シカク出版の本『酒ともやしと横になる私』『さいはて紀行』とシカクオリジナルエコバッグ

 

スズキナオ著『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)の161ページ。第3章「肘と眠気とほとばしる情熱」の8つめ「いつか絶対やる」にこうありました。

行動力に欠けているので、何かしたいと思ってもすぐにはやらず、まずはアマゾンの「ほしいものリスト」みたいな感じの、頭の中の保留スペースにしまっておく。「リーバイスのアウトレットに行くとジーパンがかなり安いらしい。そこでジーパン買おう」と思い始めてからもう2年近くになる。

わたしにもいくつか思い当たる、リーバイスのアウトレット。その一つが「シカク」でした。シカクは千鳥橋にある本屋さんで、本を売るだけではなく、出版もしています。千鳥橋周辺が面白いよと教えてもらって、本屋さんやギャラリーがあることは何度もウェブでチェックして、千鳥橋駅は阪神なんば線だから、家からだと近鉄が乗り入れているので移動もラク、と思いながらも動かず。さらに外出を控えるような日々となり、またも月日が過ぎました。

わたしは気になっているだけでしたが、現在『花形文化通信』の主筆である丸黄うりほさんにとって、シカクは大好きな本屋さん。緊急事態宣言が2月7日解除になったら一緒に行こうと決め、2月8日に行ってきました。宣言は解除にはなりませんでしたが。

店奥のギャラリーコーナーで「ファンシービロ展 行けたら行く」の展示を見て、店内で本を選んでカウンターへ。お客さんは私たちのほか一人二人だったので、店主としばし立ち話。「シカク出版の本はどれですか?」と聞くと、店主はそのコーナーへ案内してくれました。そして、これです、と教えてもらったのが『酒ともやしと横になる私』だったのです。

なんだ、このサイズ感は?手になじむ~。「これ、なんというサイズ?」と聞くと、店主は「三五判で、あんまり印刷に対応してくださるところがなくて」。耳を傾けながらも、左手で本をつかんで、親指でぱらぱらめくるうちに、手放せない感じになってしまいました。ペットショップで犬を見てたら目が合ったので連れて帰った、みたいなことがわたしの左手に起こったのでした。ほかにも、これはよく売れているといって紹介してもらった文庫本、金原みわ著『さいはて紀行』も一緒に買って帰りました。

会社に戻ってひと仕事。帰りの電車で『酒ともやしと横になる私』を読もうと、カバーを外したら、脱力したイラストがでてきて、ほっとリラックス。読みだしたら、あら面白いのかな? あれ、この人ちょっと好きかも? フッ。笑ってしまった。うむ。頷いてしまった。ものすごく面白いわけでもないけれども、ちょうどいい感じ。ちょっとだけ怒るところとか、平和を望むところとか。

これまで本を作るときは、役に立つとか、使えるとか、きれいだとか、そういうことをわたしは重視して、というかそうでないといけないと思っていましたが、この本にはそれがない。ないけれども、整っています。この造本とこの内容がものすごくちょうどいいバランス。サイズ、軽さ、マージンのなさとか、ノーデザイン風とかが、絶妙に文章にマッチしている。扉がなぜか分厚くてちょっと立派でバランスを崩しているけれども、淡いオレンジ色が、書き手の人の良さそうな気分を醸している。

と、カバーのことを忘れていました。手にして気づく。カバー裏にも1本エッセイがあって、そこにはこんな一文が。「人生は地味なデータの積み重ねである」。そんな風に、軽みの中にときどき深いことが書いてあったり何もなかったり。カバーには宇宙に浮いている絵が描いてあるけれど、これは、そんな軽くて深い、無重力で深遠ということをいっているのか、ハテナ?

すぐに読めそうだけれど、もったいないような気がして、2、3本、5、6本くらい読んでは閉じてまた読んで、と祝日と土日にちょっとずつ読みました。これは、スナック菓子のような本かな、一気に食べずにクリップで留めておいて、何度かに分けて食べる感じ。では、そのスナックとはなに?カールかな?これは。うす味カール8割にチーズ味2割。

そして、もう一冊の本。金原みわ著『さいはて紀行』。こちらはもう、カバーを取る間もなく、ちょっと開いて読み出したら、釘付けにされて止まらなくなってしまって、カバーも帯もつけたまま読んでしまいました。すごい。すごい書き手です。帯には都築響一氏震撼とありますが、内藤正敏先生も驚愕でしょう。2016年初版発行。もう4年も前に大反響だったのですか、ぜんぜん知らなかった、ううう。

ほかにも2冊、これはシカク出版じゃない本を買ったので、それを読んだら、また行こう。リーバイスのアウトレットにならないように。

by 塚村真美

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