと、以前、私どものカフェ「ワークルーム」で連続講義していただいたのですが、果たせぬままに、幾年月。計画が壮大すぎたのかもしれません。……が、しかし、平井さんはきっとずっと執筆中なのです。

平井さんのtwitterをのぞいたら、「現在、関西の近代美術史概説を執筆中!」とありました。おお、やっぱり執筆中だったのですね。

by 塚村真美