天理参考館のひょうたん①朝鮮のパガジ仮面

by 丸黄うりほ

①奈良県天理市にある「天理参考館」

②左が僧「モクチュン」、右が遊女「エサダン」のパガジ仮面

③老主人「センニム」のパガジ仮面

④パガジとは、ひょうたんのこと!

⑤17世紀のパガジ仮面がずらり

⑥面白い顔ピックアップ。酔っ払い人「チゥイバリ」

⑦まばたきをする人(=地殺星)「ヌンクムジェギ」

⑧猿「ウォンスイ」 

奈良県天理市の「天理参考館」に行ってきました。東大阪市のヒョータニスト、KFさんなど何人もの方から「ひょうたんがあったよ!」と、だいぶ前から聞いていたのですが、最寄駅のJR・近鉄天理駅から徒歩で20分かかる場所にあるため、自動車を持っていない私にはすぐ行くことができなかったのです。そして、行ってきてから「ひょうたん日記」にレポを書くのもまた遅くなってしまいました。

いただいたパンフレットによると、「天理参考館」は天理大学の付属施設で、1930(昭和5)年に創設されたのだそうです。天理教を海外に広めようとする人々が、その土地の言葉や生活文化を理解するために収集した民俗資料と考古資料から成り立っていて、1階と2階は「世界の生活文化」、3階は「世界の考古美術」というテーマで展示されています。

1階のエントランスホールを通り抜けて最初に出てくるゾーンはアイヌの暮らし。続くのは朝鮮半島のコーナーで、その入口には恐ろしい顔をした木の神像「チャンスン」が立っていました。そしてその横に、目当ての一つであるパガジ仮面をつけた人形が立っていました!

パガジとは、韓国語でひょうたんのこと。そうです、この人形がつけている仮面は、ひょうたんでできているのです! 向かって左の赤いのが僧「モクチュン」で、右の白いのが遊女「エサダン」の仮面。(写真②)

その向かいのケースの中には、老主人「センニム」の仮面をつけた人形も立っていました(写真③④)。さらに、その横には、いろんな表情をしたパガジ仮面がずらり(写真⑤)。どのパガジ仮面もなんだか笑える顔で、さすがひょうたんでできているだけのことはあります!

全部アップで撮って紹介したいくらいですが、スクロールが果てしなく長くなりそうなので、丸黄の独断で面白いなと思ったものをあと3つだけピックアップしておきますね。

写真⑥は、酔っ払い人「チゥイバリ」。写真⑦は、まばたきをする人(=地殺星)「ヌンクムジェギ」。写真⑧は、猿「ウォンスイ」と書かれています。

展示の横にあった解説によると、朝鮮半島はひょうたんで作られた仮面が最も盛んに使用されている地域の1つなのだとか。なかでも、ソウル近郊の中部地方に多く分布しているそうです。

朝鮮王朝前期から宮中では厄除けや中国からの使者をもてなす行事として仮面劇が演じられ、仁祖の時代(1623年〜34年)には仮面劇一座は「サンデトカムノリ」として役所に配属されていました。写真⑤に写っているパガジ仮面たちはその時代のもので、仮面の内側に当時の年号が記されたものもあるそうです。手前に並べられている楽器は、仮面劇とともに用いられるものです。

また、入口近くに立っていた写真②の僧「モクチュン」と遊女「エサダン」のパガジ仮面は、現在もソウル近郊の村で継承されている「ヤンジュビョルサンデノリ」で使用されているもの。17世紀の「サンデトカムノリ」の面影をよく残し、特権階級をからかうような風刺劇が題材で、用いられる22種類の仮面はすべてパガジで作られます。「ヤンジュビョルサンデノリ」は、毎年端午の節句に、野外仮面劇として当地の伝授館で演じられているのだそうです。

ネットで調べてみると、韓国の伝統仮面劇「タルチュム」18種目はユネスコの無形文化遺産にも登録され、「ヤンジュビョルサンデノリ」はその筆頭に挙げられていました。世界でも珍しいひょうたん仮面劇、いつか見に行けたらいいな!

(933日目∞ 2月21日)

*明日に続きます