問題は私の音が自分でよく聴こえない、ということでした
by 奥田亮
先週のでれろん暮らしでご案内しましたが、2月23日、アーティスト カトウシモンさんの出版記念イベントにひょうたん楽器を引っさげて出演しました。
『龍乗りの物語』と題されたお話は、龍乗りのパッシュが聖なる山を探して旅をするファンタジー。東日本大震災と原発事故という大きな災厄を前に不安を募らせる人たちを、別の世界に誘いたいという思いで綴られたとのこと。
その物語は12年の歳月の中でゆっくりと発酵し、少しずつ形を変えながらようやくこの日、本という形でこの世に生まれ出たのでした。物語そのものが長い年月を旅してようやくひとつの場所に辿り着いたともいえます。われわれ夫婦も、ご縁をいただいて本作りのお手伝いさせていただき、一緒に旅をさせていただいたような気持ちです。シモンさんおめでとうございます。
出版イベントは、まずシモンさんがこの物語に込めた想いや出版の経緯を語るトークショーから始まり、その後、お話の一部の朗読と音楽・ダンス・影絵という構成。演奏はカトウシモンさん(ドラム、パーカッション、三味線)、愛拓(アイタ)さん(ビリンバウ、アラブタンバリン、ギロ)、ナオさん(バイオリン)と私(ひょうたん楽器)。そこにOkikaさん(ダンス、影絵)、中島さん(影絵)が加わりました。
私は今回、楽器は少なめにしようと心に決めて、ひょうたんベース《べんべん》をメインに、なんちゃってタンプーラ《ビビリンチョ》にしたのですが、やっぱり荷物を積む時に2つほど追加で笛系の楽器を持って行きました。結果的にはその2つがいい仕事をしてくれたのでよかったのですが。
さていよいよ本番。《ビビリンチョ》がビヨヨ~ンと通奏低音を流す中、朗読が始まりました。その後シモンさんの三味線にビリンバウが絡み、バイオリンがピチカートや高音でノイズ的な音をいい感じで入れている中に、私がボーボーと低い音の鳴るひょうたん笛をのせて、不思議な響きの音楽に展開していきました。シモンさんがドラムに変わり、アラブタンバリンがなり始めると、私はそこからは《べんべん》に持ちかえて、リズムパターンを引き始めました。バイオリンもアラブ風の音階でグネグネと絡んできます。ノリノリのグルーブが立ち上がり、いい感じです。問題は私の音が自分でよく聴こえない、ということでした(笑)。
毎度のことながら、こういった少し大きめの会場ではひょうたん楽器の音の小ささに苦慮します。当然マイク〜アンプ〜スピーカーと電気の力を借りざるを得ないわけですが、そのマイクやアンプの設置位置や音量・音質の調整が難しくて、というかどうすればいいのかわからなくて、適当にいじくっているうちに時間切れ、本番突入となることが多いのです。
今回はとくに、シモンさんのドラムセットがメインという編成なので、小さな音の楽器に合わせてドラムの音量を調整して演奏してもらうのは奏者のテンションも下がりますし、本末が転倒するのでよろしくありません。ということで、結果的に今回も自分の音があんまり聴こえない中での演奏となったわけですが、ノリノリのお客さんもおられたので、きっとなんとかなっていたんじゃないかな。
自家製ひょうたん楽器は、一般的な楽器としての音量や音質、耐性が不完全なので、ステージなどで他の(ちゃんとした)楽器と合奏するとなるととても難しくて、質の高いマイクやアンプ、そして腕のいいエンジニアが必要になってきます。なんかちょっとそれもどうなんだろうと思ったり、思わなかったり、うーん、でれろん。
(936日目∞ 2月27日)