天理参考館のひょうたん③台湾の呪具ほか

by 丸黄うりほ

①朝鮮半島のプオック(台所)と、チャンバン(饌房)の道具

②ひょうたんでできた柄杓

③バリ島の「椰子酒入れの瓢壺“ワルー”」

④ボルネオ島の「ひさご笙」

⑤インドの「シタール」

⑥台湾先住民タオ(ヤミ)族の「男子儀礼用銀兜“ウラガッ”」

⑦プユマ族の「瓢箪製の呪具“タトブック”」 

奈良県天理市にある「天理参考館」では、今週火曜日に紹介した朝鮮のパガジ仮面、水曜日に紹介した中国の昔の看板のほかにも、いろいろなひょうたんが見つかりました。

写真①②をご覧ください。朝鮮半島のコーナーでは、プオック(台所)と、チャンバンと呼ばれるお膳立てをする場所が展示され、調理道具や食品の保存容器、食器などが並べられていました。真ん中の棚の向かって左には、さまざまな大きさの柄杓が見えます。そのなかで一番大きいものは、ひょうたんでできています。また、棚の向かって右に見えるのは、ひょうたんでできた水汲みたらいです。

写真③は、インドネシアのバリ島コーナーに展示されていたもの。キャプションには、「椰子酒入れの瓢壺“ワルー”」とありました。インドネシア・バリ島トゥンガナン・プクリンシンガン村で20世紀後半に収集されたもので、民族集団名は、バリ・アガとあります。このように水やお酒を汲んだり、注いだりする容器としてひょうたんが使用されているのは、道具としてのひょうたんの王道といえますね。

続いて写真④をご覧ください。こちらは、「ひさご笙」。ボルネオ島コーナーにありました。そして、写真⑤はインドのコーナーにあった「シタール」です。ひょうたん楽器の展示はこの2つくらいしか見つけられませんでした。

天理参考館は、天理教を海外に広めようとする人々が収集したものが所蔵品の中心になっているためなのか、その土地の精神文化を伝えるものが比較的多く集められていると感じました。たとえば、パプアニューギニアは「精霊たちの森」、バリは「村落空間に満ちる祈り」がテーマ。台湾先住民のコーナーも「祖霊と共に生きる」がテーマになっていて、実際の儀式や祭礼に使われていたと思われる道具類が並び、ぞくっとするような凄みというか、なにか魔性の気配のようなものを感じました。

写真⑥は、台湾先住民の展示にあった「男子儀礼用銀兜“ウラガッ”」、台湾タオ(ヤミ)族のものとあります。目のところが開けてあり、これを頭から被って儀式を行うのだとわかります。

その一画で見つけたひょうたんが、写真⑦です。キャプションボードには「瓢箪製の呪具“タトブック”」とありました。台湾、台東県、プユマ族のものとも書かれています。

赤く塗られたこのひょうたんをどのように呪具として使うのでしょうか。天理参考館の展示には詳しい解説はありませんでしたので、私は自宅に戻ってからネットで少し調べてみました。しかし、「タトブック」で検索しても、それらしいものはヒットしませんでした。

わずかですが調べてみてわかったことを書き留めておきますと、台湾の台北市に「順益台湾原住民博物館」があり、そこにも「天理参考館」にあるのとよく似た、プユマ族のひょうたんの呪具が展示されているようです。そこでは、なんとひょうたんの穴に「敵の髪の束を差し込んである」というビジュアルも出てきてびっくり!

また、台湾バイワン族の女性呪術師「ブリンガウ」について書かれた論文が見つかりました。そのなかでは、その呪術師の兄が、祭祀を司る「バラアンライ」になるためにひょうたんとムクロジを使った占いを行うということが書かれていました。(齋藤正憲/「ブリンガウ:台湾原住民の女性呪術師」埼玉学園大学紀要PDFをダウンロード

「花形文化通信」のインタビューでおなじみ、湯浅浩史先生の『ヒョウタン文化誌』(岩波新書)のp198にも、バイワン族の呪医がひょうたんの中にムクロジの種子、サルの骨、小刀を入れて患部をさすり、病気のもとになっている悪いものを追い出すようにすることが紹介されています。また、ブヌン族ではブタの脂をつけた小石がひょうたんの中でうまく立てば病気が治り、立たなければ助からないという占いをするとも書かれています。

ひょうたんの霊的な力には、底知れぬ魅力を感じます。「順益台湾原住民博物館」にも行ってみたくなりました。

(935日目∞ 2月24日)

*来週火曜日に続きます

※次回936日目は奥田亮「でれろん暮らし」、2月27日(月)にアップ。

937日目は丸黄うりほ「ひょうたん日記」、2月28日(火)にアップします。